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ネタニヤフ首相緊急1日だけ訪米でトランプ大統領と会談
ネタニヤフ首相は、4月3日(木)から、ハンガリーを訪問していたが、その間にトランプ大統領と電話で会談し、できるだけ早くワシントンへ来るようにとの要請を受けた。
このため、ネタニヤフ首相は、ハンガリーから直接、アメリカへと向かい、7日、ワシントンに到着した。ネタニヤフ首相が訪米してトランプ大統領と会談するのは、今年2月に続いて2回目である。
会談には、イスラエルのロン・ダーマー戦略大臣とアメリカのウィトコフ中東特使が同伴していた。
今、世界は、トランプ大統領が発表した「相互関税」で、どの国も大混乱の中にある。中国などは報復関税に出て、対決姿勢に出ているが、日本含め、多くの国々は、関税を撤廃、または緩和に向けて、トランプ大統領との交渉に乗り出そうとしている。
こうした中、トランプ大統領が、相互完全発表後、最初に会談する首脳が、イスラエルのネタニヤフ首相であった。イスラエルは、スモトリッチ経済相がぎりぎりになって、対米関税をすべて撤退したが、結局17%という関税が課されると発表された。
ネタニヤフ首相は、トランプ大統領と、この件について話し合うと意気込んでいた。
しかし、トランプ大統領はまずは、イラン問題を話したかったようである。現在、中東では、アメリカとイスラエルがイランを攻撃する可能性が高まっている。この他、ガザ、トルコについても話し合われたとのこと。
しかし、関税の緩和の表明には至らなかったので、イスラエルのメディアは、「残念な訪問」と評している。
しかし、ネタニヤフ首相は、対米貿易赤字をなくすと約束したとのことで、今後、変化が出れば、国際社会に交渉の可能性を示すことになるかもしれないと言われており、世界も注目している。
jp.reuters.com/markets/japan/funds/P6M5VAB6MJKNHP7FSO3TNHXDDE-2025-04-08/
トランプ大統領との会談後、ネタニヤフ首相はバンス副大統領とも会談した。
会談後に、共同記者会見が予定されていたが、キャンセルとなり、ネタニヤフ首相は、翌8日正午に、帰国の途につくことになっている。
大統領執務室での記者団前で語られたポイント
共同記者会見はなかったが、トランプ大統領は、記者団の前でネタニヤフ首相と対話した。
トランプ大統領は、「みなさんも知っているように、私たちはイスラエルのベスト・フレンドだ。これまでのところ、私はイスラエルにとってベストな大統領だ」と語っている。
語られたことの中で、注目されているポイントは以下の通りである。
1)電撃報告:イランとの核問題ですでに交渉中で次回は12日(土)
この中で、特に世界が注目したのは、トランプ大統領が、イランとの核問題の直接交渉を行なっていると表明した点である。
トランプ大統領は、大統領執務室において、記者団の前で、ネタニヤフ首相と座る中、このことを表明した。次の交渉日は、12日(土)に予定されているという。
トランプ大統領は、ネタニヤフ首相と同様、イランが核保有国になることは、絶対に受け入れてはならないという立場である。イランは、すでに核兵器レベル用としか考えられない60%のウランを保有するに至っている。
トランプ大統領は、話し合いで、イランが核兵器開発を停止するならそれが最善だが、もしイランがそれに応じない場合は、イランにとって、大変危険な事になると警告を発した。軍事攻撃を示唆した形である。
ネタニヤフ首相は、イランが核保有国になるべきではないという点で、アメリカとイスラエルは一致していると述べ、もし本当にイランが話し合いで、核兵器開発を止めるなら、これは良いことだと思うと語った。
これについて、イランは、直接交渉については否定。高官級の間接交渉が行われていると発表した。イランのアラグチ外相によると、次回の交渉は、オマーンで開催されるとのこと。イランも強気で、「これはテストでありチャンスだ。ボールはアメリカ側にある」と語っている。
2)ガザで新たな合意に向けた試みが進行中とネタニヤフ首相
ガザ問題について、ネタニヤフ首相は、記者団に対し、人質解放と停戦に向けた新たな試みが進行中だと述べた。
イスラエルとハマスはエジプトを介して、水面化での交渉を行なっている。先にアメリカのウィトコフ特使が提案し、イスラエルも合意した案(人質10か11人解放と、ラマダンと過越が終わるまでの停戦)は、ハマスが受け入れなかった。
今エジプトが、生存人質8人と遺体8人を解放し、停戦50日という、妥協案を出していると発表しているが、ハマスはこれを否定。交渉は進んでいるとはいえない。しかし、トランプ大統領は「戦争はそう遠くない将来に終わるだろう」と述べた。
トランプ大統領のガザから避難民を全員、他国へ移住させ、リゾート地にする案については、非現実的との見方が優勢である中、トランプ大統領は、世界から好評を得ていると述べた。
トランプ大統領は、イスラエルは2005年、シャロン首相の時に、ガザから撤退したことについて、約束された和平が守られなかったからだが、撤退するべきではなかったと語った。イスラエル撤退後、ガザは危険な死の支配に入ったと述べた。
*エジプト、フランス、ヨルダン首脳がカイロからトランプ大統領にガザ停戦を強調
トランプ大統領とネタニヤフ首相が会談する数時間前、エジプトのシシ大統領と、カイロを訪問したフランスのマクロン大統領、ヨルダンのアブドラ国王も加わって、トランプ大統領と電話会談を行なっていた。
3首脳は、トランプ大統領に、ガザ情勢と、停戦の重要性を伝えていた。
また、停戦後のガザについては、パレスチナ自治政府による統括を主張した。
3)トルコとの関係修復可能とトランプ大統領
イスラエルは、不安定なシリアにあるアサド政権の拠点や、まだ多数残っている武器庫を破壊する作業を続けている。そのシリアには、トルコが新政権に影響力を拡大する動きがみられている。
イスラエルは先週、トルコの関係地点への攻撃に踏み切った。トルコの特に今のエルドアン大統領は、イスラエルに敵意を明らかにしていることもあり、イスラエルとトルコの関係も微妙になりつつある。
トランプ大統領は、トルコのエルドアン大統領とは話ができる関係だとして、イスラエルとの関係改善に貢献できるとも述べた。
Times of Israelによると、ネタニヤフ首相はアメリカで、トルコにF35を売らないよう、ロビー活動をしたと伝えている。
www.timesofisrael.com/liveblog_entry/netanyahu-said-lobbying-us-against-selling-f-35-to-turkey/
石のひとりごと
この会談で、ネタニヤフ首相が得たものはなんだったのだろうか。トランプ大統領が、ネタニヤフ首相を呼びつけたのは、イランへのアピールだったかもしれない。
相互関税の緩和について、現時点では大きな変化は表明されていないが、ネタニヤフ首相が、対米貿易赤字を解消すると約束したことで、何らかの動きがあれば、世界に見本を示すことになる。こちらも注目される点である。
小さい国ながら、相変わらず、国際社会の目はイスラエルに注がれている。