世界62か国にある親イスラエル議員連盟の日本支部発足:イスラエルは孤立せずとイスラエルメディア報道 2025.9.19

日本の親イスラエル議員同盟コーカス再始動

9月16日(火)、参議院議員会館にて、世界62カ国にある親イスラエル議員連盟コーカス(Israel Allies Caucus(IAF))の日本支部が、「日本イスラエル・クリスチャン交流会」として発足した。(正確には、再始動)代表は、クリスチャン議員である金子道仁参議院議員である。

*親イスラエル議員連盟(Israel Allies Caucus(Foundation)):ユダヤ人とクリスチャンの接点

ユダヤ人は、2000年近い流浪と迫害を経験してきた人々である。

その原因である反ユダヤ主義の始まりは、ユダヤ人をキリスト殺しの悪魔の末と考え、置換神学(キリストの十字架と復活以降、選ばれた民としての立場は、ユダヤ人から教会に移ったという考え方)を世界に拡大してきたキリスト教にあったと言われている。

このため、ユダヤ人は、クリスチャンとの関係は受け入れないようになっていた。

しかし、近代に入って、イスラエルが再建され、ユダヤ人がエルサレムに戻る、世界中からユダヤ人たちがイスラエルに帰還を果たす、など、聖書の預言が次々に実現することになる。

それを目の当たりにした、主に福音派クリスチャンたちが、反ユダヤ主義と教会の関係を悔い改め、逆にユダヤ人、またその国イスラエルに、愛を示すとして、明らかな支持と実質的な支援も行うようになった。

特に2000年代初頭の第二次インティファーダで、イスラエルが苦しんでいる時に、イスラエルを実質的、政治的にも支える様子が、イスラエルの政界でも認められるようになり、2004年1月、最初のクネセト・キリスト教同盟議員連盟(KCAC)が設立された。

注目すべき点は、この時、ユダヤ人たちが、キリスト教徒たちが、イスラエルの神について書かれている聖書への信仰に基づいて、イスラエルを愛し、支持していることに目が開かれた点である。

政治的な支持は、簡単に崩れるが、信仰に基づく支持であれば、途中で崩れることはない。また政府の立場がどうあれ、信仰に基づいてイスラエルを支援する人々は、世界中に存在する。その人々がそれぞれの国で、政府に働きかけることも可能である。非常に強力な草の根力と言える。

IAFの発起人は、聖書を重んじる、ユダヤ教右派系の政党「イスラエル我が家党」のエリ・スターン氏であった。

そうして、この2年後の2006年、まずキリスト教国である、アメリカの下院で、超党派のイスラエル同盟が設立された。

その翌年2007年、イスラエルで、イスラエル同盟財団(Israel Allied foundation(IAF))が正式に発足となった。

israelallies.org

こうして、IAFと全世界のキリスト教会指導者たちとの対話と協力が始まり、IAFにつながる、親イスラエル議員連盟は、これまでに世界62カ国(世界6大陸)となっている。

その中には、現在、イスラエルに厳しい目を向けているヨーロッパ諸国や、EUの中にも支部がある。

さらに、このうち6カ国は、アフリカ諸国で、今年7月に発足したところである。参加する議員は、総数1600人にのぼっている。

IAF創始者のスターン氏が、2017年に亡くなったあと、ジョッシュ・ラインスタイン氏(49)が引き継ぎ、現在も会長を務めている。このころから、イスラエル政府プレスオフィスが、クリスチャンメディアサミットを毎年行って、情報発信による関係改善にも務めはじめていた。

ラインスタイン氏によると、今年7月にアフリカから6カ国が加盟したように、反ユダヤ主義、反イスラエル主義が荒れ狂う世界の中で、ゆらぐ弱い政府とは対照的に、イスラエルを支援するクリスチャンは、怯むことなく、逆に増えているとのことであった。

こうした中、日本でもIAFに加わった議員がいたとのことだが、活動は継続できていなかったようである。そこへ、2022年、グッドサマリタン教会の牧師で、親イスラエルでもある、金子道仁氏(55)(日本維新の会)が衆議院議員となり、IAF日本支部再建を決意したとのこと。

