レバノン国境ミスガット・アム:眼下に広がるヒズボラの家々 2016.7.10

今年は、2006年に第二次レバノン戦争が発生してから10年目にあたる。レバノンとの国境、キブツ・ミスガット・アムでのイスラエル軍の記者会見に参加した。

キブツ・ミスガット・アムは、上ガリラヤ地方のレバノンとの国境線、ナフタリ高地の上にあり、西側と西北側は直接レバノンに面している。

北東は、イスラエルの町メツラの背後に、ドブ山。この山は、2006年の第二次レバノン戦争の時に3人の兵士が拉致された現場である。紛争の象徴のようなシェバ農地、分断された町ラジャーも見える。レバノンに続く一本道もみえ、いつヒズボラがなだれ込んで来ても不思議はないといった地形だ。

イスラエル軍によると、2006年の第二次レバノン戦争の戦後、この地域では、これまでになく静かな日々が続いているという。しかし、イスラエル軍は、ヒズボラが、”次回の戦争”に備え、膨大な数のミサイルやロケット弾を蓄積していることも、しっかりと把握している。

ミスガット・アムからすぐ下には、赤い屋根の家々が見えるのだが、IDF司令官(氏名非公開)によると、その家々の中に、ミサイルやロケット弾が隠されているという。それらは地下トンネルでつながっている。ヒズボラの司令部もそれらの家々のなかにある。

次回もし、ヒズボラと戦争になった場合、1日に1500-2000発のミサイルがイスラエルに撃ち込まれるとイスラエル軍は予測している。2006年の戦争でのミサイル攻撃は、一日150-180発だった。つまり、次回は、アイアンドームや迎撃ミサイルが追いつかないミサイルの雨になるということである。

さらに今度は、ミサイルだけでなく、ヒズボラがイスラエル領内に入り込み、ミスガット・アムなどのキブツや入植地を占領しようとするとイスラエルは推測、警戒している。

ヒズボラは,イランのいわば手足である。ミスガット・アムと同様にレバノンが目の前というキブツ・イーロンを訪問したが、キブツを見下ろす丘の上にあるヒズボラの施設の上に、イランの旗がひるがえっていた。次の戦争にはイランも大きくかかわるはずである。

当然、イスラエルは、いかなる攻撃をうけても、早期に効果的に反撃する。司令官によると、もし一発でも市民に向けて撃ち込まれ、人的被害が及ぶと、イスラエル軍が大規模に反撃し、「いまだかつて経験した事がないような戦争」になると警告する。

このままヒズボラもイスラエルも、”次回に戦争”にむけての準備だけどんどん整えて、戦争になった場合の被害のあまりの大きさから、結局戦争に至らないという可能性もある。しかし、中東では、何がきっかけとなって戦争になるかは全く予想がつかないので、明日、戦争が勃発している可能性も十分ある。

いずれにしても、イスラエル北部、レバノンとの国境に、とんでもない火薬庫があるということは確かなようである。

<石のひとりごと>

今回、IDF幹部司令官が、「次に戦争になれば、いまだかつて経験したことがないような戦争になる」と言っていたのが印象的だった。

ミスガット・アムから、歴史的にも多くの戦いが繰り広げられて来たメギド(ハルマゲドン?)は、車で1時間ぐらいである。司令官が緊張をこめて、「いまだかつてないような戦争」というのを聞いていたら、世界を巻き込む戦争に発展していく様子を想像してしまい、緊張させられた。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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