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小競り合い続く北部国境:ヒズボラがロケット弾40発
ヒズボラとの全面戦争が一触即発の北部。25日と26日に、イスラエル軍による国境レバノン側へのドローンの攻撃でヒズボラ戦闘員2人が死亡。26日夜には、ヒズボラが、イスラエルが、ツファット上空含む北部にロケット弾が40発発射した。
イスラエル側では、一部建物に着弾し、火災となったが、アイアンドームがほぼ迎撃し、大きな被害にはならなかった。この後、イスラエルもドローンや戦闘機でも反撃を行った。これにより、ヒズボラはメンバー3人が死亡したと発表している。
以下はヒズボラのロケット弾を迎撃するアイアンドームと、イスラエルの反撃を受ける南レバノン
アメリカのメディアによると、イスラエル軍によると、こうした攻撃で、国境からレバノン側5キロ範囲をデッドゾーン(無人地帯)にしたと言っているとのこと。
レバノンのこの地域の住民のほとんどは、すでに避難しており、文字通り無人地帯になっているとみられる。
www.ynetnews.com/magazine/article/ryqrc1ju0#autoplay
www.timesofisrael.com/israel-strikes-reportedly-creating-5-kilometer-dead-zone-in-southern-lebanon/
ヒズボラは、10月7日以来のイスラエルとの戦闘で349人(シリア人含む)の名前を挙げている。ヒズボラ以外のテロ組織では64人、レバノン軍1人、レバノン市民数十人が死亡している。イスラエル側では、軍兵士15人、民間人10人となっている。
現時点では、これまでと同様の小競り合い的応酬の様相であるが、ある日突然、予告なしに大きな戦争が始まるとアメリカは警告している。
国境でIDFが訓練:ネタニヤフ首相・ヘルツォグ大統領が訪問・激励
イスラエル軍は北部国境に近いガリラヤ地方で、軍事訓練を行っている。25日、ネタニヤフ首相が、部隊を訪問し、国の防衛に当たっている人々を励ました。
またヘルツォグ大統領夫妻も26日から、1泊して2日間、北部国境の町ツファットなど北部国境の最前線に位置する地域を巡回。
イスラエル軍兵士たちや、まだ避難せずに残留している市民たち、キブツや地方自治体を訪問した。
ヘルツォグ大統領は、「状況はもうコントロールできなくなっている。戦争が始まっても国際社会は何もできないだろう。」と語った。
また、「私たちはみなさんを励ますために来た。強くあれ。雄々しくあれ。
悪の王国との戦いの最前線に立っているみなさんのことは歴史に残ることになる。私たちは共に立って、勝ちぬくだろう。
平和を取り戻し、再建することになる。」と語った。
www.timesofisrael.com/herzog-netanyahu-tour-north-as-un-warns-of-apocalyptic-war-with-hezbollah/
*イスラエルが今回ヒズボラと戦わなければならない現状
ヒズボラは、全面戦争は望んでいないと言っている。しかし、今回、イスラエルは、もう後に引けず、戦争に踏み込むかもしれない。
北部住民がこれほど長く避難生活を強いられていることに、住民も国もう耐えられないところにまで来ている。
しかし、国境で展開するヒズボラは、強くなりすぎており、殲滅まではいかなくとも、少なくともリタニ川(国境から30キロ)まで下がってもらわない限り、北部地域で住民が安心して住むことができないのである。
特にここ10年近くは、イランが積極的に支援をし始めたことから、危機的な状況になってきている。
ヒズボラとの対立は、今に始まったことではない。レバノンにおける戦争は、これまでに2回、1982年と2006年に、発生している。ヒズボラは、この時代の1986年に、イランの支援でシーア派組織として立ち上がった。
イスラエル軍は、治安維持のため、1982年の戦争からずっと、南レバノンに駐留させていた。
しかし、2000年に、完全撤退すると、ヒズボラは一気に勢力を拡大し、イスラエルや世界で、恐ろしい爆破テロを行うようになった。
