23日朝、トランプ大統領は、メラニア夫人ら家族を同伴せず、単独でベツレヘムへ向かった。予定通り、ムカタ(政府関係施設)で、約1時間の会談の後、両指導者は、共同の記者会見を行った。
アッバス議長は、パレスチナは、東エルサレムを首都として、イスラエルと平和に共存することを望むという従来の立場を強調。平和の障害は、宗教ではなく、占領と入植地、パレスチナ人の国を認めないイスラエルだと語った。
またイスラエルの刑務所に言及し、イスラエルは、人道的かつ合法的な待遇をするべきだと主張した。(イスラエルは、刑務所の環境は国際法上、合法的と主張している)
一方、トランプ大統領は、まずは、22日夜に発生したイギリス、マンチェスターで子供達20人以上が、自爆テロ(ISISが犯行声明)で殺害されたことをあげ、テロは絶対に終わらせなければならないと強調。
テロリストは「ルーザー(敗北者)」と呼ぶことにする。国々が協力しあえば、テロとの戦いに必ず勝つと宣言した。
中東和平については、アッバス議長もネタニヤフ首相も、平和な共存にコミットすると言っているので、アメリカはその実現のためにできるだけの支援をしたいと語った。
そこにパレスチナの国を立ち上げるとか、2国家解決案といった言葉は含まれていなかった。トランプ大統領の場合、当事者どうしがよいと思うなら2国家解決でも1国家解決でもなんでもいいのである。
トランプ大統領は基本的に、中東和平は当事者同士がディール(取引)をもって、実現するものと考えており、大国アメリカの主導で解決する、また解決させるべきものとは考えていない。
<パレスチナはテロの奨励をやめるべき:イスラエルと同じ視点>
しかしながら、トランプ大統領は、「テロ行為を見逃したり、報酬を与えたりすると、平和は実現しない。こどもに憎んで殺すことを教えるのをやめなければならない。」と、パレスチナ自治政府をけん制する発言を加えた。
ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のこの発言に注目し、「確かにトランプ大統領が言うように、テロを成功したテロリストの家族の報奨金を払うのはパレスチナ自治政府の法律にある。平和のためには、これを排除しなければならない。」と、強調した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4966107,00.html
<会談前の西岸地区の現状>
トランプ大統領は、「アッバス議長は、平和を求めており、イスラエルとの平和な共存を望んでいる」と理解したようだが、実際のパレスチナ社会をアッバス議長が代表しているとは限らない。
アルジャジーラ(アラブメディア)によると、パレスチナ人たちは、「トランプ政権がイスラエルに好意的である限り、和平交渉はすすまない。」と考えている。
特に将来、パレスチナの国になると考えられている西岸地区、また東エルサレムにユダヤ人の入植地が増え続けていることが、和平を妨害する根源だと訴えている。
しかし、トランプ政権になってから、イスラエルの入植地建設が急速にすすんでいること加え、先週着任したフリードマン米駐イスラエル大使が、強力な入植地支援者であることから、トランプ政権は、真剣にパレスチナ国家設立を認めていないのではないかと考えるようになっている。
*22日:ベツレヘム検問所でナイフテロ:犯行パレスチナ人射殺
トランプ大統領が到着した22日月曜、 西岸地区各地で、またイスラエルの刑務所でハンストを行っている囚人らを支持するデモが発生した。
エルサレムとラマラの間にあるカランディア検問所付近でのデモでは、パレスチナ人らが、道路を封鎖したり、車のタイヤを燃やすなどの暴動となり、イスラエルの治安部隊は催涙弾などを使って対処している。
午後には、ベツレヘム付近の検問所で、パレスチナ人がナイフで、イスラエルの国境警備隊を襲い、その場で射殺された。トランプ大統領は、そこからそれほど遠くないエルサレムの旧市街にいたころである。
このような呼びかけから、西岸地区、東エルサレムでは、学校は休み、店は閉店していた。昨日、トランプ大統領一行が歩いた旧市街でも、店がほとんど閉店していた様子が防犯カメラに映っている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4965919,00.html
マアン(パレスチナ・メディア)によると、パレスチナ人の間では、トランプ大統領が、パレスチナ自治政府のアッバス議長に会うためにベツレヘムを訪問する火曜、”怒りの日”として、パレスチナ人に反イスラエル行動に立ち上がるよう呼びかけが行われた。
