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ネゲブ騒乱
コロナ問題に翻弄しているベネット首相だが、政権の危機に再び直面している。ネゲブ地方に、KKL(ユダヤ民族基金)が植林しようとしたところ、11日、その地域に住んでいるベドウインたちが反発。電車を止めたり、車に火をつけるなどして、警察と衝突し、一時暴動になる騒ぎとなった。
המהומות סביב נטיעות קק"ל בנגב ממשיכות: צמיגים הובערו סמוך למחלף שגב שלום@SuleimanMas1 pic.twitter.com/2JaAW4bDZ5
— כאן חדשות (@kann_news) January 11, 2022
イスラエルには、砂漠地帯のネゲブ地方への植林計画は前からあるが、砂漠に住むベドウィンからすると、砂漠が奪われることになるので、自分達を追い出そうとする策略だと受け取られているのである。
ネゲブは、今統一政権に加わっているイスラム政党ラアム党の基盤があり、ラアム党は、これまでからも、植林をさせないようずっと守ってきたという経過がある。
ラアム党アッバス党首は、植林はしないとの約束であったはずだとして、今後、植林が継続されるなら、今後、国会で政権を支持する票は投じないと怒りをあらわにした。
ベネット首相からのコメントはないが、ベネット首相と二人三脚首相であるラピード外相は、植林のプロジェクトは見直すべきだと述べた。
この流れから、右派議員らからは、ベネット政権の弱腰を指摘する声もある。リクードのヤイール・レビン氏は、ベネット政権は、コロナもネゲブもコントロールできていないと痛烈な批判を出した。
一方、ネタニヤフ前首相は、植林はするべきであり、暴動を強力に抑えようとした、治安部隊を支持すると火に油を注ぐような発言を出した。
すると、ラアム党のアッバス党首は、「ネタニヤフ氏は、前首相の時に、一度、この植林をあきらめたことがあったではないか。ネゲブのべドゥインの町2つを承認すると言っていたではないか。」と、その矛盾を厳しく指摘するなど、なにやら、ややこしい様相になっている。
どうする?現実主義者のアッバス党首
イスラム政党ラアム党のアッバス党首は、先月、テルアビブで行われたカンファレンスで、「イスラエルはユダヤ人の国として出発したのであり、それが変わることはないだろう。もういいかげんにこれを認めて、その中でアラブ系住民の権利を守ることを考えよう。」と言い、注目された人物である。
イスラエルでは、人口の増加率がユダヤ人より、アラブ人の方が多いことや、西岸地区の位置付けがどうなるかで、将来、人口比がユダヤ人よりアラブ人の方が多くなることへの懸念がある。もしそうなった場合、イスラエルが民主主義国である以上、ユダヤ人の国とは言えなくなってしまう。
このため、2017年、ネタニヤフ前首相は先手をとって、「イスラエルはユダヤ人の国」とのアイデンティティを法的に確立する方策をとった。この時、イスラエルの母国語は、ヘブライ語とアラビア語とされていたところ、ヘブライ語だけになるなど、イスラエルに生まれたアラブ人の立場が弱くなることとなり、大きな物議になった。
このような流れに中で、アッバス氏は、イスラエルは基本的にユダヤ人の国ということを認め、この現状の中で、アラブ人の生活を守ろうと、現実主義を主張したということである。
これまでなら、ありえなかったような意見だが、これに賛同するアラブ系市民も増えてきたために、ラアム党が選挙で支持率を伸ばしたということである。
実際、これまで政権に反発だけしかしなかったこれまでのアラブ政党の時より、ラアム党がベネット連立政権に協力しはじめてからの方が、アラブ系市民の権利をさまざまな点で改善しているようである。
今回のネゲブの問題をアッバス氏はどう対処するのか。今、右派ベネット首相からの声明が出る前に、中道左派ラピード外相が、声明を出したところに、この政権の都合の良さというか、強さがあるかもしれない。
アッバス氏も現実主義者なので、この問題は、そう長くは続かないのではないかと思うがどうだろうか。。