ネタニヤフ首相記者会見:フェイクではなく真実に目をむけてほしい. 2025.8.11

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イスラエル国内外から、ガザ占領について反発が相次いでいることを受けて、8月10日(日)、ネタニヤフ首相が、国際メディアに向けての英語記者会見、その数時間後には、ヘブライ語で国内メディアに向けた記者会見を行った。

海外メディアへの記者会見は、質疑応答も含めると約40分だった。ネタニヤフ首相の考え、また将来への計画が、わかりやすく提示されている。

1)ガザ占領にむけた戦闘拡大について

ネタニヤフ首相は、まずハマスが今も健在であり、このまま放置したら、10月7日が何度も起こると述べた。ハマスが、武装解除と人質解放を拒否している以上、ハマスを殲滅させる以外の選択肢はイスラエルにはないと語った。

また、ハマスがガザ市民にも苦難をもたらしており、ガザ市民もハマスと戦っていると述べ、ガザ占領が目的ではなく、ガザをハマスから解放することだと強調した。

戦闘の5原則は、①ハマス非武装化、②人質全員解放、③ガザ非武装化。④イスラエルが治安維持を担当。ガザ周囲に緩衝地帯設立、⑤イスラエルではない平和志向の市民管理組織設立(子供にテロ教育せず、イスラエルを攻撃するテロリストに給与を払わない。つまり、ハマスでもパレスチナ自治政府でもないということ)

イスラエルはすでに70-75%を管理下に置いているので、これからの攻撃は、ガザ市とアル・マワシで、市民には、安全な避難地域を指定して移動してもらい、そこでは、食料や医薬品といった支援を行うとしている。

ザミール参謀総長の包囲案では、戦争が終わらないだけでなく、人質も取り戻せないと述べ、ガザ市攻撃から始まる全域の制覇が最も早く戦争を終わらせる道だとの考えを明らかにした。人質に迫るリスクについては、特別な対策が準備されているとし、詳細は語れないと述べた。

2)ガザの飢餓状態について

ネタニヤフ首相は、この記者会見の目的は、世界中でイスラエルが、ガザの飢餓をもたらしているという情報が偽情報であることを証明するためだと語った。

だいたい、イスラエルが飢餓を武器としているなら、戦争から2年経ったいまもまだガザの人々が生きているはずがないと主張した。

ネタニヤフ首相は、戦争当初からイスラエルは、物資約200万トンをガザ内部に搬入してきたと主張。GHF経由の食料配布も行ってきたことを挙げた。

しかし、ハマスが、市民に行くはずの物資を、暴力的に横領して、物資不足状態を意図的に作り上げてきたと語っている。

また、イスラエルは、何千もの物資トラックをケレン・ショムロン検問所から、ガザの中に誘導したが、国連はそこから先、ガザ内部に配布することを、これまでから、そして今も拒否している。食料はそこで無駄になっていると訴えた。

これに対する対策として、イスラエルは、今後、①安全な人道支援物資配給のための安全地帯、経路を創設し、トラックが、安全に移動できるようにする、②GHFによる配布センターを増やす、③空からの物資投下(イスラエルと他の国々が行う)を続けると述べた。

ネタニヤフ首相は、現時点においては、ガザが飢餓状態にあることを否定し、飢餓に陥っているのは、イスラエル人の人質だけだと述べた。

デービッドさんの痩せこけた腕と、食糧を渡すハマスの腕が健康であることを提示した。*以下は、イスラエル軍が発表していた、ガザ地下トンネルのハマスの様子。

しかし、ハマスが、市民に行くはずの物資を、暴力的に横領して、物資不足状態を意図的に作り上げてきた。

3)国際メディアのフェイクニュースの問題

ネタニヤフ首相は、国際メディアが、ハマスの提示する数値や証言をそのまま鵜呑みにしていると指摘。

ニューヨークタイムスが一面に乗せた痩せた子供の写真含め、世界に出回った3枚の象徴的な飢餓とされる写真が、全部フェイクであったことを証明した。

①オサマ・アル・ラカブさん。彼は今、イタリアで治療を受けている。イスラエルが救出したのだ。彼は遺伝的に肺と消化機能に問題を抱えていた。消化機能が低いから痩せてみえるということだ。

だからイスラエルは、ラカブさんを医療的なケアが受けられるようにして、それを改善した。

②アブデル・カデル・アル・ファユミさん。彼も遺伝性の神経疾患と脊椎筋萎縮症を患っている。栄養とは関係なく、筋肉の萎縮と深刻な体重減少をもたらす、進行性の病気である。彼の衰弱した容貌の原因は、栄養失調ではなく、この疾患である。

ファユミさんは、2018年にイスラエルで治療を試みたが、効果的な治療には至っていなかった。

③世界で最も拡散された写真。ニューヨークタイムスが一面に使った写真である。モハンマド・ザカリア・アユブさんとその母親である。アユブさんは、見てわかるように遺伝性の脳性麻痺を患っている。母親もその弟も栄養失調ではない。

ニューヨークタイムスは、停戦文を出したが、それは、小さすぎてわからなかった。イスラエルは、ニューヨークタイムスを国として訴えることを検討していると語った。

4)イスラエルは今中世のユダヤ人中傷に直面してい

ネタニヤフ首相は、中世時代に、ユダヤ人は、キリスト教にとって害虫だと言われ、ユダヤ人がクリスチャンの子供を殺してその血を利用しているといわれるなど、世界的な中傷を受け続けた。

それが原因で、虐殺され、ポグロムを受け、最終的にホロコーストになったと訴えた。今イスラエルはそれと同様の中傷を受けていると訴えた。

ネタニヤフ首相は、「中世のユダヤ人が受けたような中傷を、私たちは容認しない。放置するつもりもない。これが記者会見の目的だ。皆さんが、真実に目をむけることを願っている。」と締めくくった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。