そうすることで、トランプ大統領に、イスラエルの刑務所でハンストを行っているパレスチナ囚人の現状を知ってもらおうという動きもあった。これについては、幸い、衝突は発生しなかった。
www.maannews.com/Content.aspx?id=777228
*ハンスト者数十人病院へ搬送
前回、ハンストが始まって1ヶ月を超えたとおしらせしたが、やはり人間の体の限界がきているようである。昨日、数十人がイスラエルの病院に搬送され、搬送者はさらに増えるとみられている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4965360,00.html
<ハマスのトランプ大統領への反応>
ガザのハマスも、トランプ大統領はイスラエルに友好的だと理解し、反トランプであることを表明している。
23日朝には、ハマスかどうかは不明だが、シナイ半島からロケット弾がイスラエル領内に向けて発射された。幸い、空き地に落ちたため、被害はなかった。
(参照)以下のサイトには、アルジャジーラが、ハマス高官への興味深いインタビューがアップされている。
インタビューしているのはアラブ人だが、「結局のところ、ハマスは(イスラエルを認め)2国家案を受け入れるのか?」「自爆テロは推奨しているのか」など、イスラエルの聞きたいところを確認する形で質問しており、ハマスの矛盾が明らかになっている。
非常に複雑な中東和平だが、今後具体的にどうするのかの示唆は、今の所ない。今後の動きが注目される。
<石のひとりごと:大統領は育つ?>
今回、外遊において、トランプ大統領は過激な発言は控え、少しは世界の指導者アメリカの大統領の顔になりつつある印象を受けた。
しかし、同時にあまりにもイスラエルに関する理解が深く、イスラエルに友好的な発言で、ユダヤ人たちの拍手喝さいを受ける姿からは将来、このように、反キリストがイスラエルを取り込んでいくかもしれないとも思わされた。
余談になるが、今回、特にメラニア夫人(46)の完璧なまでの美貌が印象的だった。白いボディコンのスーツを着こなす小顔のモデルなので、横にならぶネタニヤフ首相夫人や、リブリン大統領夫人がかわいそうなぐらいだった。
空港到着時、手をつなごうとするトランプ大統領の手を叩き返す様子が映されるなどのハプニングはあったが、夫に同行中は、ほとんど話さず、突出して美しく立っているメラニア夫人は、トランプ大統領の花にもなっていたように思う。
トランプ大統領の「アメリカを偉大にする」との公約が少し見えてきつつあるような気がした。
<石のひとりごと2:イスラエル最悪の恥>
ひとりごと・・ではないのだが、今回、トランプ大統領訪問で、イスラエルの最悪の恥となったけっさくな事件を一つ紹介する。
若手議員(リクード)のオレン・ハザン氏は、賭博上経営の経過などが発覚するなど、様々なスキャンダルで、ひんしゅくかいまくりの議員である。
ハザン氏は、トランプ大統領の空港での歓迎式典にもぐりこみ、なんとジェレッド・クシュナー氏の席に座っていたという。
その後、トランプ大統領が、記念式典を終えて、政府閣僚たちに握手しに来ると、今度は閣僚の列にもぐりこみ(ハザン氏は当然、そこにいるべきでない)、トランプ大統領が来ると、セルフィを撮らせて欲しいと申し出る暴挙に出た。
しかもその瞬間、彼のスマホがうまく働かず、トランプ大統領を、一瞬待たせるというおバカ事態になった。さすがにネタニヤフ首相が、ハザン議員の手をつかんでやめさせようとしたが、その手をふりはらって、まんまとトランプ大統領とのセルフィに成功。
わずか十数分後にはフェイスブックにアップしていた。この写真が、なんとワシントンポストの「トランプ大統領イスラエルに到着」のヘッドライン写真に使われていたという。
日本では、非難轟々の一大事件になり、こんな議員は即刻クビになりそうだが、イスラエルでは、そんなことにこだわっているヒマはないため、そのまま放置のもよう。
実際のところ、ハザン議員の他にも、バト・ヤム市長など、招かれていなかった人も何人か、トランプ大統領と握手する閣僚の列に紛れ込んでいたという。よほどトランプ大統領に興味があったとみえる。そういうところがイスラエル人である。
それにしても閣僚の列の中に知らない顔を見たネタニヤフ首相は、何を思ったのだろうか。ハザン議員がセルフィを取っている横に立っているネタニヤフ首相は、作り笑い。。という感じである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4966185,00.html (ハザン氏のトランプ大統領とのセイフィ見れます)
日本では伝わらない情報ありがとう(^O^)/