ハマスとイスラエルの交渉は、これまでカタールが中心的な役割を果たしてきた。しかし、交渉は頓挫に近くなり、カタールももはや諦めかかっていた状況だった。そこへ、登場してきたのが、トルコであった。
トルコは、かつて中東ではめずらしく民主主義とイスラムの思想が共存する国であったことから、イスラエルとは長く良い関係にあった。
しかし、今のエルドアン大統領が、強硬なイスラム主義に方向転換し、イスラエルを敵視するとともに、ハマスを公に支援するようになった。イスラエルとの関係は急速に悪化した。
今問題になっているフロティーラ事件は、2010年にトルコが始めた、ハマス支援活動の一つである。トルコは、イスラエルが最近のフロティーラ船団を拿捕していることについて、海賊行為であり国際法に違反すると非難している。
こうした経過から、トルコには、カタールと同様、ハマス指導者が多数住んでいる。このため、先月、イスラエルが、ドーハでハマス幹部暗殺を試みる事件が発生すると、次はトルコではないかとの懸念が広がっていた。
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こうした中、トランプ大統領は、ネタニヤフ首相に、公にカタールのアル・シャニ首相に電話をかけさせ、ドーハでの攻撃について謝罪させた。イスラエルが、トルコを攻撃することはないと、アメリカが保証した形になった。
この経過の後で、トランプ大統領が、トルコに、ハマスに停戦案に合意させるよう圧力をかけたとみられている。
ハマスも今はイランの支援が受けられなくなっており、カタールとトルコとの関係は維持しなければならない立場にあるため、合意せざるをえなかったとも考えられる。
こうしてみると、ドーハにおける、イスラエルのハマス高官5人暗殺未遂は、ネタニヤフ首相が言っていた通り、完全な失敗ではなかったといえるかもしれない。