2006年の戦争では、ミサイルを雨のようにイスラエルに撃ち込んで、イスラエル人が165人も犠牲となった。当時はまだ迎撃ミサイルがない時代だったのである。
この時、イスラエル軍の指示系統や配備等の不備も重なって、戦死者が相次いだため、当時のオルメルト首相は、開戦から34日後に停戦を決めた。
その後ヒズボラは、イランの支援を得て、レバノンの復興に貢献。レバノンの一政党としても支持を獲得していった。ミサイル技術も向上させて、イスラエル全土に向けたミサイルは、15万発にもなっている。
イスラエルは、もう10年ほども前から、もしヒズボラとの戦争になれば、ミサイルの雨がくる前に、イスラエル軍は躊躇なく、レバノンへ大規模に侵攻し、一気にレバノン南部を叩くと言っていた。その際の犠牲者の数は双方に膨大になるとも言っていた。
このようにヒズボラとの関係においては、撤退したこと、停戦したことで、事態は明らかに悪化した。ガザと同様、これまでの経過からしても、イスラエルが手を引くということは、難しいかもしれない。
ギャラント防衛相訪米:アメリカとの調整できたと
先週、ネタニヤフ首相が、アメリカが約束した通りのイスラエルへの武器支援を滞らせていると苦言を発表した後、ギャラント防衛相が訪米し、ブリンケン国務長官や、オースティン国防相、サリバン補佐官などと直接の話し合いを行った。
4日間の訪米を終え、ギャラント防衛相は、アメリカとの誤解がほぐれたと報告した。実際、アメリカは、10月7日以来、65億ドル以上の軍事支援を行なっていたという。
アメリカは、ヒズボラとの戦争は、壮絶な犠牲が予想されるとして懸念を表明し続けている。今後武器支援が、実際にどうなるかは明らかではない。
しかし、アメリカは、イスラエルの同盟国であることを確認したとギャラント防衛相は報告している。
レバノンから自国民に退避を要請する世界諸国
こうした状況を受け、自国民に対し、レバノンから退避を要請する国が増えている。また万が一に備え、緊急時にまだ残っている自国民を、地中海から退避させる経路の模索を行う国も出始めているという。
これまでに、カナダ、オランダ、ドイツ、アメリカ、また、クエート、北マケドニアも自国民に、まだ民間機が飛んでいる今のうちに、レバノンから退避するよう、要請を出したとのこと。
www.timesofisrael.com/germany-netherlands-urge-citizens-to-leave-lebanon-for-fear-of-war/
一方、イスラエルでは、国際社会から避難要請が出る気配はない。今も、外国から来ている福音派クリスチャンたちが、さまざまなボランティア活動を継続している。日本にも支部があるBFP(Bridges for Peace)もその一つ。
エルサレムポストによると、北部国境周辺の住民は、国境から3.5キロ内に住んでいる人々をさすとされており、3.7キロの住民は、政府の避難支援を十分に受けられていない。
エルサレムのホテルで避難生活を送っている15家族200家族は、国から7月までにホテルを出るよう指示された。しかし、行くところがないので、政府の支援延長を求めているところである。
これらの家族の支援に、国際キリスト教団体FIRMが関わっている。
記事には、FIRMが、メシアニックジュー(ユダヤ人の福音派的信仰を持つ人々)やアラブ人教会とも協力していると紹介されている。
www.jpost.com/israel-news/article-807973
FIRMは世界10カ国の主に福音派クリスチャンたちからなる団体(一部カトリックなど他派も含む)で、戦争が勃発した際、南部コミュニティに、1000万ドルを献金。人手不足をカバーするため農園で働いたり、戦時下でもツアー団体が訪問する様子が報じられていた。
www.jpost.com/christianworld/article-776511
石のひとりごと
イスラエルとヒズボラの戦争は避けられないかもしれない。あらゆることが複雑にからみあって、スパイラルに戦争へと向かっているようである。ヘルツォグ大統領が言うように、もはや、人間にはコントロールできなくなっている。
すべての支配者、良いお方であると聖書が言う、万軍の主に目が向く時である。