トランプ大統領が来週にイランと交渉再開を示唆:イランの核・弾道ミサイルへの打撃は? 2025.6.26

US President Donald Trump addresses a press conference during a North Atlantic Treaty Organization (NATO) Heads of State and Government summit in The Hague on June 25, 2025. (NICOLAS TUCAT / AFP)

6月24日(火)午前7時(日本時間午後13時)に、イスラエルとイランが停戦に入ってから48時間。攻撃の応酬はみられていない。イスラエルでは、学校が再開され、ベン・グリオン空港も離着陸が始まっている。

トランプ大統領は、NATO首脳会議に出席。その中で、来週にもイランとの交渉を再開すると示唆した。「もしたら合意にいたるかも。知らんけど(We may sign an agreement, I don’t know)」と言っている。

イランとの交渉に先立ち、トランプ大統領は、イランの核施設には壊滅的なダメージを与えていると主張しており、次回の交渉には、もはや核兵器に関する交渉は不要だとも言っている。

交渉の前に、より強い立場に立っている側が有利になるが、トランプ大統領は、今アメリカが、イランより、確実に強い立場にあると確信しているようである。

交渉に先立ち、ではこの12日間の攻撃で、イランへの打撃はどれぐらいなのかが論議になっている。

1)イランの核兵器への打撃の度合いに関する議論

イラン核施設はどのぐらい破壊されたのかについて、アメリカメディアは、開発を数ヶ月送らせたに過ぎないと、悲観的な見方をしている。イスラエル軍も慎重な見方をしている。

これに対し、トランプ大統領は、それは誤りであり、イランの核施設は壊滅したとの評価を変えていない。

トランプ大統領は、その核心の理由として、イスラエルの諜報機関モサドが、現地に隊員を派遣して確認したと述べた。これはイスラエルにとっては、極秘情報だったと思われるが、トランプ大統領が、モサドの活動をリークしてしまった可能性がある。

しかし、トランプ大統領のこうした、ミスは、前にもあったことである。モサドも気にしていないようである。

モサドのバルネア長官も、歴史的な攻撃であり、長きにわたって脅威であったイランの武力に、決定的な打撃を与えたと感謝の声明を出した。その後、CIAもトランプ大統領と同じ考えを表明した。

www.timesofisrael.com/mossad-hails-israels-historic-iran-offensive-thanks-cia-in-rare-public-message/

一方、イランの方は、停戦に応じたとはいえ、降参したわけではない。核開発は継続するという強い意思を表明し、IAEAの査察を受け入れなくなった。

さらには、議会で核拡散防止条約からの離脱を可決。逆にこのアメリカの攻撃で、核兵器への道すじを与えてしまったのではないかとの懸念も出ている。

www.timesofisrael.com/trump-says-us-will-meet-with-iran-next-week-asserts-nuke-deal-no-longer-necessary/

しかし、その後、イランからも各施設への打撃を認める声明が出たとのニュースもあり、混乱しているのか?との様子も伺えるところである。

2)弾道ミサイルへの打撃

イスラエルによると、開戦前のイランは、弾道ミサイルを2500発、ドローンを数千発を保持しているとみられていた。

12日間の戦争で、イスラエル軍は、弾道ミサイル発射地250カ所、全体の3分の2を破壊し、それと並行して弾道ミサイル約1000発を破壊したとのこと。

今、イランに残っているミサイル発射施設は100カ所。弾道ミサイルは1000から1500発と推測されている。

イランの軍事力にかなりの打撃であったことは間違いないだろう。しかし、イスラエルの滅亡を言い続けている現政権も、IRGCも崩壊したわけではない。危険な武器もまだ残っているというのも事実である。

来週のアメリカとイランの交渉が実現するのか、もし実現された場合、どんな内容になるのか、注目される。

www.timesofisrael.com/the-israel-iran-war-by-the-numbers-after-12-days-of-fighting/

石のひとりごと

トランプ大統領が、来週のイランとの交渉を示唆したのは、オランダのハーグで行われているNATO首脳会議に出席している時である。

この会議で、NATOは、トランプ大統領が主張していたように、加盟各国の防衛費を、それぞれのGDPの5%にまで上げることで合意した。トランプ大統領には、大きな白星になったと言われている。

世界に旋風を巻き起こし続けているトランプ大統領。その話ぶりや言葉遣いは、一国の大統領とは程遠い。やや下品なおっちゃん言葉である。こんな指導者が出てくるとは、だれも夢にも思わなかっただろう。

しかし、ウクライナでのロシアの戦闘はまだ止められていないが、イスラエルとイランの停戦は実現させた。

その前の6月21日、パキスタンが、インドとの大規模戦争を止めたとしてトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したところである。

なんやかやで、成果もあげており、嫌われながらも、力で、無理やりにでも世界をなびかせつつあるようにも見えてくる。

将来、終わりの時に出てくる反キリストは、一時的だが、世界平和を実現し、イスラエルからも信頼を得る人物だと言われている。

トランプ大統領がその人物とはいわないが、こんな感じで、世界を制覇していくのだろうかと思わされている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。