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ガザのハマス指導者シンワルが戦闘再開を脅迫
11日間の戦闘後、イスラエルとハマスは停戦合意に至り、今も平穏が続いている。イスラエルとの国境からは、人道支援物資の搬入が始まり、国際社会からの支援の開始も模索が始まっている。しかし、ガザではまだ戦う気満々のパレードが23日に行われた。
また、26日には、イスラエルの暗殺の危険性から隠れていたとみられる、ハマス指導者ヤヒヤ・シンワルを、地上に迎えての大規模な集会も行われた。
www.timesofisrael.com/hamas-gaza-chief-threatens-to-renew-fighting-if-israel-violates-al-aqsa/
シンワルは、「これまでに起こったことは、イスラエルがアルアクサ(エルサレム神殿の丘)に関する合意を破った時の戦いの前置きに過ぎない。占領者は、アルアクサには、護衛がいることを自覚しなければならない。」と豪語。
また、「ガザのトンネルは、全部で500キロある。イスラエルが破壊したのは、その5%に過ぎない。」「もしエルサレム(アルアクサ)が攻撃された場合、殉教を恐れずすぐにも立ち上がるハマスメンバー1万人が、イスラエル国内にいる。」「これから抵抗運動を始める。」と脅迫した。
シンワルが、戦闘再開になる条件として挙げているのは、①アルアクサでイスラエルと戦闘になること、②シェイカ・ジャラのパレスチナ人が強制退去になることである。
また、イスラエルに、ハマス指導者の一人として命を狙われていることについて、「暗殺はイスラエルから私への最高の贈り物だ。コロナなどの病気で死ぬより、F16戦闘機に殺されて殉教者にな方がよい」と語った。
www.jpost.com/breaking-news/hamass-sinwar-we-have-10000-terrorists-within-israel-669265
殉教者といえば、APのインタビューで、シンワルは、11日間の戦闘でメンバー80人(ハマス57人、その他の小組織22人)が死亡したと述べた。
イスラエル軍は、ガザで死亡した武装勢力は225人と見ているので、まだ合致しないが、それでもハマスの指導者が、初めて認めた公式の武装兵死者数は、これまでの報道よりかなり大きいといえる。イスラエルとの戦闘で死亡するということは殉教という名誉ある死に方という考え方なのである。
これでは、停戦より、イスラエルとの戦闘があったほうがよいということになる。
www.timesofisrael.com/hamas-gaza-chief-threatens-to-renew-fighting-if-israel-violates-al-aqsa/
*パレスチナ人の正義を出エジプトから説明するシンワル
シンワルは、トルコのメディア、アナドル通信社のインタビューでも答えて、いかに今の停戦が不安定かを表明している。今の停戦は、たんに双方が戦闘を控えているだけであり、なんの解決にも至っていないからである。
また、パレスチナ人とイスラム世界は、今、アルアクサで一致していること。世界中が親パレスチナで立ち上がっており、パレスチナ人が孤立しているのではなく、占領者で、国際法に違反しているイスラエルこそが孤立していることが明らかになったと述べ、悪いのはイスラエルであり、パレスチナ人は解放されなければならないと語る。
自由な国際社会が、ついにパレスチナ人の側にたったのだという思いであり、正義はパレスチナの側にあるという言い方である。この思いでいるということは、やはり、この停戦は一時的なものであり、再び火蓋が切られることは時間の問題と言えるかもしれない。
興味深いことに、このインタビューにおいて、シンワルは、イスラエルが、この戦闘は、最初にハマスがロケット弾を撃ち込んできたことが原因だと言っていることについての説明を、出エジプトから説明している。」
