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イスラエルからのワクチンを返還するパレスチナ自治政府
18日、イスラエルは、パレスチナ自治政府にファイザーワクチン140万回分を配給する契約を結び、10万回分からその搬入を始めた。
しかし、その夜、パレスチナ自治政府は、「専門家が、このワクチンには契約に沿ったものではない言っている。契約をキャンセルする。」として、ワクチンを返却してきた。
理由は、有効期限が短かすぎるということである。どのぐらいギリギリかというと、最初に配給された10万回のうち、一部は6月末、または7月初頭となっている。そのほかは7月末が有効期限だという。
契約時、イスラエルは、「有効期限が近い」とは言っていたが、正確にはいつまでとは告げていなかったとのこと。しかし、イスラエルによると、これに続いて搬送される分の有効期限は、まだ数ヶ月あるものだという。
今回の配給分は、直ちに接種に使い、次に搬入される分で、二回目の接種ができるので、イスラエルとしては問題がないと考えたようである。
しかし、18日朝に、この契約が報じられたところ、パレスチナ人の間では、「消費期限がきれる直前のものを送ってきた」「効果が薄いワクチンではないか」などと自治政府への怒りが爆発していたという。
イスラエルは、ワクチンの有効性を主張し、使わずに無駄にするべきではないと主張している。
www.timesofisrael.com/palestinians-cancel-deal-for-israel-to-supply-1-million-covid-vaccines/
パレスチナ人のワクチン事情
パレスチナ自治政府は、ワクチンの調達に苦心している。ロシア製、中国製などと約束はかわしているのだが、入荷はスムーズには進んでいない。ロシアからは、まだ5万8000回分、中国からは10万回分である。アメリカのファイザー社とも400万回分の供給で契約しているが、ワクチンが届くのは9-10月になるという。
パレスチナ自治政府領域で、これまでにワクチン接種を一回終えた人は、約260万人中、43万6275人。2回完了した人は26万人にとどまっている。
このうち10万人は、イスラエル国内で働いているとして、イスラエルで、ワクチン接種を受けた人々である。*東エルサレムのパレスチナ人は、イスラエル住民として、全員、ワクチン接種を終了している。
また総人口200万人ほどもいるガザ地区でも、ロシアや中国からの供給を受けているが、ワクチン接種を受けた人はわずか5万2000人とのこと。
世界最速でワクチン政策を実施したイスラエルと比べて、隣人のパレスチナ人のワクチン接種があまりにも少ないので、国際社会からは、イスラエルに対する激しい批判が高まっていた。
イスラエル・パレスチナ自治政府・ファイザーの合意
幸い、パレスチナ人の間での感染は、ロックダウンが功を奏し、現在は、1日の感染者は200人前後、死者は1-2人となっている。
しかし、今のうちに、ワクチン接種をすすめなければならないため、パレスチナ自治政府は、ここ数週間、イスラエル(空港の関係で、ワクチンはイスラエル経由で届く)とファイザー社と3者での交渉を進めていた。
その結果、イスラエルは、在庫の140万回分を、すぐにもパレスチナ自治政府に届けて接種に使ってもらう。そうして、9-10月にパレスチナ自治政府に届く400万回分から140万回分がイスラエルに返却されるということで合意したのであった。
この時、イスラエルは、条件としてワクチンをガザへは回さないよう、要求したが、パレスチナ自治政府は、ファイザーと400万回分で契約したのであり、イスラエルと契約したのではないとして、これを拒否したとのことである。
しかし、18日、まず10万回分が、イスラエルからパレスチナ自治政府保健省に届けられたのであった
石のひとりごと
ファイザーのCEOもイスラエル政府もユダヤ人である。ユダヤ人は、プライドよりも何よりも実質を見る人々である。たとえば、一つのマグカップを見る時に、それがどんな形とか、美しい柄とかには目をむけず、どのぐらいの量入るかというのが、注目する点なのである。
ファイザーとイスラエルにとっては、いくら期限が近くても、このワクチンは、実質的に今は確かに使えるといことである。無駄にするべきではないと主張する。
確かにワクチンは今の時代、非常に貴重なので、こういう考え方をするべきであろう。
しかし、有効期限ぎりぎりのワクチンを回され、その代わりにイスラエルは、新品を獲得するとなると・・・心情的には理解できるともいえる。
しかしながら、今返却してしまえば、市民約50万人へのワクチンはあと2ヶ月以上も先延ばしになってしまうのである。
何よりも実質。なによりも命を優先できるのが、ユダヤ人であるが、それ以外の人々や国では、なかなかそうはいかないものである。