ハマスとの交渉の今・停戦すべきか否か:右派左派の言い分 2024.6.8

テルアビブでの人質解放優先を訴えるデモ

ハマス返事待ち:アメリカが推す人質解放と停戦への条件

イスラエルとハマスの人質解放と停戦への交渉は、ほとんど暗礁にのりあげているが、それでもドアは、完全に閉じられていないという簿妙な状況で、一応、交渉は続いている状態で維持されている。

ハマスは、人質解放は、イスラエルの恒久的な停戦が条件だとしている。一方、イスラエルは、恒久的な停戦どころか、今回ではマスを壊滅させると言っているのである。これで何かが成立するはずがない。

現在、ハマスは、アメリカとイスラエルが出している条件を受け入れるようにとその結果を待っているのだが、おそらく断ると見られる中、まだ正式な返事を待っている状態にある。交渉は、カイロとドーハ(カタール)で行われている。

アメリカなど仲介国は、段階を追って、すべての人質を解放し、停戦に持ち込むだけでなく、ガザを復興させることまでを目標としている。

しかし、イスラエルの右派議員らは、どんな条件があるにしても、ハマス殲滅を途中で止めることへの激しい反発が出ている。

ネタニヤフ首相も戦闘継続を支持する立場だが、先週、10月7日に拉致されたイスラエル女性兵士5人の様子が公表され、政府も、交渉に向けて動かざるを得なくなった。

現時点で、イスラエルはアメリカに合意したと伝えられているが、ハマスは、まだ結果を出していない。ハマスは急いでないともみられている。人質は、ハマスのトップであるシンワルの安全保障なので、そう簡単には解放することはないとみられている。

www.timesofisrael.com/cia-chief-returns-to-region-to-push-hostage-deal-as-israel-vows-not-to-budge-further/

国内で分かれる議論:右派と左派の違い

ネタニヤフ首相とその政権は、今は右派と、ユダヤ教政党で成り立っている。このため、おおむね、ハマスを滅亡させるまでは、戦いはやめないという方針である。

しかし、国内でも左派たちは、8ヶ月戦ってもなんの結果も出ていないことから、とりあえずは、今回も戦争を止めて、一人でもまだ生存の可能性がある今のうちに、早くに、交渉をすすめて、取り戻すべきだと訴えている。

重要なことは、この人々も、それで、ハマスがまた力を取り戻すことは予測しているという点。しかし、人質を取り返すためには、これまでのように、今回もとりあえず、停戦にして、次に備えるしかないと訴えているのである。

一理あると言えばあるが、果たして、人質がどれぐらい生きているかもわからないので、もはや、ハマスへの譲歩はいっさいするべきでないと言うのが右派の反論である。

意見が分かれる中、戦時内閣にいる中道左派のガンツ氏は、攻撃をやめないネタニヤフ首相に、今後どうするかを明らかするよう、期限を切って、もしそうしないなら、戦時内閣を離れると宣言した。

ところが、この後に行われた、チャンネル12の調査によると、以外にも、ガンツ氏の支持率が下がって、ネタニヤフ首相が盛り返していると言う結果になっていた。(現地テレビニュース)

イスラエル国内では、以外にもネタニヤフ首相しかないという声がどうも高まっている可能性がある。

イスラエル国内は、今右派左派で意見が分かれて入る。しかし、人々の思いは非常に複雑であると感じた。イスラエル人たちの多くは、独立戦争を知らない、戦後世代である。IDFは世界一強い軍だと信じており、戦闘がこれほど長期にわたっていることに、ショックを受けているようであった。このため、本当に国の存在が脅かされることもありうると感じているようである。

とはいえ、それで日常生活を止める訳に行かないので、人々は普通に生活をしているし、海外旅行にも出掛けている。街中には、「共に勝利する」「アム・イスラエル・ハイ(イスラエルの民は生きる)」といった文字がみられた。右派であろうが左派であろうが、イスラエル人であることに変わりはなく、どちらもハマスの標的なのである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。