ヒズボラ弱体化進む:ネタニヤフ首相がレバノン市民へヒズボラ打倒呼びかけ 2024.10.9

破壊されたレバノン南部地域 スクリーンショット

イスラエル軍は、ベイルートを空爆。南部国境でも1万5000の地上軍が、ヒズボラのインフラや武器を破壊し、戦闘員の無力化を進めている。壮絶な破壊の中、ヒズボラはかなり弱体化したとみられる。

そうした中、8日(火)夜、ネタニヤフ首相が、レバノン国民に向けて、英語でメッセージを発した。

ネタニヤフ首相は、イスラエルは、ナスララ暗殺後、その後継者と目されていたハシェム・サフィディンもベイルートへの攻撃で死亡したと述べた。

サフィディンは、故ナスララ党首のいとこであり、娘は、イランのソレイマニ将軍(イスラエルに暗殺された)に嫁いでいたという、まさに時期ヒズボラ最高指導者の後継者と見られていた人物である。

ベイルートの空爆下にいたため死亡したと見られているが、まだ確証はないと伝えられていた。ネタニヤフ首相は、ここで死亡したと言っていた。さらに、サフィディン氏の後継者、そのまた後継者も死亡したとして、今のヒズボラは、ここ数年の中で、最も弱体化した状態にあると主張した。

ネタニヤフ首相は、レバノン市民に対し、レバノンは、かつて中東の真珠と言われていたことを思い出してほしいと訴え、今、ヒズボラを排斥してその当時の繁栄を取り戻す時だと訴えた。

*イスラエル軍が発表したヒズボラが受けた打撃まとめ

以下は、ネタニヤフ首相の声明と同じころ、イスラエル軍が発表したヒズボラとの戦闘のまとめである。それによると、この1年の間に、イスラエル軍は、ナスララ党首含む大部分の指導者たちを殺害。また中東全域において、ヒズボラの武器供給網を破壊し遮断したと主張している。

また、地上軍がレバノンへ入り、限定的だが焦点の当たった攻撃を実施。1週間で少なくとも440人のヒズボラ戦闘員を無力化した。また何百メートルも続く地下トンネルを破壊。これらは10月7日のような侵略に使う予定だったと言っている。

また、重要なミサイル倉庫をレバノン中心地で発見し、破壊した。それらが街中にあったとして、ヒズボラが、レバノン市民を盾にしていたことは明らかである。我々は、6万人の市民が(国境付近の)自宅に戻れるまでは、戦い続けると言っている。

以下は、レバノン南部、イスラエルとの国境20マイル(約30キロ)以内の破壊の様子。壮絶な破壊の様相になっている。

ヒズボラはどう出る?イランがヒズボラに後押しする“停戦?

October 8, 2024 (Al-Manar / AFP)

指導者たちが皆暗殺された今、ヒズボラを代表して声明を出しているのが、副党首であったナイム・カセムである。

カセムは、8日、国民にむけて30分のテレビ演説を行った。

その中で、カセムは、ナビフ・ベリ議会議長が、“停戦”という概念の元で、ベリ議長の活動を支持すると述べた。

回りくどいが、“停戦”を支持するかのような言い方である。

またヒズボラはこれまで、イスラエルとの停戦は、イスラエルがガザへの攻撃を停止することが条件だと言っていたのだが、それを言わずに、停戦を示唆していたということである。

その背景には、先週4日、イランのアッバス・アラクチ外相が、ベイルートを訪問していたことから、イランが、損失を最小限にするためにとして、ヒズボラに、停戦協定に着手するよう圧力をかけているとチャンネル12が報じた。

とはいえ、まだヒズボラが、停戦に応じるかどうかはわからない。また停戦協定にまで至ったとしても、それをヒズボラが遵守するかどうかは、きわめて疑わしいといえる。

2006年の停戦協定1701について、ヒズボラはいっさい守らなかったという過去があるからである。

www.timesofisrael.com/netanyahu-israel-killed-nasrallahs-replacement-and-his-replacements-replacement/

イスラエルのイラン攻撃はどうなった?

イスラエルは、数日以内にイランを攻撃するのではないか、攻撃するのは核関連施設か石油エネルギー施設かと言われていた。しかし、今の所まだそうはなっていない。

これについては、アメリカが阻止を続けているもようである。アメリカとアラブ諸国は、なんとしてもイランを巻き込む中東戦争を阻止したいのである。Times of Israelによると、本日、ネタニヤフ首相とバイデン大統領が話をすることになっているとのこと。

アメリカは、イスラエル抜きで、湾岸アラブ諸国との協議を行っていたと伝えられていた。その結果を伝えるとみられる。イランは、湾岸アラブ諸国に、戦闘機の上空通過を認めるなど、イスラエルに有利に動けば、イランとの深刻な事態を招くと警告を出している。

www.jpost.com/israel-news/2024-10-09/live-updates-823835

そのイランだが、意図はよくわからないが、イスラエルのポケベル爆破で負傷したヒズボラメンバーは今、イランで治療を受けているとしてその映像を発表した。いずれも指や手が破損していたり、目を負傷している。ポケベルを見た瞬間に爆発したのだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。