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ヘブロンの5氏族のシーカーがイスラエルにアブラハム合意勧誘案打診
7月6日(日)、非常に興味深い記事が出た。パレスチナ自治区の中でも、トップクラスに過激とみられていたヘブロンの5氏族の5人の首長(シーカー)たちが、イスラエル政府のニール・バルカット経済相(元エルサレム市長)に、書簡を出し、その後、交流しているというのである。
伝えたのは、バルカット氏から話を聞いた、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)である。
それによると、5人のシーカーたちは、パレスチナ自治政府とは別の「ヘブロン首長国」として認め、アブラハム合意に参加する形で、イスラエルとの和平を求めているという。
シーカー・アル・ジャバリの案では、最終的には、ベツレヘム、エリコ、ナブルス、ツルかレム。ジェニン、カルキリヤ、ラマラから6つの首長国を設立する案を提案している。
エルサレムポストによると、実際、この5人の他の13人のシーカーも、パレスチナ自治政府からの離脱を検討しているという。
二国家設立を目標とするオスロ合意(1993年レビン首相とアラファト議長・仲介クリントン米大統領)は、ただ死と経済破綻をもたらしただけだとして、今回の提案は、それに変わりうるものだとも書いてあるとのこと。

バルカット氏は、WSJに対し、オスロ合意による2国家案は、パレスチナ自治政府が、イスラエルだけでなく、パレスチナ人たちからも信頼を失っており、すでに失敗に終わっていると語っている。
バルカット氏は、今年2月、ヘブロンのシーカー5人の中でも最も影響力が強い、シーカー・ワディ・アル・ジャバリ(アブ・サナド)を、エルサレムの自宅に招き、以来、十数回のミーティングを行なっているという。
シーカー・ジャバリは、これから1000年たってもパレスチナ人の国はありえない。10月7日の後で、イスラエルがそれを認めるはずがないと考えているとバルカット氏。別のシーカーは、パレスチナ人の国を作ることは、我々に惨事をもたらすだけだとも言っているという。
シーカー・ジャバリは、エルサレムポストに対し、パレスチナ自治政府を西岸地区から排斥し、パレスチナ人への労働許可を回復させ、共同でパレスチナ自治区にも工業地帯を立てるなどの協力の話もしている。
イスラエル軍とシンベトは反対
こうした提案について、イスラエル軍、シンベトと言った治安関係者は、協力に反対を表明した。パレスチナ自治政府は確かに、パレスチナ人の間で信頼を失っているかもしれないが、それでも、テロリストを未然摘発するイスラエル軍には、強力な助け手になっているからである。
自治政府は7万人からなる治安組織を有しており、それに変わる組織は、そう簡単に設立できないと考えられる。特にヘブロンには、現在4000人のパレスチナ治安部隊と200人の特殊部隊がいる。
自治政府とハマスは基本的に敵対しているので、この部隊からは、ハマスに関する重要な機密情報をイスラエルに流してくれているという。
こうした状況について、シーカー・ジャバリは、「それならこれからも、先が見えない二国家案に執着するのか?我々の手を取るのか、取らないのか?」と問いかけている。
www.jpost.com/israel-news/article-860092#google_vignette
石のひとりごと
よく考えると、イスラム教、首長制度で動いているので、国がなくても社会がまわりうるのかもしれない。しかし、この案が、いい案なのか、そうでないのか・・。
イスラエルと和平を希望するとシーカーたちの話は、中道であるバルカット氏にはいい話に聞こえているのかもしれない。スタートアップ系で知的だった、エルサレム市長時代のバルカット氏なら、十分理解できることである。
しかし、すでに反対を表明したイスラエル軍以上に、過激右派ユダヤ人入植者たちが、これを受け入れることはないだろう。右派政権のネタニヤフ政権も話にもしないかもしれない。
右派ユダヤ人たちは、正味なところ、西岸地区からアラブ人を全部追い出したいのである。特にヘブロンは、ダビデが王であった地であり、ユダヤ教にとって、エルサレムの次に重要な地である。今も強硬な右派が、危険な中で住んでいるような場所である。
そういう意味かどうかはわからないが、この記事は、出たがすぐに消えてしまっていた。シーカー・ジャバリは、我々の手を取るのか、取らないのか。。イスラエルは取らない道を選ぶような気がする。
