www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4638197,00.html
昨夜17日、午後10時に開票が始まると同時に、チャンネル2など主要3テレビ局が、それぞれの出口調査の結果をはじき出した。
結果はだれもが驚くものだった。投票前日までは4議席先を行っていたはずの左派シオニスト陣営が、右派リクード(ネタニヤフ首相)と同じ27議席で並んでいたのである。
時間が経つにつれ、リクードが1票リードし、3時間後の午前1時の時点で、ネタニヤフ首相が早々と勝利宣言を出した。最終的には右派リクードは30議席、左派シオニスト陣営は24席。
リクードは予想より10議席も多く獲得しており、まさに大どんでんがえしだった。これでネタニヤフ首相の3期目続投は決定である。専門家たちの読みは今回も、みごとに大はずれだった。
イスラエル民主主義研究所ディレクターでヘブライ大学のギドン・ラハット教授は、今回、ネタニヤフ首相が予想外の勝利を収めたのは、最終的に右派色を鮮明にし、本来のリクードに戻ったことが、一つの要因だと語る。
有権者が、イランやガザ、北部国境情勢、パレスチナ問題など緊迫している治安問題について、どんな対処をとるのか全く未知数の新しい指導にかけることを避け、安全パイとしてネタニヤフ首相を選んだのではないかと分析する。
つまり、全くネタニヤフ首相に満足しているとはいえないのだが、少なくともある程度は、どんな対策をとるか予想がつくというわけである。
ただし、南部のガザ地区周辺の市民たちは、前回のガザとの戦いを最後までやり通さなかったネタニヤフ首相に強い不信感を募らせているため、今回の選挙では、左派シオニスト陣営への支持が多いという結果になっている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4638423,00.html
予想外の結果を受けて、翌朝、ネタニヤフ首相は、嘆きの壁を訪れ、「責任の重さを実感している。」として祈りをささげている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/192822#.VQncZqW9DCs
一方、ほとんど確信していたにもかかわらず、勝利を逃したシオニスト陣営のヘルツォグ氏は、ネタニヤフ首相に祝辞を述べるとともに、今回ネタニヤフ首相更迭を支持する声も今回かなり大きかったことを評価し、今後も、政府とは違う意見を述べる声としての使命(おそらく野党代表)を果たす所存であると語っている。http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4638552,00.html
<その他の党の得票とその意味>
1)中流世俗派・経済改革重視の党が根強い人気:未来がある党(ラピード党首)と新党みんな党(カフロン党首)
前回、中流階級層を引き上げるとして19議席を獲得した未来がある党(ラピード党首)が,8議席失い、その分、注目されていた中道右派の新党みんな党(カフロン党首)が10議席を獲得した。
8議席を失ったとはいえ、未来がある党は、まだ11議席で第4位である。上がり続ける物価の高騰から、経済改革を主張する中道世俗派の政党がやはり根強い人気を保ったということである。
2)投票率も議席数も増えた統一アラブ政党
選挙の結果は、リクードが30議席。2位がシオニスト陣営で24議席。3位は、統一アラブ政党で14議席だった。
アラブ・イスラエル共存社会運動ディレクターで、政治分析の専門家モハンマド・ダラウェシェ氏によると、今回もイスラム主義勢力は、投票をボイコットする運動を展開したという。しかし、最終的に、アラブ人の投票率は70%に上った。
ダラウェシェ氏によると、イスラエルのアラブ系市民たちの80%は、ユダヤ人政権の連立に加わって、アラブ系市民の声を反映することを願っているという。(・・・が、これは同氏の立場からの発言であって、本当はどうなのかは若干疑わしい感もある)
今回、もし、(中道)左派のシオニスト陣営が勝利していた場合、統一アラブ政党が連立に加わり、閣僚のポストを得ていた可能性もあったとダラウェシェ氏は語る。
しかし、予想に反して右派リクードが勝利となった今、その可能性はなくなったということである。しかしそれでもアラブ系市民にとって、今回の選挙は大きな前進だったと語る。
今回の選挙は、国会入りする党は最低でも投票が3.25%なけれなならないという新しい法案を初めて適応した選挙だった。つまり、小さな政党は生き残れないシステムである。
この法案は、「アラブ人は出て行け」といった意思表示を時々吐露しているイスラエル我が家党のリーバーマン氏の提案によるものだったという。おそらく、アラブ人の政党が一致することはありえないと考えた同氏が、弱小のアラブ政党議員を国会から一掃するために提案した法案だったと思われる。
しかし、アラブ政党がまさかの一致をとげたことで、その策略が全く逆に働き、アラブ政党が得票第3位の大きな政党になったのである。このまま行けば、国会からアラブ人議員を一掃するどころか、アラブ統一政党から議員8人が国会に座ることになるという。
<連立への予想錯綜:鍵を握るのはみんな党(カフロン氏)>
イスラエルで政権を運営するためには、国会120議席中過半数、つまり、他党と交渉して連立を組む事で61議席を獲得しなければならないのである。現在、リクードは30議席持っている。すなわちあと31議席以上を獲得しなければならない。
連立交渉とは、すなわち、連立に加わればどの大臣のイスがどの党に配当になるのかという交渉である。
こうした連立交渉は、正式には、来週初頭、リブリン大統領の指名を受けてからになるが、イスラエルのメディアでは、すでにネタニヤフ首相がどんな組み合わせで、連立を立ち上げるのか様々な予想の錯綜がはじまっている。
たとえば、今回国会入りを果たしたユダヤの家党、イスラエル我が家党などの右派政党に加えて、ユダヤ教政党のシャス党や、統一トーラー党が連立に加わったとしても、合計57議席でまだ過半数には届かない。中道か左派の党から少なくとも1つの党を取り込まねばならない。
すると可能性があるのは、元リクードで、コミュニケーション大臣のポストで成功した経験をもつカフロン氏のみんな党が最も有力ということになる。
ネタニヤフ首相は、カフロン氏を連立に取り込むために、すでに経財相のポストを提案している。カフロン氏がそれが受理するかどうかが注目されている。
さらにカフロン氏は、ネタニヤフ首相に対し、連立を受け入れる条件として、ユダヤ教政党は連立に入れないでほしいなどと様々な要求を出すことも可能である。
極端な例としては、カフロン氏が連立に加わる条件として、リクードが、左派シオニスト陣営と一緒に統一政府を立ち上げることを満ちだすことも可能性なわけで、そうなるとまた状況は一変することになる。つまり、今連立成立への大きな鍵はカフロン氏が握っているということである。
選挙は終わったが、どんな政府ができるのかはまだまだこれからだ。イスラエル、相変わらず何がおこるか予測不能、ジェットコースター状態である。
<どうなる!?アメリカとの関係>
ネタニヤフ首相は選挙前に、オバマ大統領(民主党)を無視する形で、アメリカ議会(共和党優勢)の招きに応じてイランとのいかなる合意にも反対するという演説を行っている。
そのせいか、選挙に勝った後、EUからは祝辞が届いているのに、オバマ大統領からはいまだに何の連絡もない。ネタニヤフ首相が続投になったことで、今後のイスラエル、アメリカの関係が懸念されるところである。