人質家族がガザ国境へ車列で訴え:一部フェンス超えで人質に呼びかけ 2024.8.30

Family members and supporters of hostages who were kidnapped during the deadly October 7 attack, take part in a ceremony in an effort to bring back the hostages, outside Kibbutz Beeri, southern Israel, August 28, 2024. (photo credit: REUTERS/AMIR COHEN)

人質家族たちがガザへ車列で訴え

28日、人質家族、親族たちが、人質の解放を訴えるため、テルアビブから、ガザ国境まで、車を連ねてガザ国境に到達するというデモが行われた。

参加したのは、300台以上の車とその中にいた数千人。車列の中には、10月7日にハマスに破壊された車を引くトレーラーも含まれていた。

参加した車は、「Bring them home(人質を取り戻せ)」を象徴する黄色の旗をつけている。ガザ国境近くでは、集会が開かれ、人質解放を訴えたが、同時に、交渉で強気の態度を崩さないネタニヤフ首相の方針を批判した。

www.jpost.com/israel-news/article-816774#google_vignette

ガザにいる愛する家族への叫び

その翌日29日には、人質家族たち20人ほどが、ガザ国境のキブツ・ニール・オズのガザとの国境のフェンスを超え、家族たちが、ガザ方面へ向かって走る様子が伝えられた。

フェンスを超えたとはいえ、すぐにガザ地区ではない。まだ遠くにその国境はある。

実際にガザまで行ったのではなく、イスラエル軍に止められたこともあり、キブツの外壁のフェンス近くを走っただけだったとのこと。

家族たちはそこから、ガザに向かって、とらわれて328日になる愛する家族たちにメッセージを叫んだ。

人質になったままのニムロッドさんの父親、ヤフダ・コーヘンさんは、「ニムロッド!お父さんだ。国境に来てるぞ」と叫んだ。

以下は、「お父さんとお母さんよ」「強くあれ。諦めてない。家に連れて帰るから」などと必死に人質たちに呼びかける家族たちの様子。

www.timesofisrael.com/hostage-families-symbolically-breach-a-gaza-fence-as-they-call-out-to-loved-ones/

人質は251人連れ去られ、このうち今もガザにいるのは103人(メディアによって差がある)このうち33人は遺体になっているとみられている。

ガザでは、ポリオウイルスが検出されており、人質もその危険の下にいると懸念されている。

救出されたアル・カディさんが一緒にいた人質はアリエ・ザルマノヴィッツさん(86)

先日ラファのトンネルから救出されたベドウインのアル・カディさんが、そのすぐ横で殺されたと言っていたイスラエル人は、ニール・オズの自宅から拉致されたアリエ・ザルマノヴィッツさん(86)であったことがわかった。

アリエさんは、拉致されてから5週間後に死亡していたことになる。アリエさんの死亡は、ハマスが送ってきた映像などからも、すでに確定されていたことだった。

GPO

アル・カディさんは、ガザから救出されてベエルシェバの病院に搬送されるとすぐに、アリエさんの息子、ボアズさんに連絡を取るよう依頼した。

ボアズさんに、ガザで病気だったアリエさんの様子を話した。

アル・カディさんは自分も人質で負傷していたにも関わらず、アリエさんのそばで世話をしたという。

アリエさんは、アル・カディさんに、自分の生涯をかけたキブツとの関わりや、キブツにいる家族や人々のことを心配していると話していた。

父親の最後のことを聞いたボアズさんは、アル・カディさんに会えたことが、どれほど重要だったかと言っている。今は早く遺体を取り戻して埋葬してやりたいと語っている。

なお、ボアズさんが聞いたところによると、人質たちの置かれていた環境は相当劣悪だったという。負傷しても適切なケアは受けられず、そのまま殺される人もいた。

アル・カディさん自身も、昼間か夜かもわからない、トンネルの暗闇に置かれいたという。いわゆる触れるような真っ暗闇の中である。

食事もろくにない状態で、一緒にいた他の人質は、足を打たれて、麻酔もせずにその摘出術を受けていたなど、地獄の日々を語っていた。

先に救出されたノアさんたちは、これよりかなりましな環境に置かれていたように記憶している。人質によって、どこでどのように過ごしているのかは、違っているようである。

www.timesofisrael.com/son-says-aryeh-zalmanovich-86-was-murdered-in-gaza-hospital-next-to-farhan-al-qadi/

石のひとりごと

人質家族たちの絶対に諦めない、戦う姿には感動させられる。GPO(イスラエル政府プレスオフィス)は以下の聖書からの言葉を引用していた。

主はこう仰せられる。「あなたの泣く声をとどめ、目の涙をとどめよ。あなたの労苦には報いがあるからだ。―主の御告げ―彼らは敵の国から帰って来る。

あなたの将来には望みがある。―主の御告げ―あなたの子らは自分の国に帰って来る。(エレミヤ書31:16-17)

また、アル・カディさんは、ベドウインでイスラム教徒である。しかし、これほどに、ユダヤ人たちと心を通わせている。

イスラム教徒というだけで、皆がハマスのような考えであるとは限らないということである。

 

 

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。