ベイルートのヒズボラ地下本部大規模攻撃:ナスララ党首死亡か 2024.9.28

Lebanon, September 28, 2024. (photo credit: REUTERS/MOHAMED AZAKIR)

イスラエル軍がベイルートのヒズボラ本部大規模攻撃

27日(金)夕方、安息日が始まる前、イスラエル軍は、ダヒエで、ビル6棟を対象に、前日よりはるかに大規模な空爆を行った。

ベイルート市内を揺るがし、大きな煙が満ちた。6棟のうち少なくとも3棟は真っ平になっており、1棟も破壊は地下にまで達している。

イスラエル軍は、攻撃したのは、ビルの地下のバンカーにあるヒズボラ本部で、標的は、そこで幹部たちと会議中だったヒズボラのトップ、ハッサン・ナスララ党首であったことを認めている。

死亡についてはまだ確認されていないが、破壊の規模からして、おそらく死亡しているとみられている。

なお、この攻撃で、ヒズボラのミサイル最高司令官ムハンマド・アリ・イスマエルと、その副司令官補正ん・アフマド・イスマエルが死亡した他、IRGC(イラン革命防衛隊)司令官アバス・ニルフォルーシャンが死亡した可能性があると言われていた。

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イスラエル軍は、今週初めから、ラジオと一部の携帯電話で、レバノン人たちに対し、「あなた方を傷つけたくないので、ヒズボラが使っている建物から離れるように」と警告を発していた。

しかし、レバノン保健省によると、この攻撃で確認されている死者は6人で、負傷者は90人以上と発表しているが、この数は増えるとみられる。

イスラエルはこの数時間後にも同じ地点で、まだ残っている住民に避難を促した後、空爆を繰り返した。この時は武器庫の破壊が目的だったとのことで、地が揺れるほどの大爆発だったとのこと。

イスラエルは、その後もレバノン全域で、ヒズボラ関係施設の破壊をすすめている。

なお、イスラエル軍は、この前日の26日(木)午後にも、ベイルート南部郊外ダヒエのヒズボラ本拠地への空爆を実施していた。ヒズボラのドローンを管轄する航空部隊最高司令官モハンマド・スルルが死亡した。スルルは、イスラエルへのドローン攻撃全てを統括していた人物だった。

ヒズボラによると、10月8日以降、イスラエルとの戦闘で死亡した戦闘員は513人。ほとんどはレバノン国籍だが、シリア人もいる。一方、レバノン保健省によると、イスラエルがヒズボラへの空爆を激化し始めた23日以降、レバノンでは630人が死亡。2000人以上が負傷した。

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イスラエルはまた、この作戦に先立ち、イランからヒズボラへの危険な武器製造や、その搬入ルートになっているシリアへの攻撃を続けていた。

今日もシリアへの攻撃があったとのニュースも入っている。ハマスと同様、ヒズボラの軍事力を枯渇させることが目的である。

IDFハガリ報道官:イスラエルは、テロ組織に対してすべての主権国家がすることをしている

攻撃の直後、IDFのハガリ報道官は声明を出し、イスラエルが攻撃したのは、ヒズボラ本部であったと発表した。

ハガリ報道官は、ヒズボラの本部が、ベイルートの中心地ダヒエの民間人が住む建物の下にあったことを強調。レバノンの人々を盾にする、いつものヒズボラの策略だと語った。(標的がナスララ党首であったことは言わなかった)

また「10月8日(ハマスのイスラエル侵攻の翌日)から、1年近く、ヒズボラは、イスラエル市民の頭の上にロケット弾と自爆ドローンを撃ち込み続けた。イスラエルは、この1年、世界に対しヒズボラを止めなければならないと警告していた。

もし国境に自国民の破滅を狙うテロ組織がいたらどうするのか。その場合にどの主権国家でもすること、イスラエルは今、国民が安心して住むことができるようにしているということだ」と訴えた。

ヒズボラの反撃とその後のイスラエルの攻撃:ネタニヤフ首相緊急帰国

ヒズボラからイスラエルへは、上記ベイルートへの攻撃から数時間後、ハイファ、ティベリアからツファットまで、65発のロケット弾が発射された。ツファットでは、一部家屋が損傷し、2発が着弾。女性(68)が軽傷。

その後も攻撃は続いているが、本日土曜安息日の28日朝8時(日本時間午後2時)には、ハイファ、ナザレ、西岸地区とかなり広範囲にサイレンが続いた。

その後も何十分かおきに、今は連続してイスラエル中北部で、サイレンが鳴り続けている。

イスラエルのメシアニックの教会の多くはちょうど今礼拝に行く時間帯である。現地情報によると、集まっての礼拝は今日は中止と判断をしたところもあった。しかし、今のところ、迎撃しているのか、大きな被害の情報は届いていない。

Ynetによると、テルアビブに向けては、再び地対地ミサイルが発射されたもようである。サイレンはならなかったが、迎撃したか空き地に着弾したかの音は聞こえたとのこと。

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approving an airstrike on Beirut targeting Hezbollah’s main headquarters, September 27, 2024. (Prime Minister’s Office)

ネタニヤフ首相は、27日、ニューヨークの国連総会でイスラエル代表として登壇。イスラエルは自衛のために戦い続けると言った直後、ベイルート攻撃に関する情報を受け取った。

ネタニヤフ首相はこの時に攻撃を承認したとのこと。

その後、関係者たちと安息日入りを覚えたあと、本来、安息日で移動はできない中、急ぎイスラエルへと帰国した。

以下はその安息入りの様子。ネタニヤフ首相は、「ヒズボラはイスラエルを消えゆく蜘蛛の糸だといっていた。我々には、意志と力という鋼鉄の腱がある。我々は生存をかけて、蹴りをいれたが、これからもそうする。イスラエルの民は生きる。」と述べた。

なお、レバノンの暫定首相も、同じ日登壇しており、やはりすぐに帰国の途についたとのこと。

石のひとりごと

あるエキスパートが、次のように解説していた。

イスラエルが大規模にハマスやヒズボラへの攻撃を進めることには、大きなかけがある。イランが大規模に出てきて、中東が大戦争になる可能性がある。

一方で、イスラエルが、躊躇なく大規模で完璧に焦点にあたった攻撃に出てくることで、イランやその傀儡に、イスラエルへの恐れから攻撃を思い止まらせて、平穏に戻る可能性もあるということである。

後者であることを祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。