少々ややこしいが、シンワルは、パレスチナ人の立場を、エジプトの王、ファラオに虐げられていたイスラエル人に例える。かつてファラオは、イスラエル人たちが増えていくのを恐れて彼らを殺そうと考えていた。その時、モーセがエジプト人を(間違って)1人殺したので、これを理由に、ファラオはイスラエル人たち全員を殺そうとしたというのである。
何が言いたいかというと、イスラエルは、パレスチナ人の存在がその地位を脅かすして、パレスチナ人たちを排斥することを考えている。そこへ、ガザから1発のロケット弾が飛んできたので、その1発を利用して、パレスチナ人全体を殺そうとしているのだと言っているのである。
*アルアクサはイスラエルに支配されているわけではないということ
しかし、イスラエルは、パレスチナ人全体を殺そうとなどはしていない。ガザへの攻撃においても、市民への被害ができるだけ少なくなるよう、できる限りの対処を行なっていた。これは、ブリンケン国務長官も認めるところであった。
また、エルサレムのアルアクサについては、ユダヤ人にとっては神殿の丘という聖地中の聖地であるにも関わらず、ユダヤ人の入場はかなり制限されている。ユダヤ人が使える入口は1つだけである。
一方、パレスチナ人たちは、24時間いつでも入れるようになっており、多数の入り口がある。イスラエルが、制限をかけるのは、暴動が発生するなど危険な時だけである。
これは、治安維持はイスラエルが担当しているが、管理は、ヨルダンのワクフ(イスラム組織)が担当しているからである。実際には、アルアクサ(神殿の丘)は、今すでにイスラムがその主導権を持っているといえる。シンワルの主張は、実際とは違っているように思う。
イスラエル軍も停戦の不安定を指摘
イスラエル軍のコハビ参謀総長は、軍大学卒業式において、ガザとの戦闘では、イスラエルが明らかな優位を達成して停戦したとし、「ハマスは、エルサレムの防護者だと言いながら、結果、ガザの破壊者で終わった。」と述べた。しかし、同時に、イスラエルは失敗から学び、次の戦闘に備えているとも語っている。
www.timesofisrael.com/a-week-after-ceasefire-idf-said-preparing-for-next-round-of-fighting-in-gaza/
なお、停戦を仲介したエジプトは、テルアビブとガザ双方に代表団を派遣し、停戦維持の監視を行なっている。国際社会のガザへの支援についても、エジプトが、仲介を行なっている。
期待できるか?停戦安定化に向けて:エジプトがイスラエル・パレスチナ自治政府・ハマスをカイロに招聘へ
今回の停戦を仲介したのは、エジプトであった。またエジプトは、真っ先にガザへ5億ドル(約550億円)の支援を申し出ている。今週、イスラエル、パレスチナ自治政府を訪問したブリンケン米国務長官は、続いてエジプトを訪問。シシ大統領に、これらに対する謝意を述べたことから、エジプトの中東での存在感が高まっていると報じられている。
今後の予定としては、来週火曜に、エジプト主催、アメリカが同席する中、イスラエル・パレスチナ自治政府・ハマス代表が、カイロに招かれて、停戦の安定化に向けた交渉を行うことになっている。
イスラエルのメディアによると、この会談では、ハマスに拘束されているイスラエル人(ベドウイン)2人と、イスラエル兵2人の遺体の返還も交渉のテーブルに上ることになっているとのこと。交渉に出向くのは、アシュケナジー外相(元イスラエル軍参謀総長)である。
しかし、上記のように、かなり強気のハマスが、イスラエルに譲歩するどころか、イスラエルと同じテーブルに座るかどうかすら疑わしい感じもある。
なお、ブリンケン国務長官は、エジプトの後、ヨルダンでアブダラ国王にも面会している。ヨルダンは、アルアクサ問題については、その擁護者として、いわば当事者でもある。しかし、来週、カイロでの会談については、ヨルダンは関与していないもようである。アブダラ国王は、アメリカが、エルサレムに領事館を再開させる案について、パレスチナ人とアメリカとの対話がしやすくなるとして、歓迎を表明したとのこと。
www.timesofisrael.com/fm-ashkenazi-to-visit-egypt-for-gaza-talks-next-week/