シリアなど中東からの難民が、ドイツとオーストリアに津波のように押し寄せている様子は日本でも伝えられている通りである。
イスラエルは、シリアと国境を接する国の一つだが、あまりにも敵国意識が強いためか、これまでのところ、イスラエルに保護を求めて来るシリア難民は報告されていない。
しかし、イスラエルは、ゴラン高原のシリアとの国境で、多数のシリア人負傷者を受け入れ、治療している。ただし、これらの負傷者は、容態が落ち着き次第、すみやかにシリアに帰還させている。
この週末、パレスチナ自治政府のアッバス議長が、シリア領内にいるパレスチナ人の難民を西岸地区とガザ地区に受け入れたいと表明し、これを認めるようイスラエルに圧力をかけてほしいと国連に要請を出した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4697803,00.html
国連によると、シリア領内のパレスチナ難民キャンプにいて、今は国内難民になっているパレスチナ人は52万5000人となっている。
イスラエル国内メディアによると、イスラエルは2年前、パレスチナ自治政府が主張するイスラエル領内への帰還権を放棄するなら、シリアにいるパレスチナ難民を西岸地区へ受け入れても良いとの提案をしたという。アッバス議長はこれを断っている。
今になって、ヨーロッパへの移民が激増しているのを受けてこの話を持ち出したのは、言うまでもなく、人道的観点からではなく、パレスチナ国家設立への道筋をさらに強固にするための方策とみられる。
アッバス議長は、最近、ニューヨークの国連本部に並んでいる加盟国の国旗にパレスチナの国旗も掲げるよう、要請を出し、一悶着あったところである。
一方、最大野党、左派労働党のヘルツォグ氏は、「これはユダヤ人が歴史的に通って来た道だ。この問題に目をつぶるわけにはいかない。」として、政府に難民受け入れを検討するよう呼びかけた。
これに対し、与党リクードのカッツ交通相らは、「無責任な意見だ。難民はヘルツォグ氏の自宅に収容させろ。」と手厳しい反論。一方、「ドルーズ族に限りシリア難民を受け入れるべきだ。」との意見もある。相変わらずもめている。
<イスラエルの難民事情>
ヨーロッパに先立ち、イスラエルは、おしよせるアフリカ難民に対処しなければならなかった。対処が遅れたため、エリトリアとスーダンからの難民が多数、南テルアビブで行き場をなくし、一時、地域が犯罪の巣窟になるという事態になった。
あわてたイスラエル政府は、南部国境に難民よけの防護壁と収容所を設けてアフリカ難民が国内に入らないようにした。すでに国内にいた難民には、内戦状態にあったスーダンの情勢が落ち着くやいなや、お金を渡すなどして自主帰国を促した。
今ではアフリカ難民がイスラエルに来る事はなくなっている。しかし、イスラエル国内にはまだ4万人以上のアフリカ難民が、不法滞在していると見られ、問題はまだ終わったわけではない。
しかし、こうした難民排斥”成功例”をみて、ハンガリーとブルガリアは、イスラエルと同様のフェンスを建てて、対策を検討しているとの報道がある。
しかし、今にいたっては、人道上の問題から、難民を拒否することへの国際的な非難が高まるとみられ、これまたイスラエルへの非難につながる可能性もある。
現在、貧しいアラブ諸国であるレバノン、ヨルダン、エジプトが難民の群衆を受け入れているのに対し、裕福な湾岸アラブ諸国が難民を一人も受け入れていないことへの非難が始まっている。
<ヨーロッパへの難民問題まとめ> http://www.bbc.com/news/world-europe-34166882
難民問題は、昨年から今年に賭けて急にクローズアップされて来た問題である。
難民たちは当初、北アフリカやトルコから地中海をわたってイタリア、ギリシャを目指していたのだが、途中で船が転覆して死亡するというケースが増えてきた。今年だけですでに2300人以上が死亡している。(2014年中は3279人)
そのため、今ニュースになっているように、陸路でヨーロッパを目指す難民が急増したということである。
現在、ニュースになっているのは、トルコからギリシャ、マケドニアを通り、ハンガリーからオーストリア、ドイツへ行こうとしていた数千人の、主にシリア難民である。
EUの法律では、難民はEU圏内最初の国で難民申請を提出することになっている。そのため、ハンガリーは、まず難民申請をと、いったん難民たちを足止めした。
しかし、国際的な非難がハンガリーの集中し、難民たちが、歩いてでもオーストリアへ行こうとしたのを受けて、100台からのバスをチャーターし、難民たちをオーストリアへ運んだ。
ところで、ハンガリーは、すでに多数の難民を受け入れている。しかし、元社会主義国であり、いまも経済的には貧しく、未来があるとは言えない国。滞在を希望する難民はあまりない。
目指すは経済大国で、しかも難民受け入れを表明しているドイツである。これまでにすでに1万人がハンガリーを通過したが、最終目的地ドイツをめざす難民は、まだまだハンガリーに流れ込んでいる。
6日までにはハンガリーからオーストリアのウイーンや、ドイツのミュンヘンに到着した難民の笑顔の様子が報じられている。オーストリア、またドイツでもボランティアたちが、食料や医療などを用意して、難民たちを受け入れている。
ドイツは今年中に80万人受け入れると表明しているが、100万人になることも視野に入れている。これは破格の数字で、他のEU諸国は、流入する難民に、困惑状態である。
イギリスは昨年中5000人の難民申請を受け入れたが、今年はさらに数千人受け入れると表明し、明確な数字は表明していない。(25000人以上がすでに難民申請中) http://www.bbc.com/news/uk-34148913
*難民申請とは? データ出典 BBC www.bbc.com/news/world-europe-34131911
海外に住んでいると実感することだが、国籍があるということは非常にありがたいことである。国があるから尊重される。日本は特に経済大国なので得することも多い。親方日の丸で、守られるのである。
しかし、難民は、所属する国がない。つまり身元を証明するものがない、名無し状態である。どこからも尊重されず、守るものはいっさいない。
これを救済するため、国連と滞在先の国が発給するのが、難民のステータスである。紛争や内戦で自国にいれば命の危険があるなどの事情が認められる場合に出されるステータスで、これがあれば、滞在先の国に、難民として合法的に滞在することができる。
2015年7月までにヨーロッパで難民申請を行った人は43万8000人。2014年中も計57万1000人が申請している。(全世界の難民申請は計84万876人/BBC)
今年これまでに難民申請を行った人のうち、40%近い18万8000人がドイツで申請を出している。
数ではドイツが最大だが、指標は、国民1000人あたり何人の難民を受け入れたかで示される。すると、最大は、スェーデンで7.8人。2位はハンガリーの4.1人。ドイツ2.1人、イギリス0.5人となる。
ところで、申請したからといって、全員が認められるわけではない。2014年中に、EU圏内で難民指定を受けた人は、57万4665人中、18万4665人に過ぎない。難民指定を受けられなかった人は、違法滞在ということになる。苦しい立場である。
*日本はどうしている?
