トンネルを家族と移動するシンワルの映像:地下ハマスオフィスに置き去り山積みの札束 2024.2.14

MAHMUD HAMS / AFP/File

ヤヒヤ・シンワルの姿

13日、イスラエル軍は、10月10日の時点で、ハンユニスのブネイ・スヘイラ墓地から数十メートル地下にあるトンネルの中を、弟イブラヒムの導きで、まず妻、3人の子供、その後を移動するシンワルだとする映像を公開した。

その人物は、後ろ姿だが、その耳の形と、AIによる総合的な分析によるとシンワルだとIDFは言っている。

このクリップは、イスラエル軍が進めているハンユニスへの侵攻とハマス活動と犯罪の証拠集めの中、回収した監視カメラから押収した映像とのこと。

以下のサイトに埋め込まれたクリップには、上記の映像に続いて、ハマス高官や指揮官らが、寝泊まりしていたとみられる部屋の様子が伝えらている。(0:53あたりから)

www.israelnationalnews.com/news/385159

イスラエル兵が、普通の洗面所や台所があると案内しているが、台所には国連配布の食料の袋も見える。ベッドの上には迷彩色の戦闘服。またシンワル自身の部屋と見られる部屋にあった金庫の中とその外にも、イスラエルシェケル札が、文字通り山のように束ねられている。まったく驚きの量である。なぜ置いていったのか。持っていけなかったのだろうというほどの量である。

イスラエル軍のハガリ報道官は、この映像は、シンワルが、まさに自分と自分の家族のことだけを考え、地上で苦しみの境地に追い込まれるガザ市民のことなど、一切何も考えてないということを表していると語った。

このビデオクリップが、発表されたのは、ちょうどカイロでの人質に関する交渉が始まった日であった。シンワルは、10日以上、ハマス本部と連絡を取っていないと報じられている。どこにいるかわからないが、カイロでの交渉には、関わっていない可能性がある。

www.timesofisrael.com/idf-airs-footage-of-hamas-leader-sinwar-in-gaza-tunnel-the-hunt-will-not-stop/

ハマスとの戦闘は進んでいるがまだ終わりではない:ハレヴィIDF参謀総長が警鐘

ハンユニスでの侵攻は、密集地隊での作戦という前代未聞の戦闘になると懸念されていた。

しかし、予想外のスピードでハマス犯罪の証拠や武器を摘発、回収。破壊を続けている。ラファでは人質2人を奪還することもできた。

この4カ月あまりの戦闘で、打倒したハマス戦闘員は1万人を超え、インフラもかなり破壊できた(トンネルの破壊はまだ20%にすぎないとも言われている。)

イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、こうした結果を称賛しながらも、多くの戦死者を出しており、その代価は払わなければならなかったこと、またまだ終わりが近づいたわけではないと釘を刺す言葉も語った。

ガザ南部では、シンワルを捜索し、人質を救出するための戦闘を短期決戦型で続けている。北部でもハマスが戻ってくる様相があり、今もまだガザ全域で、戦闘が続いているという。

「ラファに密集している難民をまだ北部に戻らせることができないのは、戦闘の巻き添えを避けるためだ。北部でテロ関連の痕跡がすべて排除できたら、その時には、ガザ市民を北部へ戻すことができるようになる。

ラファへの攻撃が本格的に開始する前には、ガザの民間人を効果的に避難させる方策も取る。」とハレヴィ参謀総長は語った。

今カイロでは、人質交渉が行われ、6週間の停戦という声も聞こえている。そうなった場合、どうするのか聞かれると、ハレヴィ参謀総長は、それが終わった時点でまた戦闘を開始すると述べた。基本的に、イスラエルは、ハマスの痕跡をガザから無くすまで戦うということである。

www.timesofisrael.com/idf-chief-military-achievements-in-gaza-very-high-but-still-a-long-way-to-go/

ガザ北部はどうなっている?:30-50万人戻っているとIDF大佐が警鐘

エルサレムポストの記事によると、イスラエル軍のナフマン大佐が、ガザ北部にはすでにハマスが戻りつつあるのに、イスラエル軍は十分な対策を取っていないとの危機感を表明した。

先月、イスラエル軍は、戦闘のサイズを縮小し、精鋭部隊による短期決戦型戦闘を主に南部で展開している。しかし、北部については、だいぶ制圧したとの判断から、多くの予備役兵たちを撤退させたのであった。

しかしナフマン大佐によると、イスラエル軍は、現在ガザ北部には、10-15万人が住んでいると見ている中、30-50万人が戻っており、以前の様相になり始めているという。ここに駐留するイスラエル軍は縮小されて、何かあったときに十分対処できる体制にないと警鐘を鳴らしている。

ナフマン大佐はまた、ハマス戦闘員も戦闘服を着ているわけではないので、民間人と見分けることは不可能だと指摘。今はまだ、北部に住民を戻さないようにしなければならないと言っている。

www.jpost.com/israel-hamas-war/article-786771

また不気味なことに、ガザ地区では、危険な野犬が多数出回っており、イスラエル領内へ入って行っているとのこと。

石のひとりごと

読者もうんざりかと思うが、本当に終わりが見えないとはこのことである。

それにしても、ここまで徹底的にある組織や人物が、全身全霊をかけて、イスラエル人を殺し、イスラエルを抹殺しようとしている。そのことに、自分の一生だけでなく、妻や子供の命までもかけていることに、なぜそこまでと、不思議を感じないだろうか。

今回、イスラエル人たちにとって大きなショックだったのは、それが過激なハマスにとどまらず、ガザの一般人もそうだったということが明らかになったことである。その点もまた、彼らがホロコーストの再来とまで感じさせられた点だった。

「おまえなどいないほうがいい」そう言われ、世界もそういう目で見ているというのが、イスラエルとその中に住むイスラエル人。そして世界中にいるユダヤ人である。主が支えていなければ、立っていられない心の傷になってしかるべき事態だと思う。

しかし、このイスラエルという国とその人々を、主だけは絶対に見捨てないということも覚えるべきである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。