タル法(徴兵制)改正をめぐってイスラエル国内では論議が沸騰中、連日トップニュースとなっている。
7日夕刻(日本時間8日、午前2時半)より、テルアビブにおいて、タル法を改正し、正統派ユダヤ教徒にも徴兵の義務を求める大規模な市民デモが行われることになっている。
<タル法議論の背後にあるもの>
この問題の本質は、イスラエル軍の予備役兵不足にあるのではない。社会の不公平感が限界に達したということである。
現在イスラエルで従軍しないのは、いわば”祭司”と目されるユダヤ教正統派と、敵対者にもなりうるアラブ人である。ところがこれらの人々は、従軍しないだけでなく、社会で働かない(アラブ人に関しては雇用先がない)人々でもある。ということは、税金は払わないのに、国の社会保障は受け取っているということを意味する。
問題はこれらの人々が納税者に反比例する形で、急増しているということだ。少子化がすすむ一般世俗派ユダヤ人夫婦にくらべて、正統派もアラブ人も多産だからである。現在、イスラエルの子どもの30%が正統派。今後働かない人口は増える一方である。
もし正統派やアラブ人口が市場に出て働くようになれば、イスラエルにもたらす経済効果は大きいといわれる。徴兵の義務は彼らを労働に結びつける一歩であるとも考えられている。
<正統派も働きたい?>
正統派が皆従軍しないわけではない。2002年の改正から、正統派でも希望すれば従軍できるようになっている。しかし実際には、宗教上の規制や、いじめにあうなどで、一般の部隊で世俗派兵士たちと一緒に働くのは難しい。そのため、正統派の特別部隊が作られ、少ないが今も従軍している正統派はいる。
正統派の中にも社会で労働し、従軍もしようとしている若者は少なくないといわれる。しかし、それを止めているのがラビたちで、「仕事よりもトーラー(聖書)を選べ」と教えているという。