13日夜に発生したパリでの連続テロについては、日本でも大きく報じられている通りである。14日午後10時時点(日本時間)での死者は、テロリスト8人を含む120人以上、重傷者80人以上。パリでは、フランス軍1500人が配備され、国家非常事態宣言が出されている。
ニューヨークやボストンなど大都市でも同様のテロが発生する可能性に備えて、治安の強化がすすめられている。ネタニヤフ首相もパリのイスラエル大使館、ユダヤ人施設に対する治安の強化を指示した。
<ISISが犯行声明:世界を相手に宣戦布告!?>
当初、世界のメディアは、犯行がどこの組織によるのかのコメントは差し控えていた。
しかし、高い計画性、同時多発、武器の調達、自爆テロという手口、劇場で銃乱射をした犯人が「アラー・アクバル」と叫んでいたこと、一時人質にとられた人の証言によれば、テロリストが「これはフランスがシリアに介入したからだ。」と言っていることからも、
ISISやアルカイダなど、シリア関連のイスラム過激派グループによるものとの可能性は濃厚だった。
テロから半日たった土曜午後になり、日付は明らかではないが、ISISがビデオを通して犯行声明を出した。それによると、さらなるテロの準備は整っていると誇示しつつ、「シリアでのISIS攻撃をやめない限り、平和はない。」と脅迫している。
また、シリアへ入る事ができないでいるフランスの”同士たち”に対し、今こそ武器を取って戦うよう、呼びかけている。フランスのオランド大統領は、「これはISISがしかけてきた戦争だ。」とのコメントを出した。
これに先立つ13日木曜、ISISは、レバノンのベイルートで、同様の連続自爆テロを決行し、40人以上の死者を出している。これについては、アサド政権側に立って、ISISと戦っているヒズボラへの警告であると言っていた。
また、先月シナイ半島で墜落したロシア機についても、まだ調査中ではあるが、ISISが犯行声明を出している。ロシアは、アメリカとは別にアサド政権側に立って、ISISを攻撃しているのだが、ISISにとっては、どちらでも同じことである。
ISISはロシアに対し、「シリアでISIS攻撃に着手したロシアへの警告だ。」としてモスクワへの攻撃も示唆している。
イスラエルでは、12日水曜、ISISが、近くエイラット(イスラエル最南端の町)を攻撃をすると予告するビデオが流したため、当地の日本大使館からは注意喚起の知らせが届いたところである。
<シリア情勢・ISIS関連のその後>
ISISがパリや世界を部隊に大暴れしているが、シリアは今、いったいどうなっているのか。
シリアでは、アメリカとフランス、トルコも含む西側諸国によるISISへの空爆が続けられている。
昨日、アメリカ政府は、ISISの一員として後藤健二さんら複数の人質を斬首するビデオに移っていた男、ジハーディ・ジョンこと、モハメド・エムワジ容疑者が、友軍のピンポイント空爆により、ほぼ確実に死亡したとする公式発表を行った。
同時に昨日は、クルド人勢力が、ISISの要所の一つシンジャーを奪回したと伝えられている。
ロシアも空爆を行っているが、米軍らとは違い、アサド政権擁護の立場から、ISISだけでなく、シリアの反政府勢力も攻撃するという複雑な状況だ。
少々、混乱するかもしれないが、こうした中、反政府勢力などからの未確認情報によると、水曜、イスラエルの戦闘機がシリア領空に入り、ダマスカス空港のヒズボラの拠点・武器保管庫を空爆していったという情報がある。
イスラエル空軍は、2週間前にも、シリアとレバノンの国境付近(シリア領内)でヒズボラ関係拠点を空爆したと言われている。ヒズボラを攻撃するということは、イスラエルも、ISISと同じではないかと思われるかもしれないが、決してISISに加担しているわけではない。
レバノンで、イスラエルに標準を合わせたヒズボラのミサイルは、現在10万発とも言われている。シリア領内のヒズボラへの攻撃は、これ以上、ヒズボラに武器を与えないための自衛の一環とみられる。こうしたヒズボラの武器関連攻撃はすでに複数回行われている。今回もイスラエル政府はノーコメントである。
今後、イスラエルがこうした事態にどう関係していくのか。最近、イスラエルは、アメリカだけでなく、ロシアとも連絡を密にとりあっているとの報告がある。
火の粉が飛んでこないようにとは言うまでもなく、今後、政府筋、諜報機関、イスラエル軍指導者らが正しい対処をとっていけるようにととりなす必要がある。
また日本の東京も、ISISからは、アメリカ側と見られている事から、日本も全く対岸の火事と落ち着いている場合ではないかもしれない。日本の政府も、必要な対策と準備をとっていけるようにとも祈るところである。
*余談的な追加情報・・
今回のパリでのテロで80人以上の犠牲者を出したと伝えられているバタクラン・ホールで演奏していたのは、カリフォルニア出身のイーグルス・デス・メタルというヘビメタのロックバンドだった。
デス・メタルとは、かつて80年代にヘビーメタルのロックがはやった際に、死や死体、地獄などを歌詞にとりあげることで知られるようになった相当ヘビーなロックの分野である。名前からして、今回のテロの後、少々物議になっているようである。
今は、メンバーが年をとったこともあり、最近のイーグルス・デス・メタルは、そこまでダークサイドにこだわるわけではないとニューヨークタイムスは書いている。しかし、それでもビデオクリップをみると、かなり性的で、悪霊チックである。
今回のテロでは、テロリストは、ステージから1500人ほどの観衆に向って銃を乱射し、80人以上を虐殺した。なお、バンドメンバーは全員無事。
www.nytimes.com/2015/11/14/arts/music/bataclan-eagles-of-death-metal-band-paris.html?_r=0