なお、日本には、日本イスラエル友好議員連盟(1984年発足)がある。こちらは、信仰とは関係なく、政府が、外交上の必要の中で発足させた組織である。日本・イスラエル交流会は、その下部組織として活動する。金子議員は、クリスチャン議員に限らず、広く参加を募っていくとしている。

イスラエルでは、この件を、アルーツ7が、「イスラエルは孤立してない」とのタイトルで報じていた。

www.israelnationalnews.com/news/415016

発足式に参加した人々

今回の発足式には、代表の金子道仁議員、IAF代表のジョッシュ・ラインスタイン氏、ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使、ジョージ・グラス駐日アメリカ大使が出席した。

日本からの現職議員の参加は、今回は1人だけで阿部弘樹議員。この他、政治団体としてのクリスチャン政治家ネットワーク、オリーブの会監事の五十嵐義隆氏、元沼田市議会議員島田康弘氏が出席していた。

日本のクリスチャン界などで、親イスラエルとみられる重鎮たちとしては、東住吉キリスト教会の高原剛一郎氏、明石清正牧師夫妻、ビズテリアクラブ代表の勝山牧生氏、救う会の西岡力氏、ハンガーゼロの近藤高史氏 今回の通訳を務めた永井信義牧師。また、日本会議会長で元安倍首相当時、内閣参謀参与だった谷口智彦氏が出席していた。

また、今年5月から、ガザ南部で、食料配布を行なっている、アメリカのGHF(ガザ人道財団)のCEO ジョニー・ムーア氏が、ビデオレターとともに、オンラインで参加。質疑応答の機会もあった。ムーア氏は、アメリカの福音派教会の牧師である。

ジョージ・グラス駐日米国大使とギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使:アメリカとイスラエルは一つ

ジョージ・グラス駐日アメリカ大使は、「2023年10月7日に、イスラエル市民1200人を残虐に虐殺したハマスには、もはや居場所はない」「ガザにおける貧困の原因は、ただハマスにある」と明確にイスラエルと同じ立場であることを表明した。

また、トランプ大統領の元で、永続的な平和の基礎を築く努力をしている。そのためには、イスラエル、パレスチナ双方を重視しなければならず、イスラエルを無視して、パレスチナ国家を承認することは、今行なっている努力を破壊することになると述べた。

jp.usembassy.gov/ja/ambassador-glass-addresses-parliamentary-israel-allies-caucus-ja/

これを受けてギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使は、日本・イスラエル交流会を立ち上げた金子議員、また集まった人々に感謝を表明するとともに、強力にイスラエルと共に立っているアメリカに心からの感謝を表明していた。

コーヘン大使は、イスラエルは、中東で唯一、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が調和している国だと強調。イスラエルを攻撃するテロとの戦いにおいて、ユダヤとキリスト教同盟の重要性を述べた。

日本では、報道の偏りもあり、反イスラエル感情は世界3位だという。加えて、クリスチャン人口(親イスラエルはさらに少ない)も少ない日本で発足した親イスラエル議員連盟に対し、両大使は、アメリカとイスラエルの同盟関係の確実さを強調し、この動きの背後には、アメリカもいると、発足に強力なはげましを送った形となった。

ジョッシュ・ラインスタイン氏:信仰に基づく外交とは

ラインスタイン氏は、イスラエルのユダヤ人で、クリスチャンではない。発足式の前に、東京都内(前日には大阪市内)でも、キリスト教会牧師たちへのセミナーを実施していた。そちらの情報も含めて報告する。

ラインスタイン氏は、世界がイスラエルを憎むことは、Does not make sense, 理に適っていないと指摘した。

たとえば、イスラエルは世界に多大な貢献をしているのに批判しているということである。たとえば、ラップトップ、セルフォン、CTスキャンなど、今の私たちの生活の一部になっている技術の多くは、イスラエルからきている。

また、反イスラエルに走っているのは無神論者や、左派系の人々、有名大学の学生たち、そしてカトリックなどメインラインのキリスト教である。しかし、イスラエルは、民主主義で自由な国である。

