ビバスさん母子らとみられる人質4人遺体で帰国へ:イスラエル全国に広がる想像以上のトラウマ 2025.2.20

ハマスが解放される4人の遺体のリスト提示

ハマスは、昨日19日に、イスラエル首相府に返還する遺体4人の名前を通達していた。4人は、オデッド・リフシッツさん(84)と、シリ・ビバスさん(33)とその息子のアリエルさん(1)とクフィルさん(5)であった。4人はキブツ・ニール・オズから拉致されていた。

このため、首相府は家族に通達した他、メディアにも流れることになった。しかし、ビバスさん一家は、首相府が家族の了解を得ずに発表したと表明。これについては、イスラエル軍が責任を認め、謝罪を表明した。

家族にしてみれば、遺体が実際に戻ってきて、それが科学的にもその人であると身元が証明されるまでは、まだ確定ではないのである。

家族は、その定められたプロセスの後、家族に告げられるのを待つと表明している。また、情報の撹乱などは控えてほしいと言っている。

なお、プロセスは、赤十字を通じて運ばれてくる遺体を、ガザ内部にいるイスラエル軍が受領し、そこで、軍が立ち会う中、ラビが司式を執り行う。

この時点では、遺体がまだ誰かが確定していないので、家族は立ち会わないようである。

その後、イスラエル国内の身元確認の施設へと搬送される。身元の判明は、48時間はかかるといった情報が出ている。家族には、身元が確定した時点で通達される。

www.ynetnews.com/article/rjzi00tqqkl#autoplay

イスラエルに広がる想像を超える痛み:ハレヴィ参謀総長予定を早めてアメリカから帰国

シリさん(33)とその幼い息子たちアリエルちゃん(1)とクフィルちゃん(5)が、遺体で帰ってくるということの痛みは、イスラエル人たちにとって、想像超える痛み悲しみとなっているようである。

若い母親と幼児2人という、その笑顔を見て心痛まない人はいない。またオデッドさんは、最も高齢の人質の一人である。イスラエル的には、最も保護しなければならない、弱い国民を、国も軍も守れなかったということを突きつけられている。

オデッド・リフシッツさん(84)は、妻のヨケベデさんとともに、10月7日に拉致され、ヨケベデさんだけは、その16日後に解放されて、帰国していた。

ショックなのは、リフシッツさん夫妻が、キブツ・ニール・オズの創設者の一人で、長年、隣人であるガザのパレスチナ人との共存を目指す平和活動家だった点である。

夫妻は、ガザの病気の子供たちを、イスラエル国内の病院で治療を受けられるように手配するボランティアを続けてきた人たちだった。

その夫妻を拉致した上、オデッドさんを殺したということである。

www.timesofisrael.com/shiri-ariel-and-kfir-bibas-oded-lifshitz-named-as-the-slain-hostages-to-return-thursday/

IDF

ハレヴィ参謀総長はすでに、軍のトップとして、10月7日の奇襲を許してしまった責任を負い、辞任を表明。3月5日に退任が決まっている。

ハレヴィ参謀総長は、退任を前に、先週から訪米していたが、4人が遺体で戻ることを受けて、急遽予定を早めて帰国した。

www.israelnationalnews.com/news/404191

ネタニヤフ首相は、国民に対し、次のように語った。「明日(本日)は、イスラエルにとって、非常に辛い1日となる。悲しみに締め上げられるようだ。国中で心が引き裂かれる日だ。

私たちは家族を抱きしめる。私の心は引き裂かれている。みなさんの心もだ。世界もだ。このことが世界に、私たちが直面しているものが何か、どんなにひどい怪物かが明らかになった。私たちは悲しみ痛んでいる。しかし、こんなことが二度と起こらないようにする決意である。

ヘルツォグ大統領は、ローマのグレートシナゴーグへの訪問の中でのメッセージで、この件を挙げ、イランが率いる邪悪な悪が明らかになったと述べ、団結して立ち向かわなければならないと語った。「このことは、私たちだけでなく、世界にむけた警鐘だ」と語った。

ヘルツォグ大統領は、今すぐしなければならないこととして、残りの人質の命を守るため、今も怪物の手にある人質を早くすべて取り戻すこと、

また今、私たちが対峙しているのが、イスラムのジハード主義(聖戦主義)に導かれて、母親や赤ちゃんを殺害する悪、拉致する悪、拷問する悪、

家族全員を惨殺する悪、今この瞬間も続いている人道に逆らう悪という、真の悪であるという認識を持つことだと語った。

この後、ヘルツォグ大統領は、帰国の途についた。

www.jpost.com/israel-news/article-842884

石のひとりごと

この4人が遺体として帰ってくることが、ここまで大きな痛みになるとは、予想していなかったと感じている。

Majdi Fathi/NurPhoto via Reuters file

確かにヘルツォグ大統領が言うように、これは警鐘だと思う。世界にはここまでの悪があるということに目覚めなければならない。

イスラエルが、人類の先頭に立って戦っているのは、ハマスであるというだけでなく、その背後にいる霊的な悪があることも知らなければならない。

イスラエルは、世界に先駆けて苦難も祝福も受けると聖書には書いてある。私たちは、これが他人事で終のではなく、次に世界に来る脅威に備えなければならない時に立っているのかもしれない。

患難と苦悩とは、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、悪を行うすべての者の上に下り、栄光と誉れと平和は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、善を行うすべての者の上にあります。神にはえこひいきなどはないからです。(ローマ書1:9-11)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。