ユダヤ対アラブ:サッカー試合 2013.2.11

イスラエルの人気スポーツはプロ・サッカー。エルサレムのテディー・スタディアムでは、湾岸戦争でスカットミサイルが飛来していたときにもサッカーの試合が予定通り行われたほどだ。

イスラエルにあるプロのサッカーチームはエルサレムの「ベイタール」、テルアビブの「マカビー・テルアビブ」、ハイファの「ハポエル・ハイファ」など町ごとにチームがいる。アラブ人だけのチームもあり「ブネイ・サクニン」という。

<ユダヤ人のチームにアラブ人(イスラム)はいらない!?>

このうち、エルサレムのベイタールには、「反イスラム、反アラブ」を叫ぶ国粋主義的なファンクラブがあることで知られる。また、ベイタールは伝統的にリクード党(ネタニヤフ首相の党)とも関係が深い。

そのベイタールが2週間前、チェチェン出身のアラブ人(イスラム教徒)2人を選手として採用することを発表。

すると、「ユダヤのベイタールにアラブ(イスラム教徒)が入るべきではない。」と激怒したファンクラブが8日、ベイタールのオフィスに放火するという事件が発生した。

ネタニヤフ首相は9日、自分もベイタールのファンであることを示した上で、「暴力や人種差別、ボイコットは受け入れられない。」と放火を強く非難する声明を出した。

しかし、ベイタールの一般のファンへのインタビューをみても、「アラブ人はテロリストだ」というなど、潜在的にアラブ人嫌いがあることは否定できないようである。

<エルサレムで「ベイタール」VSアラブチーム「ブネイ・サクニン」の試合>

放火からわずか2日後、ネタニヤフ首相の声明の翌日にあたる10日、エルサレムでベイタールとアラブ人チームのブネイ・サクニンの試合が行われた。ベイタールには問題のチェチェン出身の選手のうち1人も出場していた。

エルサレムとベイタールの「人種差別」のイメージ回復のため、この試合にはイスラエルの文化スポーツ大臣、エルサレム市長、チェチェン市長も参加。計700人の警察、治安部隊がスタジアムの内外を警備した。

上記ファンクラブのメンバーは入場禁止となった。75人が試合中に退場となり、15人が逮捕されたが、このうち9人はアラブ人で6人はベイタール関係者だった。

試合中は、「ベイタールは永遠にピュア」「アラブに死を!」というようなスローガンはなくなり、「暴力と人種差別?我々と関係ない。」「エルサレムは寛大」などという文字が出された。

なお試合の結果は2:2のひきわけ。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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