イスラエルでは、選挙で政治家が決まり、女性が首相になるほど男女平等であり、言論の自由もある。

イスラエル市民の20%はアラブ人だが、ユダヤ人と同じ権利を持ち、教育も保証されている。中東では、クリスチャンが、各地で迫害され虐殺される中、その人口が減っている。

イスラエルでは、中東で唯一クリスチャンが増えている。左派たちが、反イスラエルに走ることは、まったく理に適っていないということである。なぜそうなるのか。

ラインスタイン氏は、イスラエルを見れば、聖書がリアルであることがわかるとして、結局のところ、イスラエルを憎む人は、聖書に、その神に反発しているということだと語った。

イスラエルは、7つの前線に囲まれながらも勝利しつづけている。ハマス、ヒズボラ、シリアの前政権も倒れた。イランもアメリカとの協力で大打撃を与えた。これは、私たちの力ではなく、イスラエルの神がいるからだ。

世界、日本も今、イスラエルと、その同盟国アメリカの側につくのか、ロシア、中国、イランの側につくのか決めなければならない。それが日本の将来を決める。

聖書を知っているクリスチャンのリーダーは、今重大な使命を担っている。それぞれの国の政府が、正しい道を選ぶよう、働きかける時だとラインスタイン氏は語った。

またクリスチャン人口が低い日本において、何をするべきかとの質問に、「聖書を伝えてほしい」と語った。聖書がわかれば、イスラエルに対してどうするべきか、明らかだということである。

要するに、がんばって日本で、福音伝道してくださいと、ユダヤ人に言われたような気がした。

なお、ラインスタイン氏の横には、スマートな若者が立っていた。聞くと、もうすぐ従軍なので、その前に、これから一緒にタイに旅行に行くとのことであった。重要人物の息子でも分け隔てなく従軍するのがイスラエルである。

GHF(ガザ人道財団)のジョニー・ムーア氏:国際非難の中24時間警備体制

ガザでは、国連によるガザへの人道支援物資搬送のトラックがハマスなどに略奪され続けていたことから、アメリカは、ガザ市民の方から、物資を取りに来てもらうシステムを考案。

イスラエル軍が、治安を担当する中で、GHF(ガザ人道財団)が、ガザ南部に4ヶ所の配布センターを設けて、配布を開始した。

しかし、市民は長距離を歩いて物資を取りに行かなければならないことや、道中や、センターでの暴動で死者が相次いだ。ハマスは死者をすべてイスラエル軍によるものと報告した。

国際社会はそれをそのまま受け入れ、国連もイスラエルを非難している。こうした中、GHFの最初のCEOは短期で辞任。その後を継いだのが、ジョニー・ムーア牧師だった。

ムーア氏によると、国連の物資配送方法では、途中でハマスや、空腹な市民などに強奪され、目的地に到達するのは、わずか5-10%。また、配給されている物資のおよそ20%は、ハマスが地下トンネルなどに保管しているとみられている。

このため、イスラエルは国連の食糧配布を一時停止し、イスラエル軍による治安維持の中、GHFが、ガザ南部に4ヶ所の配布センターを設けて、人々に食料を配布。これまでに1億6000万食分の食料を配布したという。出資はアメリカだが、グッドサマリタンパースも協力しているとのこと。

しかし、これが、ハマスには不都合であることは明らかで、ハマスは、GHF周囲で妨害行為を続けている。各地で衝突が起こっていることは否定できないが、ムーア氏は、配布センター内で人々がイスラエル軍に殺されているというハマスの主張は偽情報だと否定した。

ムーア氏は、まずGHF配布センターは安全だと強調。女性のみのラインもあり、GHFに食料をとりに来る市民たちが、アメリカとトランプ大統領に心からの感謝を述べていることを知ってほしいと強調した。特に12歳の少女が感謝を表明したことに感動したと語った。

