トランプ大統領のエルサレムはイスラエルの首都という宣言は、ガザ、西岸地区以外にも広がった。
隣国ヨルダンでは、7日につづき、8日にも、千人規模のデモが行われ、アメリカとイスラエルの旗が燃やされた。群衆は、ヨルダン政府はイスラエルと断交すべきだと訴えた。ヨルダンは市民の70%がパレスチナ人である。
www.timesofisrael.com/jordanians-rally-against-trump-recognition-chant-jerusalem-is-arab/
レバノンでは、レバノン人5000人が、パレスチナ難民キャンプ付近でデモを行った。ヒズボラのナスララ党首は、「トランプの決定は、何十億のイスラム教徒とキリスト教徒に対する侮辱だ。」として、諸国はパレスチナ人の蜂起を支援すべきだと語った。
www.jpost.com/Israel-News/Nasrallah-calls-for-support-of-new-Palestinian-Intifada-517373
この他、アフガニスタン、パキスタンのカラチ、インドのカシミール地方、インドネシア、マレーシアでも、アメリカとイスラエルの失脚を叫ぶデモが行われた。
イランでは、トランプ大統領がエルサレムに関する宣言を出す前から、イスラム最高指導者のハメネイ師が、「アメリカはイスラムとキリスト教徒に戦争をしかけた。」といい、パレスチナ人たちが反発して、やがてパレスチナは解放されるだろうと語っていた。
8日、テヘランでは、イスラム専門家会議(最高指導者を選出する組織)メンバーで、イスラムの祈りの日にメッセージを語る保守派のアフマド・ハタミ師が、モスクに集まった人々に対し、「インティファーダだけが、占領政権、シオニストの政権を打倒できる。」、「占領する犯罪国家への攻撃は、いかなるものでも神を喜ばせることになる」と語った。
また、「イランにはイスラエルに届くミサイルがある。」とも言っている。テヘランでは、数百人が、デモを行い、「アメリカに死を」「イスラエルに死を」と叫び、両国の旗を燃やしたと伝えられている。
www.timesofisrael.com/top-iranian-cleric-calls-for-palestinian-violence-vows-to-level-tel-aviv/
<中東情勢との関連>
エルサレムの一件について、ロシアのプーチン大統領は、「トランプ宣言は常軌を逸している。深く懸念している。」との声明を出している。
プーチン大統領は来週月曜、トルコのエルドアン大統領の招きで、トルコを訪問する予定である。基本的には黒海のパイプラインに関する会談を行うのだが、シリア情勢とともに、エルサレムについても話し合われるとみられる。
トルコのエルドアン大統領は、トランプ宣言を受けて、イスラエルとの国交を断絶する可能性もほのめかしているほど、イスラエルへの敵意をむき出しにしている。エルドアン大統領は、13日、エルサレムの問題を話し合うとして、イスラム協力組織(OIC)の特別サミットをイスタンブールで開催する予定とのこと。
ロシア、トルコ、イランは、先月にもシリア問題解決に向けて合意に至っているが、エルサレム関連問題においても3国がさらに近づくとみられる。
トランプ・エルサレム宣言以後、そのトルコとヨルダンが接近しており、注目されるところである。
www.timesofisrael.com/russia-says-trumps-jerusalem-declaration-defies-common-sense/
一方、中東では、イランの台頭を懸念してサウジアラビアが、同じ敵をもつ関係になったイスラエル、アメリカにこれまでになく接近しているとみられ、注目されていた。
しかし、エルサレムはイスラエルの首都とはっきり宣言されては、サウジアラビアとしても、そのままそれを受け入れるわけにはいかないだろう。
サウジアラビアは、トランプ大統領の決断について、「大使館をエルサレムへ移動させると危険な結果になる」との懸念を表明し、アメリカに、国際社会の意思を尊重し、決断を撤回するようすすめている。