29日、国連総会で、パレスチナを”国”としてのオブザーバーに格上げするかどうかの採択が行われた。結果賛成138、反対9、棄権41。圧倒的多数により、パレスチナの格上げが決まった。
国連加盟国になったわけではないし、実際的に動くことは何もないのだが、国際社会でパレスチナは”国”であるとの「認識」を得たことにはなる。
今回賛成票を投じたのは、中国、ロシア、フランス、イタリア、オーストリア、スペイン、ポルトガル、ノルウェー、デンマークなどヨーロッパのほとんどの国々。イギリス、オーストラリア、ドイツは棄権した。
反対票を投じたのは、イスラエル、アメリカ、カナダ、チェコ、ミクロネシア、マーシャルアイランド、ミクロネシア、パラウ、ナウル(太平洋の島々)で、ヨーロッパではチェコのみが、反対だったことが注目される。
<日本は賛成票>
今回、友好国アメリカが最後までパレスチナの国への格上げを反対していたにもかかわらず、日本は賛成票を投じていた。大勢の方の流れに乗ったというところか。アルーツ7(イスラエルメディア)は日本が賛成したことを名指しで伝えていた。
<パレスチナ人の反応>
この日はちょうど65年前に、国連総会でパレスチナの分割案が採択され、イスラエルが建国する可能性が生まれた日である。アッバス議長は国際社会はパレスチナ国家の出生証明書を出したと語った。
西岸地区、ガザ地区では29日、採択前からお祝いムード。ラマラのアラファト広場では、ステージが組まれて、国連総会採択された0:00ごろから群衆が集まって祝砲を行い、パレスチナの旗を振っての大歓喜である。
昨年まではアッバス議長の国連への動きに反対していたハマスだが、今年は国連の採択を歓迎すると表明した。
*テルアビブでも、左派でパレスチナの独立を支持するユダヤ人300人ほどが国連での採択を歓迎、アッバス議長支持のラリーを行った。
<なぜアメリカは反対したのか>
今回の採択は、30万人以上のイスラエル人が混在し、まだ国境すら策定されていない複雑な場所を、一方的に「パレスチナの国」と認識することに決めたということである。
これは、当事者であるイスラエルを無視して、国際社会だけでパレスチナを国として認めることになるので、実際の両者の関係は以前よりも悪くなることを意味する。現実的には和平が遠のいたともいえる。
その他には、今後アメリカとカナダからのパレスチナへの支援が停止する可能性がある。
<イスラエルの反応>
国連総会での採択の前に演説したアッバス議長は、「イスラエルが、無差別にガザを攻撃し、占領を続けている」とイスラエルをひどく非難した。ネタニヤフ首相はこれを受けて、「本当に和平を望む者がこのような発言はしないものだ。国連での格上げは実質を伴わない架空のもの。ナンセンスだ。」と語った。
以下は、イスラエルの現状を学校生活をモチーフに描いた描いたアニメクリップ(ことばなしでわかります。必見)
*ただし、これはイスラエル側作製のもので、パレスチナ側がみれば、「イスラエル君が座っている場所はパレスチナ(ハマス君)がもともとは座っていた場所だった。」と反発すると思われる。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/162653
<これからどうなるか>
特に何かが変わるということはないが、パレスチナ自治政府が国際法廷にイスラエルを訴える可能性がある。また、”国”としての立場があるので、”占領”しているとされるイスラエルに対する国際社会からの圧力が高まってくるものと思われる。
イスラエルは、今後のパレスチナ側の動きを見て対応していくとしているが、今後何が起こるのか、予測は非常に難しいところである。