また、実際のところ、ガザのGHFで働いているのは、地元ガザ市民とのこと。彼らは喜んで同胞のために働いているが、これまでに12人がハマスの犠牲になった。

ムーア氏は、GHFがうけている国際社会からの非難についての反論も行った。一つは、GHFは国連をないがしろにしているという中傷である。ムーア氏は、国連の組織は膨大であり、それに取って代わるというような思いはまったくないと強調。UNRWA以外のユニセフなどの国連組織、国連と協力もするUSAID(アメリカ国際開発庁)とは協力していると語った。

ムーア牧師は、この使命を無償で引き受けたという。しかし、GHFが世界から非難を浴びる中、ムーア氏にも死の宣告があり、深刻な治安問題を抱えるようになっている。現在、24時間の警備体制の中にあり、来日はかなわなかったとのこと。

ムーア氏は、あまりにもさまざまなことがある中で、「成し遂げることを考えるのはやめた」と語った。「全ては、自分の力ではなく、主の力で動いている。私が世界を救う必要はない。私はただ、アクションを起こすのみだ」だとの考えに至ったと語っていた。

ムーア氏は、イスラエルとともに非難を受ける身となり、信仰による外交を実質的に表している。ムーア氏の笑顔からは、同じ主を信じる兄弟である霊的なつながりを実感し、なんともうれしかった。

これからの活動について:金子道仁議員

金子議員によると、今回の発足式には、石破首相や多くの議員たちにも声かけをしたという。しかし参加した議員は1人だった。

これから、このイベントについてなど、さまざまな情報発信をしていくとともに、GHFとの関わりなども模索していくとのこと。将来、ガザのGHFにも実際に見学に行きたいと言われていた。

石のひとりごと

イスラエルのユダヤ人たちが、クリスチャンの親イスラエル運動が、信仰に基づいていることに目が開かれて、両者の間に、今、信頼関係が始まっていることは、非常に画期的なことだと思う。

そこへアメリカにトランプ大統領が現れ、アメリカの官僚の多くが福音派になり、イスラエルを支えようとしている。そうした中、この渦中にあるGHFのCEOが福音派牧師のムーア氏である。いよいよ、主の元で、ユダヤ人とクリスチャンが、苦難を共にしながら、一つになる前段階に入ったようである。

今、ガザ市では、戦闘が拡大し、ガザ市民の新たなエクソダスがすすんでいる。GHFは、これからガザ南部に、センターを増やすとも言われているが、国際社会からの非難は高まる一方である。その導きとともに、ムーア氏自身の安全とその導きのために、強い祈りのサポートが必要になっている。

また、こうした時期に、クリスチャンである金子道仁議員が、数年前から永田町に送り込まれ、この道が開かれたこと。それは日本にとっても非常に重要なことである。

なぜなら、終わりの日に、主は国々を裁くと書いてあるからである。何について裁くのかといえば、主の名がつけられているイスラエルに何をしたかが、大きな基準になると書かれている。ラインスタイン氏が言われているように、イスラエルを否定することは、聖書、またその神を否定することになるからである。

主は御救いを知らしめ、その義を国々の前に現された。主はイスラエルの家への恵みと真実を覚えておられる。地の果てまでもが、みな、われらの神の救いを見ている。(詩篇98:2-3)

私たち日本人クリスチャンは、大変な主の恵により、イエス・キリストの十字架と復活を信じるようになった。聖書の神、この地上においては、イスラエルの神としてご自身の存在を証しておられる、創造主であり、完全な主権者である主につながっている。とりなしができる立場に置かれているということである。

私たちは、日本のために、国として実質の動きのために、そして、救いのために取りなしていく使命がある。

今、政府の中で、親イスラエルクリスチャンであることを宣言した金子道仁議員。これから反発も出てくるかもしれない。国会の中で、共に立つ議員が与えられ、増やされていくように。ご自身と家族、教会も主が守り、祝福してくださるように。日本の国のためにも金子議員の働きを祈って支えていきたいと思う。

そして、この大きな救いを取り次いでくれたイスラエルの国とその人々のためにとりなす使命も忘れてはならない。ガザでは多くの戦死者が出ている中、ラインスタイン氏の息子ももうすぐ従軍である。具体的に何を祈るのか、主に聴きながら、日々とりなしていこう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。