ハマスとの交渉か戦闘再開か:ハマスと元人質50人から交渉への圧力 2025.3.8

Photo credit: Maayan Toaf (GPO)

交渉頓挫中に人質永続を送りつける陰湿なハマス

ハマスとイスラエルの停戦は今、危機的状況にある。イスラエルは、33人の人質が解放されて第一段階が終了したところで、第一段階の延長を要求し、ハマスは、予定通り第二段階(イスラエル完全撤退)に進むことを要求しており、どちらもが引かないからである。

トランプ大統領が、ホーバー人質特使を派遣して、ハマスとの直接交渉を試みたが、イスラエルを通しておらず、イスラエル人とはいえ、アメリカ人国籍でもある人を先に解放させようとしていたことから、イスラエル当局は激怒。情報をメディアにリークしたことで、この交渉も失敗に終わったとみられている。

ということは、あとはもう戦闘を再開し、ハマスを殲滅する中で、武力で人質を取り戻すしかない。しかし、ハマスは、イスラエルが、戦闘再開の様子を見せる中、「戦争を再開したら、人質が死ぬだけだ」と、汚い脅迫をつきつけている。

また、ハマスは、また生きているイスラエル兵の人質、マタン・アングレストさんのプロパガンダ映像を家族に送りつけてきた。

マタンさんの顔は、左右対称でなく、鼻がつぶれている。右腕も機能していない。

家族は、このビデオを公開し、「帰ってきた人質が証言しているように、人質は拷問に遭っている。時間はもうないことは明らかだ」と政府に訴えた。

www.ynetnews.com/article/h1y001ydj1x#autoplay

元人質50人以上がネタニヤフ首相に交渉継続を求める嘆願書提出

また、元人質50人以上は、ネタニヤフ首相に対し、戦闘ではなく、交渉の道を選んで、人質を全員取り戻すようにとの嘆願書を提出した。戦争に戻れば、人質はハマスに殺される可能性が高いからである。

人質たちは、自身の経験から、今ガザにいる人質は、残酷な拷問、屈辱的な飢餓、治療を受けない病気、ひどい孤独の只中にいる。それがどれほどの地獄かを訴え、政府は国民を見捨てるべきではないと訴えた。

「国は10月7日に、国民を守ることに失敗した。この失敗を贖う唯一の方法は、人質全員を取り戻すことだけだ。今が最後のチャンスになるかもしれない」と強く訴えている。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/over-50-ex-hostages-tell-netanyahu-to-free-the-remaining-captives-may-be-the-last-chance/

ネタニヤフ首相はどうするのか。難しい判断をせまられている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。