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ハマスとイスラエルの“最終”とも言われる交渉が、本日15日に、カタールのドーハで行われることになった。
イスラエルからは、これまでと同じ交渉団メンバー、モサドのデービッド・バルネア長官、シンベト(国内治安機関)ロネン・バル長官とイスラエル軍のニツァン・アロン少将(退役)が交渉団を率いる。
今回はネタニヤフ首相府から上級顧問のオフィール・ファルク氏が加わる。
アメリカも、これまでと同様、CIAのウイリアム・バーンズ長官を派遣する予定とのこと。
交渉では、第一段階として、6週間、イスラエルが地上戦を停止し、一時軍も撤退させる。この間に、ハマスは、イスラエル人人質の女性、子供、高齢者、負傷者計33人を返還する。
イスラエルは、返還される33人は全員生存者であることを要求している。これに対し、イスラエルは、パレスチナ人収監者990人を釈放する。
ハマスは、当初、極悪終身刑のバルグーティを釈放者の中にいれると要求したり、現段階では、交渉には応じない。ドーハには行かないと言っているが、まだ交渉に出てくる可能性も残した形だという。ハマスとしては、交渉がまた破綻した際に、イスラエルに新たな攻撃の理由を与えることになりかねないと懸念しているとの分析もある。
まずは、来るか来ないか、来るとしたら誰が来るのか、注目される。
必死のアメリカ:交渉とイランの攻撃とつなげたのは失敗!?
アメリカのバイデン政権はなんとか、交渉で停戦にもちこみたいと考えており、イスラエル、ハマスだけでなく、そこにイランとヒズボラという要素もつなげるという手段も持ち出した。
イランは、今にもイスラエルを攻撃するような気配を続けている。バイデン大統領は、「この交渉の結果によっては、イランが攻撃を思いとどまるのではないか」と述べた。
となると、交渉が破綻すれば、イランの攻撃のきっかけを与えることになりかねないわけである。イスラエルの専門家の中には、これを批判する声もある。
また、バイデン政権で中東を担当し、特にレバノンを行き来しているホフスタイン特使も、「この交渉で合意にまとまれば、10ヶ月以上にわたっているヒズボラとイスラエルの攻撃応酬も終わらせる可能性が出てくるのではないか」と述べた。
ということは、交渉が破綻すれば、ヒズボラが、イスラエルを攻撃するきっかけにもなりうるということである。
ガザ南部国境では、IDFハレヴィ参謀総長が、ガザとエジプトの国境、フィラデルフィ回廊で発見された密輸トンネルにいる部隊を訪問。
「合意で一時撤退することになるのか、戦争が激化するのか。いずれの場合にも対処する用意はある」と述べた。
*中東アラブ人たちの反応:なかなか攻撃しない?イランの風刺画
今にもイスラエルを攻撃するといった脅迫的な発言が続くイランだが、もう2週間も攻撃に踏み切っていない。さまざまな憶測が飛ぶ中、中東では、イランや、またその周辺アラブ諸国を揶揄するような風刺画が出ている。Times of Israelの記事より一部紹介する。イランがこういう状況にどう反応するのかということである。
ハメネイ師が、火をつけても発射までに時間がかかる様子
— Cartoonist Yaser Ahmad (@cartoonist_a) August 9, 2024
イランが最大武器で攻撃すると言っているがドローンを発射している様子
#الرد_الإيراني #اسماعيل_هنية #كاريكاتير pic.twitter.com/z21z1lvazs
— Emad Hajjaj Cartoons (@EmadHajjaj) August 3, 2024
イスラエル攻撃に賛同するとみせかけて、イランのミサイルを迎撃するアラブ諸国の様子
الردع العربي المشترك !!#الرد_الإيراني #اغتيال_هنية #كاريكاتير pic.twitter.com/0QjMa1NNaV
— Emad Hajjaj Cartoons (@EmadHajjaj) August 6, 2024
最悪に備え、テルアビブ美術館が重要美術品をシェルターへ移動
イランの攻撃はあるかないか?微妙な緊張が続く中、最悪を見据えて、テルアビブの美術館が、ピカソの作品など、国宝級の重要な絵画を、地下のシャルター室へ移動させた。展示室の壁が空虚になっている。
石のひとりごと:戦争の終わらせ方の選択について
今日は日本は、終戦記念日にあたる。読売新聞に防衛相防衛研究所主任研究官の千々和泰明さん(46)が、「戦争の終わらせ方探究:「危険」と「犠牲」の間でという記事を発表していた。
www.yomiuri.co.jp/national/20240813-OYT1T50193/3/
千々和さんは、一旦始まった戦争を終わらせるのは容易ではないとして、もし始まってしまった場合に、どのように終わらせるかの研究をしている。その中で、「将来の危険」と自軍の「現在の犠牲」のどちらを重視するかで戦争の終わり方が決まると書いている。
第二次世界大戦の時、連合軍は、虐殺されているユダヤ人救出よりも、ナチス撃滅を優先させた。戦争に勝てば、ユダヤ人も解放されるという考え方である。
確かに、救出を重要視してナチスと交渉同意などしていたら、世界は今どうなっていたかわからない。
しかし、ユダヤ人救出を優先していたら、膨大な数のユダヤ人が助かっていたかもしれない。非常に難しい決断ということである。
今、イスラエルが直面しているのは、この2つの局面のようでもある。将来を考えれば、ハマスもイランも今無力化しなければならない。しかし、その場合、今現在、人質になっている人々や、従軍している若い兵士たちが多く死ぬことになる。
ネタニヤフ首相は、どちらかといえば、前者を重要視しているとして、人質家族など後者を重視する人々からは、大きな反発を受けている。
ネタニヤフ首相がどの程度、今日の交渉を重視しているのか、わからないが、どもかくも交渉には向かったということである。