13日朝10時、アメリカのポンペオ国務長官が、イスラエルに到着。イスラエルが3月下旬にアメリカを含め、空路をほぼ完全に閉鎖してから始めての公式訪問となった。本日予定されていた、新ネタニヤフ政権の就任式は明日14日に延期された。
オンラインでの会議でも可能ではない中、わざわざやってくるというところに、アメリカとイスラエルとの関係の深さを強調するとともに、パレスチナ問題、イラン問題などに対するアメリカの意思表示でもあった。明日から新内閣を発足させるネタニヤフ首相にとっても大きな後押しとなった。
13日、夕方までの短い滞在で、ポンペオ国務長官は、ネタニヤフ首相、時期防衛相で、1年半後には首相になるベニー・ガンツ氏、また時期政権で、外相になるガビ・アシュケナジ氏とそれぞれ別々に会談を行った。
会談の主な論点は、以下の3点である。
1)西岸地区の合併:入植地の合併はイスラエルが決めること
1月下旬、アメリカは、長く発表できなかった「世紀の取引」と称する中東和平案を公表した。それによると、イスラエルが、西岸地区内のユダヤ人入植地とヨルダン渓谷(西岸地区領域の約30%)の主権を持つことは国際法違反ではないとの画期的な見解が含まれていた。
それを認めた上で、西岸地区の残り70%の土地と、ガザ地区をトンネルでつないで、パレスチナ国家を設立するというものであった。西岸地区の入植地は点在しており、それがイスラエルの領土であるとするなら、パレスチナの領土の中に、点々とユダヤ人入植地が存在するということになる。
ガザ地区とはトンネルでつなげるということだが、領土が分裂した状態になるので、アッバス議長は、「NOが1000回だ。」と徹底的に拒絶したのであった。また、イスラエルでも、パレスチナ国家の設立に反対する右派たちは、これに反対した。
*アメリカの世紀の取引:
mtolive.net/世紀の取引:トランプ大統領の2国家2民族案と/
実際のところ、この和平案は、土地の分割があまりにも複雑なので、実際に実現するとは考え難い。また、よーくみると、この方針の前半部分である西岸地区の入植地とヨルダン渓谷の合併は、のちにパレスチナの国ができようができまいが、関係なく実施できる。取引自体の実現は別として、この部分だけを進める目的で出されたものとの見方もできなくもない。
特に今、コロナ危機で、どの国も自国の回復に手いっぱいで、ボイコットなどの動きにはでにくいだろう。湾岸諸国も、イスラエルの技術力を得ようとしている最中である。NOが1000回だと徹底的に拒否しているパレスチナ自治政府が、交渉の場に出てくることもまずありえない。
ポンペオ国務長官は、来訪して世紀の取引を押してパレスチナ国家設立をすすめるとの姿勢と強調しながらも、イスラエルの合併案について、賛成するとも反対するとも明確には示さなかった。このため、イスラエルとしては、7月1日という日程は、別として、このまま合併にむかっていくとの方針をアメリカに伝えたと思われる。
ただ合併をすすめることについては、当然、メリットと同時にリスクもある。実際に行動に出るかどうかはわからないとしても、ヨーロッパやヨルダン、アラブ諸国もこれに強く反発する声明を出している。イスラエル国民の中にも、合併を支持しない人は多い。
以下は、合併にあたっての影響に関するINSS(国家治安研究所)の分析で、政府はバランスをみながら、合併案をすすめなければならないとしている。
www.inss.org.il/publication/the-coronavirus-and-the-annexation/
2)外交問題:中国との協力は控えてもらいたい
イノベーションの国、イスラエルは、新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬の研究が進んでいる。アメリカとの協力で、その進歩が期待できるとして、今後も協力を続けることを確認する。
一方、イスラエルは、中国から医療物資の輸入始め様々な協力活動を維持している。アメリカは、新型コロナの世界への拡散を初期に対処しなかった中国とWHOに責任があるとして、対立する立場である。友好国であるイスラエルには、中国との接近を控えてもらいたいと伝えたとみられる。
アメリカは、特に、イスラエルがハイファ港など軍事基地の建設にまで、中国企業を使っていることに懸念と反対を表明している。情報が中国に筒抜けになってしまうからである。
アメリカは、今回のポンペイオ国務長官の訪問は、入植地問題ではなく、主にこの中国に関する点であったと主張している。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/280221
3)イラン問題:イランへの圧力を継続する
イスラエルは、イランが、コロナ危機にあっても、シリア領内に軍事基地の進出を継続しているとして、4月以降断続的な攻撃を行っている。
それにより、イランがシリアから撤退し始めているとのイスラエル軍関係者の話もあったが、衛星写真の情報として伝えられたところによると、イランが、イラクに近いシリア東部に、地下の武器庫を建設していることがわかった。
www.timesofisrael.com/satellite-images-appear-to-show-iran-building-new-weapons-storehouse-in-syria/
イスラエルは、アメリカのイランへの経済制裁を継続してほしいと要請している
www.timesofisrael.com/in-israel-pompeo-calls-for-progress-on-trump-peace-plan-assails-iran/