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この停戦は、イスラエルにとっては、少なくとも現時点ではまだ100%の勝利を意味するものではない。
2006年の第二次レバノン戦争の後の停戦の間に、ヒズボラが、これほどに膨大な軍事施設をイスラエルとの国境周辺に築き上げていたことを思えば、今また停戦に至るにあたり、イスラエルが、前の二の舞になると懸念しても当然といえる。
ネタニヤフ首相は苦悩の説明を市民、特に北部から避難している市民に説明しなければならなかった。
しかしバイデン大統領は、イスラエルが停戦を決定した直後に声明を出し、ここからガザでの停戦も含め、中東の平和の実現も可能であるとの楽観的な見解を表明した。
ヒズボラとの停戦:バイデン大統領の見解
1)2006年の停戦のようにヒズボラが舞い戻ることはない
ヒズボラとの停戦協定が、前の二の舞にならないと確信する理由として、ヒズボラがレバノン南部地域に入ってこないことの監視を、前のようにレバノン軍、UNIFIL(国連レバノン暫定軍)に任せるのではなく、レバノン軍に、アメリカとフランスが協力することを挙げた。
協力と言っても、米軍や仏軍が、この地域に入るわけではない。しかし、軍事技術、資金面も含めて、レバノン軍に寄り添う形で、ヒズボラの動きを監視するとのこと。これにより、南レバノンから避難している8万人、イスラエル北部から避難している6万人が家に帰れると言っている。
2)ガザのハマスとも人質解放と停戦は可能
また、ここからガザについても、ハマスは今決断の時だと述べた。アメリカ人を含む人質を解放し、停戦に応じるかどうかである。
今、アメリカが進めている方針によれば、ガザへの人道支援が急増し、ハマスが権力を握ることなく、戦争を終えることができると語った。
バイデン大統領によると、ガザの停戦については、アメリカ、エジプト、カタールにトルコも加わって、合意をすすめるとのこと。トルコが加えられたのは、10月にカタールを追放されたハマス高官らが、トルコへ移動したからである。
3)サウジアラビアとイスラエルの国交も可能
ここからが問題だが、バイデン大統領は、パレスチナ国家を立ち上げることで、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を推し進めようとしている。ヒズボラとガザのハマスとの停戦が実現した後は、西岸地区に、パレスチナ国家を設立する方向で、イスラエルに圧力がかかってくるとみられる。
パレスチナ国家設立は、今の右派政権には、ありえないことで、野党もこの点についてはほぼ一致していると思われる。ここまで進むことはまず、ないだろうと思われる。
石のひとりごと
交代直前のバイデン大統領の動きである。アメリカ特有の楽観だろうか。来年登場するトランプ大統領はこれをどう動かすだろうか。
停戦について、ネタニヤフ首相が水面化で、トランプ陣営と連絡をとりあっているという情報もある。水面下でもいろいろ動きがあるのだろう。ともかくも人が死なないようになることを願いたいところである。