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イスラエル軍は、13日、カンユニスと、人道地帯アル・マワシの間にあるハマス指導者ラファ・サラメ(写真右)の家を、巨大な爆弾で空爆。
目的は、サラメを訪問したハマスの伝説的なNo2指導者、モハンマド・デイフ(左)の暗殺であった。
これまでにサラメの死亡は確認できたが、デイフの死亡は、まだ確定されていない。
しかし、イスラエル軍は、何週間もの間、この場所にデイフが来ることを信じ、数週間待ち続けて、かなり確かな情報で、空爆に及んでいた。
ハマスが死亡を公表していない可能性もあり、イスラエル軍は、死亡した確率が高いと考えている。
デイフが死亡した場合、ハマスへの影響は膨大とみられている。まだ死亡したかどうかは不明だが、国際人権監視団体がハマスの戦争犯罪を報告するなど、なんとなく、風向きが変わったような動きが見え始めている。
ガザのハマスへの打撃・終焉見え始めとIDF
実際のところ、死亡したかどうかは別として、カンユニス軍事指導者ラファ・サラメとデイフとうトップレベルの指導者が狙われたにもかかわらず、ハマスはなんの声明も出していない。
この攻撃で、停戦交渉が決裂するのではないかと懸念されたが、ハマスはそれを否定。交渉を継続すると発表している。こうした状況から、ガザのハマスはもはや組織崩壊に近づいているとの見方がある。
イスラエル軍はこうしている間も、ガザで、ハマスやイスラム聖戦など軍事指導者を集中的に捜索、殺害しながら、トンネルやハマス、イスラム聖戦の拠点、膨大な武器を次々に摘発している。1日で25カ所を攻撃したとの報告もあり、ガザの崩壊は壮絶になっている。
国際メディアは、イスラエル軍が、UNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)関係の学校を攻撃しており、1時間に48人が死亡したなど、多数の死者が出ていると連日報じている。
しかし、そのUNRWAにハマスとイスラム聖戦の司令室があり、武器庫やドローンも見つかっているとイスラエルは発表している。
イスラエルはこれまでにハマス戦闘員1万4000人以上を殺害したと言っている。ガザにいるハマス戦闘員は全部で2万5000人と言われていたため、この数字を信頼するとすれば、あと数千人が残っているとみられる。
イスラエル軍は、今、明らかに、国際社会の批判に振り回されることなく、ガザでの戦闘を続けている。16日、これまでに、ハマスは武力の66%を失っていると発表した。
攻撃でシンワルにハマス内外から停戦への圧力か
イスラエル軍のハガリ参謀総長は、イスラエルがハマスを攻撃し続けているのは、人質を取り戻す交渉をより有利にするためだと説明している。
ネタニヤフ首相が言っていたように、イスラエルが手をこまねいているのを見て、シンワルは、交渉に強気だった可能性がある。時間が経つごとに、国際社会の批判がイスラエルに向いて、交渉がハマスに有利になる動きになっていたということである。
しかし、今、イスラエルは、ハマスの根幹的存在であったデイフを大胆な空爆で暗殺を試み、ガザでの戦闘も大胆にすすめている。
CIAのバーンズ長官は、シンワルは、今、ハマス内部から停戦への圧力を受けているのではないかとの見方を語っている。
www.timesofisrael.com/cia-head-says-hamass-sinwar-under-growing-pressure-to-end-war-report/
国際社会がイスラエルに理解:国際人権監視団体がハマスを戦犯と
1)国際人権団体がハマスが10月7日に何百もの戦犯を犯したと報告
ハマスとイスラム聖戦の司令室がUNRWA本部で発見されただけでなく、膨大な武器や攻撃用ドローンも発見されたことから、イスラエルは、UNRWAとハマスは癒着しているだけでなく、10月7日の奇襲にも関係していたことは確実だと訴えている。
イスラエル首相府報道官は、ガザのUNRWA所長フィリップ・ラザリーニ氏に対し、記者会見の場で「恥を知れ」と何度も言っていた。
これを後押しするかのように、HRW(ヒューマン・ライツ・ウオッチ)が、10月7日、ハマスが、市民1200人を殺害し、251人を拉致したことについて、ハマスとその指揮下にあった組織が、何百もの数えきれない戦争犯罪を犯したとする9ページの報告書を発表した。
その犯罪とは、民間人に対する無差別な攻撃、殺害、残酷で非人道的な犯罪、性的暴力、遺体の切断と略奪、人質、人間の盾に使用などが挙げられている。HRWは、少なくとも3地点で行われたレイプと集団レイプの目撃者にインタビューしたと言っている。
ハマスの政治部門は、民間人を襲わないように言っていたが、軍事部門であるカッサム旅団(モハンマド・デイフ指導)がそうしなかったと主張していることについて、HRWは、これが虚偽であるとしている。10月7日の殺戮と人質略奪は、高度な計画のもとで行われたと報告している。
2)ニューヨークタイムスがガザ内部の戦闘の現状を報告:ハマスが戦闘継続したことがパレスチナ人の悲劇になったと
デイフ暗殺の少し前になるが、13日、ニューヨークタイムスが、ガザ内部の戦闘についての記事をしていた。それによると、今は、本部との連絡が途絶えているのか、今は、ほとんど基地から離れており、イスラエル軍部隊に対し、少人数によるゲリラ戦を続けているという。
NYTのこの記事は、今、シンワルが強気になり、イスラエルとアメリカ、国際社会も合意していた交渉案を拒否して、戦闘を続けようとしたことが、パレスチナ人たちの悲劇に繋がったと書いている。(ガザ人口の2%が死亡・80%がガザ内部難民・インフラや住居はほぼ崩壊)
この記事は、また、イスラエルがこれまで主張してきた、ハマスの実態も網羅し、摘発している。
ハマス戦闘員は、膨大なトンネルで移動していること。その入り口は、市民の家、子供の寝室、医療機関や、国連施設、モスクに設置されている。
またそうした民間地点に武器を確保していること、民間人のエリアからロケット弾を発射していると報告している。
戦闘員は私服で、サンダル姿であるために、市民にしか見えないこと。イスラエルへの国際的な批判を高めるために戦闘を長引かせ、より多くの破壊と民間人が死亡するようにしていること。
戦闘においては、普通の車に地雷を設置したり、空家に罠爆弾を仕掛けた上で、イスラエル兵を誘い込んでいる。巧妙な手口で、友軍どうしの攻撃を誘発させているなどと摘発している。報告は全部網羅できないほど、詳しい。
また、ハマスは、2021年以来、襲撃後にイスラエル軍が地上戦に入ってくることを前提に、対戦車砲などの製造を開始していたとして、かなり綿密な計画と準備をしていたと報告している。
www.nytimes.com/2024/07/13/world/middleeast/hamas-gaza-israel-fighting.html
こうした内容が、イスラエル意外のところから出てきたことはイスラエルでも注目されていた。