フランスとアメリカがイスラエルとヒズボラに21日即時休戦要求:ネタニヤフ首相は明日国連総会登壇で意思表明か 2024.9.26

French President Emmanuel Macron (R) meets with US President Joe Biden during the 79th Session of the United Nations General Assembly at the United Nations headquarters in New York City on September 25, 2024. (Photo by Ludovic MARIN / AFP)

中東全面戦争の危機:フランスとアメリカが阻止に向けて21日間休戦要求

ヒズボラがテルアビブへ地対地ミサイルを発射し、イスラエル軍はいよいよ地上戦に入る動きを見せている。

イランは、以前にヒズボラを支持することを表明しており、全面戦争になればいかなる方法も使って介入すると言っていた。またイラクのイラン傀儡組織も、イスラエルへの攻撃に加わってきている。

中東で全面戦争になる危機が迫る中、ニューヨークではちょうと国連総会が開催されており、各国首脳がこの件に懸念を表明し、イスラエルとレバノン、ヒズボラに戦闘を停止するよう次々に声明を出している。

Security Council, September 25, 2024, at UN headquarters. (AP Photo/Frank Franklin II)

こうした中、国連では、緊急の国連安保理会議が開催された。その後、フランスとアメリカが、この戦争は誰の益にもならないとし、外交的な解決を目指すため、イスラエルとヒズボラに国境での21日間の即時休戦を要求すると発表した。

この提案には、10の国と組織、オーストラリア、カナダ、EU、フランス、ドイツ、イタリア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、そして日本が承認するとしている。

国際社会が求めているのは、2006年の2回目のレバノン戦争の時に、国連が出した国連決議1701を遵守することである。

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この決議では、イスラエルは、ブルーラインより南(つまり今国境とされているライン)にとどまることと、ヒズボラは、リタニ川まで撤退し、その間の地域をUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)を監視するというものであった。

今フランスとアメリカはこの決議の遵守を、イスラエルとヒズボラに要求するということである。

しかし、これを破ったのは、イスラエルではなくヒズボラである。ヒズボラは、この決議が出た当初から、リタニ川まで引くどころか、イスラエル国境すぐ近くに、拠点とロケット弾やミサイルを築き上げたのであった。

イスラエルはこれを見ていたが、UNIFILがいるので、行動を起こしてこなかったのである。

*地図はUNIFILに協力して軍隊を派遣していた国々の担当地域。UNIFILは監視だけで攻撃はできないので、ヒズボラに対しても何もできなかったとみられる。

そのため、イランの支援を受けたヒズボラは、この18年の間に、民兵組織から、一国の軍レベルの武力組織にまで成長させた。

さらには、この間に発生したシリア内戦に介入したことで、地上戦についても相当な訓練を積んでいると言われている。

イスラエルの専門家は、ヒズボラの軍事力は、ハマスどころではなく、相当に大きな敵になっていると警告している。

イスラエルにとっては、今停戦しておくことが、とりあえずの益になるのかもしれないが、この流れからすると、停戦21ヶ月(つまり1年9か月)の間に、ヒズボラは、しっかりと回復し、増強もすると考える方が、普通かもしれない。

www.jpost.com/middle-east/article-821807

休戦になるか?イスラエルはどう対応する?:明日ネタニヤフ首相国連総会登壇

この要求に対して、メディアは混乱している。あと数時間で停戦に至るとか、ネタニヤフ首相は青信号と出したとの記事が出ている一方、それは、避難しているイスラエル人が安心して帰宅できた場合に限るという条件を出したとも言っている。

要するに、確かにヒズボラが本当に国境から撤退した場合に限るという意味であり、およそ不可能ともいえる返答である。

ニューヨークに向かうネタニヤフ首相夫妻 GPO

イスラエル国内では、宗教シオニスト政党のスモトリッチ経済相と与党政治家たちが、フランスとアメリカの要求には応じることに反対すると表明。

一方左派のラピード氏は、7日間の休戦なら良いのではないかと言っている。

ネタニヤフ首相は、今渡米の途上であり、明日、国連総会で登壇することになっている。ネタニヤフ首相がどう答えるのか、注目されている。

石のひとりごと

国際的な動きでもあり、今休戦することが同義的にもよいとのイメージかもしれない。もしイスラエルが応じなかったら、イスラエルは本当に世界から孤立するかもしれない。

しかし、ヒズボラは一国の軍隊ではなく、国際テロ組織であることを忘れてはならないアメリカ自身もヒズボラが国際テロ組織であることを国で定めているのである。

ならば、停戦ではなく、IS の時のように、この犯罪組織をイスラエルに協力して、短時間で無力化するという選択肢はないのだろうか。

停戦になれば、確かにバイデン大統領は、在任中になんとか、これまでのような平穏をとりもどすことになるかもしれない。しかし、それは問題を将来に引き伸ばすだけにとどまらず、次回はまさに世界を揺るがすような大戦争になることを意味する。

ネタニヤフ首相は長い在任中、ガザのハマスとヒズボラと何度となく停戦し、壊滅することを後回しにしてきた。その結果が今の状況だと国内からは非難の声も上がっているので、首相本人も戦闘は続けたいところだろう。

しかし、今回も停戦に持ち込む可能性もゼロではない。もしかしたら、今はまだその時ではなく、聖書がいう最後の時の準備に今回もまた、後回しになるのかもしれない。

休戦になるかならないか。明日までの間の動きに注目するところである。

個人的にだが、問題を後回しにすることの危険性を感じさせられている。石のひとりごと。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。