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ベネット首相UAE公式訪問
12日、ベネット首相が、UAE(アラブ首長国連邦)へ、初の公式訪問を果たした。イスラエルの首相がアラブの国へ公式訪問するのは、歴史上はじめてのことである。ベネット首相は、UAEのザイード外相に迎えられ、13日には、アル・ナヒヤン皇太子と会談する予定である。
大きな歴史的行事だが、今回、訪問は直前まで公表されず、オミクロン株への懸念から、記者団の同行もなく、訪問の規模は小さいものであったとのこと。以下は、ベネット首相が自身のツイッターに投稿した映像
Making history in Abu Dhabi.
🇮🇱🕊🇦🇪 pic.twitter.com/Z7gZrnmP1n— Naftali Bennett בנט (@naftalibennett) December 12, 2021
UAEは、昨年9月にトランプ前大統領の仲介で実現したアブラハム合意に署名した4国(UAE、バーレーン、スーダン、今年に入ってモロッコ)のうち、最も積極的にイスラエルとの協調を進めている国である。すでにUAEの大使館がテルアビブに設置され、アル・カヤ大使が就任。
イスラエルも今年6月に、ラピード外相が、アブダビに大使館を開設して、アミール・ハイェク大使が就任している。イスラエルとUAEの間では、すでに、技術協力、直行便就航、観光においても活発な関係が始まっている。
さらに、先週、ヘルツォグ大統領が、電話で、アル・ナヒアン皇太子と電話で初会談し、両国の関係強化で、中東の平穏維持をはかることや、自由貿易の必要性などについても話し合っていた。今回のベネット首相公式訪問は、こうした流れの中で、両国の関係強化をさらに安定化させる目的で実現したということである。
以下はナヒアン皇太子との会談の様子
アメリカ不在の中東で変化する中東勢力図:イランにも接近する湾岸諸国
イスラエルとの新たな関係に進んでいるUAEだが、先月、イランとも地域の平和維持に向けて、関係改善をすすめることで合意。
今月6日には、UAEの国家治安顧問がイランを訪問して、ライシ大統領ら治安のトップたちと会談もしている。この時、ライシ大統領をUAEに招いたとのこと。
UAEは11月、ザイード外相がダマスカスを訪問して、シリアのアサド大統領と会談している。つまり、イスラエルとの国交を正常化するとともに、
イスラエルを憎むイランとシリアにも積極的に近づいているということである。
また、これに先立ち、サウジアラビアは、今年10月の時点で、イラクにおいて、イランとの対話を始めたことを認めている。サウジアラビアとイランは、それぞれスンニ派の代表とシーア派の代表なので、宗教的にも敵対する関係で、今もまだイエメンで代理戦争状態にある。
それが対話を始めたということは、こちらもかなりの歴史的な動きといえる。中東の勢力図は大きく変わりはじめているということである。
こうなった背景には、アメリカの中東での不在が明らかになってきたことが要因であると考えられる。
アメリカはアフガニスタンから撤退した後、イラクの米軍についても、現地イラク軍の訓練という当初の使命は完了したと発表し今いる2500人は駐留を続けるが、積極的な関与はしないという意思を明確にした。
こうした中、中東ではイランの核問題が、危機的なステージにさしかかっている。ウイーンでは現在、JCPOA関係諸国とイランとの新たな核合意にむけた交渉が行われているが、双方ともまったく譲歩しないので暗礁にのりあげている。
www.timesofisrael.com/iran-europe-not-offering-viable-solutions-at-vienna-nuclear-talks/
こうした中、イスラエルは着々とイランを攻撃する戦争の準備していることを隠しておらず、先週、ガンツ国防相が訪米して、アメリカにもその具体案を提出したとのニュースが入っている。
アメリカは今、ウクライナ問題でロシアと、台湾問題で中国と危機的に対立する状況にあり、中東にはまず手が回らなくなっている。万が一、イスラエルとイランが戦争になった場合、中東諸国は、ほとんどすべてが巻き添えになるだろう。
今、湾岸諸国(スンニ派)は、それぞれが、地域の平穏維持のために、これまでの常識を破ることもいとわない外交を展開しているのである。特にUAEはイスラエルとイランという最大の敵大国の間に入って、なんらかの仲介者的働きを担うことができるだろうか。
中東は今、非常に興味深い新時代に突入しているようである。
www.timesofisrael.com/as-us-focus-wanes-middle-east-countries-turn-to-each-other-for-solutions/