シンワル死亡後人質解放にむけた動き:ソーダストリーム元CEOが人質差し出せば報奨金10万ドル提示 2024.10.21

治安閣議の前に、テルアビブ防衛省前で人質解放を求めるデモをする人質家族たちon October 20, 2024. (Oded Engel/ Pro-Democracy Protest Movement)

シンワル死亡後も人質についてはハマス強気姿勢

先週、シンワルが死亡したことで、ハマスがいよいよ崩壊し、人質をとりもどせるのではないかとの期待が、イスラエル内外で広がった。

しかし、ハマスの次期代表とも目されるカリル・アル・ハヤは、シンワルの死を認めながらも、人質解放は、イスラエルが全面的な停戦に応じる時だとする強気姿勢を崩していない。

www.timesofisrael.com/confirming-sinwars-death-hamas-insists-its-demands-for-a-hostage-deal-wont-change/

一方、先週、シンワルの殺害を終えたイスラエルは、その遺体の解剖と死因の解明を行った後、遺体を安全な場所に移動させた。今後、人質を取り戻すための交渉材料として使われる可能性があるとみられている。

モサドのロネン・バル長官が、カイロに行ったこともあり、最適な時に、交渉に持ち込むとみられる。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/security-cabinet-probing-new-ideas-for-hostage-deal-netanyahu-aide-says-as-meeting-ends/

*シンワル死亡の詳細

イスラエル軍は、10月7日夜に、ハンユニスの地下トンネルから逃げるあらたな映像を公開した。家族と共に、食料や枕などを運んでいる。

それからの1年間、シンワルは、ラファとハンユニスの地下トンネルで過ごしたとみられている。イスラエル軍は、シンワルが潜んでいた場所の写真も公開した。

その映像によると、シンワルの妻は、3万2000ドル(約480万円)相当のエルメスのバッグを持っていた。

周辺に置いていた人質は、8月に殺された6人であったとみられる。シンワルは、6人が死亡した場所からわずか500メートルの地点で死亡していた。シンワルの遺体からは、現金4万シェケル(約160万円)が見つかっていた。

シンワルが、地上でガザ市民が苦しんでいることにまったく心を割いてなかった証拠だと指摘されている。

www.timesofisrael.com/idf-shows-sinwar-fleeing-to-tunnel-on-oct-7-eve-says-he-hid-for-a-year-as-war-raged/

人質を差し出す者に報奨金:ソーダストリーム元社長

人質101人(生死にかかわらず)が、全員ハマスの管理下にないのではないかとの見方もある。各地でばらばらに

一方、イスラエルで、家庭用炭酸水製造機で成功している会社ソーダストリームの元CEOダニエル・バーンバウム氏は、ガザ住民に対し、ネタニヤフ首相のオファーに加え、人質を生きたまま返還するなら、10万ドル支払うとする声明を発表した。期限は24日(水)だとしている。

バーンバウム氏は、この一年は本当に苦しかった。もう終わりにしよう、前に進もうとと呼びかけている。

石のひとりごと

バーンバウム氏は、ソーダストリームを西岸地区のマアレイ・アドミムで立ち上げ、パレスチナ人を雇用して、その経済を助けた人である。かつて取材させてもらったことがある。

バーンバウム氏は、パレスチナ人を助けたいとの一心であった。しかし、海外の親パレスチナ派が、西岸地区にユダヤ人が進出していると訴えて、出ていくようバーンバウム氏に圧力をかけた。ソーダストリームは、2015年、ベエルシェバ近郊へと引っ越しを余儀なくされた。これにより、500人のパレスチナ人が職を失った。なんとも愚かな話だった。

そのバーンバウム氏が今、ガザにいる人質とガザ市民に訴えかけている。パレスチナ人を助けたいとの思いがやはりあるのだろう。

しかし、人質を抱えているとすると、ガザ市民とはいえ、ハマス関係者だろう。バーンバウム氏のよびかけに応じれば、金のために、同胞を売るような形になる。いかに苦難に直面していても、果たして応じる人はいるだろうかとも思う。

イスラエル人とパレスチナ人は、文化的にも思想的にも根本的に違うような気がする。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。