ロシアのショイグ国防相がイランを訪問・武器供与開始か:スンニ派アラブ諸国はどうする? 2024.8.6

Iranian Armed Forces Chief of Staff, Major General Mohammad Bagheri, meets with Russian Security Council's Secretary Sergei Shoigu in Tehran, Iran August 5, 2024. Iranian Armed Forces Office/WANA (West Asia News Agency)

イラン攻撃緊張続く:外交で緩和努力もイランの姿勢変わらず

昨日、ブリンケン米国務長官が、イランの攻撃は、24―48時間以内に始まる可能性が高いと述べ、中東では特に緊張が最大限に高まっている。しかし、まだどういう動きになるのかは見えていない。

アメリカがペルシャ湾など地域に空母などを増強派遣。5日からアメリカのクリラ中央軍司令官がイスラエル入りして、イスラエル支持を明白にして、イランを抑制する試みが行われている。

外交でもG7が、イランに攻撃を思いとどまるよう呼びかけている。ヨルダンとレバノンの外相がテヘランを訪問して、緊張の緩和を試みもした。

しかし、イランは、地域を巻き込む戦争は望んでいないとしながらも、イスラエルは罰すると言っており、戦争が阻止される様子はみえていない。

そうした中、5日、ロシアのショイグ国防相がイランを訪問。イランとの協力体制を示唆した。5日は、アメリカのクリラ中央軍司令官がイスラエルに到着した日であった。

ロシアのショイグ国防相がイランを訪問:イランに迎撃ミサイルシステムなど供与開始の情報も

ロシアのショイグ国防相は、5日、イラン側の招待を受けて、テヘランを訪問。イランのアシュティアニ国防相と、ペデシュキアン新大統領と会談した。

ロシアは、ウクライナとの戦争において、イランから、ドローンはじめとする武器の支援を受けている立場にある。

最近、イランは、ロシアに地対地弾道ミサイルをロシアに提供したとの情報もある。イランのぺデシュキアン大統領は、ロシアを「戦略的にも重要な同盟」と呼んでいる。

一方、ロシアは、イラン傀儡、イエメンのフーシ派にイランを通じて、武器を提供しているとアメリカの当局者は示唆していた。

先月、テルアビブが、イエメンのフーシ派が飛ばしたイラン製ドローンの攻撃を受けて、1人が死亡したが、それはこの直後のことであったと言われている。イランとロシアの協力関係は否定できない事実である。

ニューヨークタイムスによると、ロシアが、イランの要請に応じて、高度な迎撃ミサイルシステムやレーダーをイランに供与し始めたとのこと。

www.timesofisrael.com/russia-said-to-be-delivering-advanced-air-defenses-to-iran-as-tehran-touts-ties/

ロシアのプーチン大統領は、テヘランでハマスの指導者ハニエが暗殺されたことについて、地域にとって非常に危険な行為だと、強く非難する声明を出している。名指ししないまでもイスラエルを非難している形である。(イスラエルはハニエ暗殺を認めるとも認めないとも言っていないが)

イランとイスラエルが戦争になった時、ロシアはどうでるだろうか。イスラエルの背後にはアメリカがいるので、中東から世界戦争に発展する可能性も出てくる配置になりつつあるようである。

www.timesofisrael.com/top-russian-defense-official-in-tehran-to-cultivate-stronger-security-ties/

スンニ派諸国はどうする?

4月にイランが、300発のミサイルやドローンでイスラエルを攻撃した際、近隣のスンニ派諸国であるエジプト、ヨルダン、サウジアラビア、UAE,バーレーンなどは、イスラエルとアメリカがこれらのミサイルを迎撃することに協力したことから、イスラエルへの被害はほとんどなかった。

アメリカは今回もその形を維持したいところである。しかし、エジプトは、ハマスが生まれたムスリム同胞団が国内におり、下手にイスラエルを支援することはできない。

先週、エジプトとガザの間のフラデルフィ回廊に、地下トンネルが多数見つかっており、その中には、車が通れる規模のトンネルもあった。エジプトはこれを知らなかったか、黙認していたということである。エジプトとハマスの関係は複雑である。

今回、エジプトは、領空を閉鎖することで中立の立場をとると、イランに通知したとカタールのメディアが伝えた。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/egypt-says-it-will-not-assist-israel-in-repelling-iranian-attack-report/

最大のスンニ派国サウジアラビアは、UAE、バーレーンに続いて、イスラエルとの国交正常化にむけた動きが進められていた。しかし、イスラエルが合意し得ない、パレスチナ国家を設立することを条件としたため、交渉は壁にぶつかっていた。

加えてアメリカの次期大統領選挙が混乱していることを受けて、ネタニヤフ首相は、11月にアメリカの大統領が決まるまで、サウジアラビアとの交渉は棚上げすることを決定したとの情報がある。

www.timesofisrael.com/report-netanyahu-decides-not-to-seek-normalization-with-saudis-before-us-election/

ロシアとイランに対し、アメリカとイスラエルという構図の中、やはりイランを敵とする湾岸スンニ派諸国が、どこまでアメリカとイスラエルと協力するのか、先が見通せない流れになっている。

石のひとりごと

世界を緊張に陥れながら、イランはまだ動く気配をみせず、イスラエルも動いていない。ロシアからの武器を待っているのであれば、イランが、核兵器を搭載できる武器もまもなく完成してしまうかもしれない。主の御顔を仰ぎ見るのみである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。