強硬右派政権になってから、まるでパンドラの箱をあけたかのように、さまざまな紛争が噴き出している。
日程は不明だが、ネタニヤフ首相と、ヨアフ・キシュ教育相は、イスラエル国立ホロコースト記念館、ヤド・ヴァシェムのダニー・ダヤン館長を交代させる意向を、書簡にてヤド・ヴァシェムに伝えた。
Times of Israelによると、キシュ教育相は、数ヶ月前から、ダヤン氏の解任を求めていたという。最終的に、ダヤン氏の任命時の手続き不備や、運営ミスを指摘する形で、解任を公に表明した形である。
運営ミスとは、前のホロコースト記念館に、明らかに司法制度改革に反対する歌手ケレン・ペレス氏を選んでいたことなどがあげられている。
ダヤン氏は、以前、西岸地区ユダヤ教入植地の評議会議長、アメリカの在ニューヨークイスラエル領事などを務めた後、野党ニューホープ党から議員に立候補したが、落選するという経緯を持つ人物。
ヤド・ヴァシェム館長には、前のベネット政権の時に使命を受けて着任していた。いろんな意味で、野党関係者ということである。
一方、ネタニヤフ首相とキシュ教育相が、ダヤン氏の後任に任命するのは、リクードの元議員ケレン・バラク氏を予定していると伝えられている。このため、政治的な意向で、ヤド・ヴァシェムまでが、政権の支配下に入れられるとの疑念が広がっている。
ヤド・ヴァシェムは、イスラエル国立ではあるが、イスラエルだけの施設ではない。全世界のユダヤ人のための、600万人の犠牲者を覚える追悼記念館である。
ダヤン氏解任については、ヤド・ヴァシェム内部の職員たちからも反対が出された。アメリカのユダヤ人組織も、ヤド・ヴァシェムは政治から切り離され、独立を維持すべきだと表明。
バイデン政権の反ユダヤ主義特使も、正式な声明として、ヤド・ヴァシェムは。「専門性と独立性」を保つべきだと表明した。EUの反ユダヤ主義対策調査官からも同様の意見が出された。加えて、全世界のホロコースト専門家123人からも、ダヤン氏解任には反対する意見を出した。
一気に噴き出したバッシングに、ネタニヤフ首相は、野党関係のダヤン氏が選出された時は、だれも反対しなかったではないかといった返答もしたが、最終的に、今後どうするのかの明確な答えはなかったとのこと。