また悲しい事件が発生した。土曜朝、西岸地区ベンジャミン地域の町アナトテで、13才のパレスチナ人少女が、市民警備員にナイフで襲いかかり、警備員に撃たれ、その後病院で死亡した。
死亡したのは、パレスチナ人の少女、ラキヤ・アブ・エイド(13)。ラキヤは土曜朝、家族と口論になり、ナイフを持って家を飛び出した。ユダヤ人を殺して、自殺するつもりだったとみられる。
父親がラキヤの後を追ったが、みつけたときには事件が発生したあとだった。警察は、父親の身柄を確保し、娘がこうした犯行(自殺)に及ぶ可能性を知っていたかどうかの確認を行っているという。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4756579,00.html
<自殺のトレンド?>
Yネットによると、昨年秋に始まったテロ事件の3分の1が、20才以下の若者によるものだという。パレスチナ自治政府の分析では、それらの若者たちはそれぞれかなり深刻な個人的な問題を抱えており、自殺の手段としてテロに及んでいたとみらている。彼らに政治的な意図はない。
パレスチナ自治政府としても、問題が個人にとどまらず、社会全体に影響を及ぼすこうした”テロ”自殺を、なんとか防ぐよう対策をとっている。ある時はヘブロン市内でナイフを持っていた少年を事情聴取したところ、恋人の父親に結婚を反対され、テロ自殺をはかろうとしていたことがわかった。
そこでヘブロン市長が父親をよび、結婚を認めるようとりはからって、テロ(自殺)を食い止めたといったケースが報告されていた。
*注 ヘブロンは、イスラエル領ではなくパレスチナ自治区の町。市長はパレスチナ人。
また、こうしたテロを起こした若者のうち13人が、ヘブロン北部の村サイル出身者だった。不自然にこの村に集中している。この村では、ティーンエイジャーたちの間で、少なくとも死後に少しは英雄扱いしてもらえる”自殺”を選ぶのが、いわば”トレンド”になってしまっている要素もある。ユダヤ人にとっては迷惑きわまりない話である。
パレスチナ自治政府は、こうした事件を防ぐため、朝8時半の時点で登校しない者があった場合、警察に通達するなどの対策をとっている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4756501,00.html (これまでにテロで射殺されたパレスチナ人ユースの写真あり)
娘を失ったパレスチナ人家族も気になるが、13才の少女を撃って死に至らしめたのは市民警備員だった。少女の顔も見たであろう警備員を覚えてお祈りください。
<オテニエルで15才少年に母を殺されたメイールさん一家その後>
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4756598,00.html
先週、15才少年に母を殺されたメイール・ダフナさん一家。ユダヤ教の習慣に従って、「シバー」と呼ばれる1週間の喪の週を過ごしている。この間、家族は何もせず、知人友人などが、生活の世話をし、遠くからも人々が慰めに訪れる。
悲惨なテロ事件だけに、政府関係者の他、リブリン大統領も訪問した。ダフナさんの夫ナタンさんは、大統領に、「妻は愛の人だった。子供たちも、私も怒りはもっていません。」と伝えた。
ダフナさんは、看護師としてより患者に寄り添えるよう、アラビア語とロシア語を独学で学んだという。ダフナさんは、意識不明の患者にもよく話しかけていたが、回復した患者が、ダフナさんを覚えていて感謝を述べている。また、病院でともに働いていた友人のアラブ人医師もシバーに訪れている。
ダフナさんは、ボランティアで、不妊の女性のための電話カウンセリングも行っていた。ダフナさんは、いのちを重んじ、人種に関係なく人々を愛した人だったようである。
夫のナタンさんも、入植地オテニエルを建設するときに、働きに来ていて、今や親友になっている近所パレスチナ人男性のことをメディアに語っている。このパレスチナ人男性は、ナタンさんとは兄弟のようであり、ナタンさんがたのんだところ、オテニエルの幼稚園建設のために、数千シェケルを献金したという。
ダフナさん一家は、よりにもよって、このような家族がテロの標的になるとは・・と思われるような家族だったようである。
こうした悲惨な状況に対し、底力を発するユダヤ教にいつもながら感銘を受けるが、もうすぐシバーが終わって家族だけが残されたときが、本当の試練の到来となるだろう。
長女のリナナさん(17)は、もうすぐ兵役に行くことになっている。その予定は変えないとの意思表示をしている。小さな子供たちとお父さんが家に残る。しかし、そこもまたユダヤ教の底力。おそらくオテニエルの150家族がしっかり彼らを支えて行くものと思う。
<難しい町ヘブロン>
オテニエルはヘブロン北部の入植地である。ここ3ヶ月のテロの波では、ユダヤ人29人が犠牲になっているが、こうしたテロ事件150のうち55件が、ヘブロンとその周辺地域に関係していた。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4754744,00.html
そのややこしいヘブロンで先週木曜、右派ユダヤ人たちが、パレスチナ人からビルを買収し、そこにたてこもるという事件が発生した。
ユダヤ人たちが購入したビルは、分割されているヘブロンのパレスチナ側にある。購入前にイスラエル政府の承認も得ていなかったことから、金曜、ヤアロン国防相の指示により、イスラエル軍に、ビルにいたユダヤ人たちを強制退去させるに至った。
ユダヤ人側は、「きちんと正当な額での支払いをしている。」とビルに住む権利を訴えている他、右派政党からも反発が出た。しかし、ヤアロン国防相と政府は、購入前に政府の認可を受けていなかったとして、法的にも撤去は正当な行為と反論している。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4756399,00.html
ヘブロン近郊の入植地には、テロで殺害されたダフナさん一家のように、パレスチナ人とよい関係を築いている人々もあれば、過激な右派思想の入植者もいる。「入植者」といっても一概には語れないということを読者には覚えていただければと願う。
それにしても、ヘブロンといえば、聖書によるとアブラハムとサラ、イサクとリベカ、ヤコブとレアが葬られたマクペラの洞窟がある町である。この町でイサクとイシュマエルは、一緒にアブラハムを葬った。(創世記25:8-9)
しかし、現在、ヘブロンとマクペラの洞窟は、イスラエル側とパレスチナ側の2つに分割され、イスラエル兵が常駐して衝突を防いでいる。いわば、父アブラハムの墓の前で、兄弟が殺し合いの争いをしているということである。