モハンマド・デイフ・イスラエル長年の宿敵:ハマスの霊的背景は? 2024.7.14

左が今、右が若き日のモハンマド・デイフ

モハンマド・デイフ:ハマスのカッサム旅団指導者

モハンマド・デイフ(58)は、1965年、ガザのカン・ユニス生まれている。両親は、1948年のイスラエル独立の際に、ガザへ移動したパレスチナ人である。

デイフは、1987年にハマスが設立されてからのメンバーで、1990年代には、イスラエル国内で多数の自爆テロを指揮。イスラエルの最重要指名手配犯になった。

2002年からは、ハマスの主要部隊である、アル・カッサム旅団団長となり、ハマスをゲリラから、本格的な軍事部隊へと成長させた。

2014年のハマスとイスラエルの戦闘の際、イスラエルの空爆で、デイフの妻と、まだ幼児の息子と娘を失っている。カッサム旅団は、10月7日のイスラエル侵攻の主要部隊であった。

イスラエルがこれまでに暗殺したのは、アフマド・ヤシン(ハマス創設者)、アブデルアジズ・ランティシ博士などで、デイフはこれに名が連なるほどにイスラエルの宿敵であった。

イスラエルは、これまでデイフの暗殺を少なくとも7回行い、重傷(足失った可能性も)を負わせたが、毎回生き延びている。今回が8回めであった。

10月7日以降では、サレアハ・アル・アロウリ、マルワン・イッサを暗殺している。デイフが死んでいれば、3人目になる。

ハマスの霊的?目に見えない背景

エルサレムポストは、デイフが死んだかどうかは問題ではないと指摘する。デイフは、イスラエルの暗殺を生き延び、重傷を追ってからは、長年、表の出てくることがなくなっている。

しかし、その影響力は大きいことから、「亡霊」の異名をとるほどの存在であった。UAEのメディアは、デイフを「9つの命を持つ幽霊」と呼んでいたという。

ハマスという組織は、ガザで目に見えるところにいる指導者ではなく、カタールなど海外にいる指導者や、どこにいるかもわからない、デイフのような指導者によって成り立っている。したがって、ガザでの戦闘でいくら指揮官や部隊を殲滅したとしても、それでハマスは終わらないということである。

もう一つの問題は、この戦闘が、ハマスとイスラエルという地域限定の問題だけではないという点である。ハマスは、カタール、イラン、ロシア、中国、NATO加盟国のトルコなどの支援を受け、さらには、国連組織のUNRWAも協力する中で、10月7日の攻撃を行っていた。

アメリカとEUも、デイフをテロリストに指定している。今年、ICC(国際刑事裁判所)は、ネタニヤフ首相、ギャラント防衛相、ハマスのヤヒヤ・シンワル、イシュマエル・ハニエの逮捕状を請求したが、デイフもそのリストに入っていた。

しかし、エルサレムポストは、西側メディアが、全く表には出ていないデイフを、ハマスの「総合参謀本部長」との位置付けで報じていると指摘する。ハマスを、単なるテロ組織以上の、特別扱いしているようであり、どこか正当な抵抗組織と見ていることを匂わせるような表現をしているのである。

従って、イスラエルは、自衛のためにハマスと戦っているのではあるが、実は、世界を敵に回していくことにもつながっていくということである。今となってはデイフが死んでも、イスラエルにとってハマスの問題は続くということである。

こうした事態になっていることについて、エルサレムポストは、これまで20年近く、デイフを象徴として、ハマスを野放しにし、ここまで大きくなることを許してきたことは、イスラエルの失敗だったと指摘している。

www.jpost.com/israel-hamas-war/article-810168

世界は、ガザへの空爆で90人以上の“民間人”が死亡したと報じている。ハマスは、軍服を着ていないので、実際にはどのぐらいが民間人だったかは不明である。

デイフの死が何も変えないのと同様、その点にも世界は無関心である。今後、イスラエルの孤立がますます深まることは避けられないだろう。

石のひとりごと

今更ながらではあるが、私たちはこの問題をただ、目に見える様子や、人間的な理解だけで判断するのではなく、霊的な戦いとしての背景もみて、霊的にも戦うべきだろう。

イスラエルが、常に正しいとは言わない。世界のどの国とも同じように、取り返しのつかない失敗で、自ら国難を招き、また世界に問題を残す結果になることもある。

しかし、だからこそ、主の前にとりなすのであって、特に聖書の神を信じる者たちは、イスラエルを非難する側に立ってはならないと思う。聖書には、以下のような表現が多数あるからである。

しかし、わたしのしもべ、イスラエルよ。わたしが選んだヤコブ、わたしの友、アブラハムのすえよ。わたしは、あなたを地の果てから連れ出し、地のはるかな所からあなたを呼び出して言った。「あなたは、わたしのしもべ。わたしはあなたを選んで、捨てなかった。」

恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。わたしがあなたの神だから。わたしはあなたを強め、あなたを助け、わたしの義の右の手で、あなたを守る。

見よ。あなたに向かっていきりたつ者はみな、恥を見、はずかしめを受け、あなたと争う者たちは、無いもののようになって滅びる。あなたと言い争いをする者を捜しても、あなたは見つけることはできず、あなたと戦う者たちは、全くなくなってしまう。

あなたの神、主であるわたしが、あなたの右の手を堅く握り、「恐れるな。わたしがあなたを助ける」と言っているのだから。

恐れるな。虫けらのヤコブ、イスラエルの人々。わたしはあなたを助ける。―主の御告げ―あなたを贖う者はイスラエルの聖なる者。  (イザヤ書41:8-14)

 

ヤコブよ。これらのことを覚えよ。イスラエルよ。あなたはわたしのしもべ。わたしが、あなたを造り上げた。あなたは、わたし自身のしもべだ。イスラエルよ。あなたはわたしに忘れられることがない。

わたしは、あなたのそむきの罪を雲のように、あなたの罪をかすみのようにぬぐい去った。わたしに帰れ。わたしは、あなたを贖ったからだ。(イザヤ書44:21-22)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。