日本の難民支援協会によると、日本にもシリア難民はすでに400人いるという。このうち、60人が難民申請をしたが、受け入れられたのは、たった3人。https://www.refugee.or.jp/jar/report/2015/09/01-0000.shtml
2014年に日本が難民申請を受け入れたのは、上記3人を含め11人。韓国は87人である。UNHCR(国連難民弁務官事務所)は、今年6月、日本にも難民受け入れを要請しており、将来、圧力がかかる可能性がある。
www.asahi.com/articles/ASH6L64RXH6LUHBI02J.html
<難民発生源シリアの現状>
シリアの難民は400万人に達している。そのシリアでは、アメリカを中心とする有志国軍が、最近ではトルコ国境からの戦闘機発着が可能となったこともあり、ISISへの空爆を続けているが、ISISは相変わらず勢力を維持拡大している。最近では、パルミラの遺跡を破壊したことが報じられている。
問題はロシアの動きである。シリア国内でロシアがアサド大統領のシリア軍強化を急ピッチで進めており、介入する動きがある。ロシアもISISを攻撃するわけだが、一緒にクルド勢力を含む反政府勢力も攻撃すると予想される。
すると、反政府勢力を支援しているアメリカ軍との衝突もあり得る。ケリー国務長官が懸念を表明し、ロシアのラブロフ外相に、「紛争を激化させる可能性がある。」警告している。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4698011,00.html
*溺死した3才と5才のシリア人少年
今回、全世界が難民問題に注目し始めたのは、トルコの沿岸で、3才、5才のシリア人の少年たちとその母の遺体が発見されてからである。一家は、トルコからギリシャの島へ向かい、その後カナダのおばのところへ向かう予定だった。
子供たちは父親の手をすり抜けて波にさらわれていったという。一人取り残された父親は、シリアのコバネで家族を葬り、自分はそのまま家族の遺体のそば、激戦地のコバネに残ると言っている。悲痛な表情である。
一家にシリア出国の費用を出したカナダのおばも深い悲しみと後悔の思いを語っている。一人残された父親とカナダの親族がこれから歩む道のりを思うと、いつまでこんな悲劇が続くのかと、主に祈らずにはいられない。
<石のひとりごと>
80万人ものシリアからの難民を、様々な支援物資と笑顔で受け入れるドイツ人たちの様子に、キリスト教国の底力を見たような気がした。
ドイツはヒトラーの歴史を持っているが、今回、国際社会において、賞賛の的となり、おおいに株を上げたのではないかと思う。
しかし、ドイツでは、同時にネオナチといった暴力で移民排斥を行う異常な国粋主義者がおり、反発もしている。これを機にドイツにいるユダヤ人のイスラエルへの帰還が加速するかもしれない。今後、ドイツがどうなっていくのか、不安もあり、注目されるところである。
世界は本当に急ピッチで変わっている。日本も自分の国を守ることだけを考えるのではなく、国際社会に貢献することを考えなければならない。
それは元国連事務次長の明石康さんが言っているように、お金を出したり、平和を祈るだけでなく、平和を創るために一汗も二汗もかくということである。
www.yomiuri.co.jp/matome/sengo70/20150816-OYT8T50006.html (読売新聞・日本語記事・おすすめ)
また日本では、普通に「戦争させない」と叫んでいるが、世界はもはやグローバルである。戦争は、「したくなくてもさせられる」時代に入っている。70年前の国際社会と今は全然違う。
攻撃されるのを待っているだけでは、国は滅びるという危機感が、日本人の中にあまりにもないのに驚かされる。よその国の紛争に巻き込まれたくないという考え方も、当然だが、今の時代の国際社会では自己中心ととられるだろう。
今は国々との協力の中で戦争を防ぐ努力をしなければならない時代である。それでも戦争は防ぎきれない。時代は変わりつつあるということである。
将来的には、海外に自衛隊が出て行く機会や、難民を受け入れることも考えなければならないかもしれない。しかし、今の日本にその心構えや準備があるとはとても思えない。
将来に備え、日本はまず、急ピッチで子供たち、若者たちに祖国・日本に対する正しい愛国心と国際感覚、そして使える英語力を養わなければならないと焦りを感じる。
そのためにも、政府は、まず世界大戦で日本が、加害者としては何をしたと認識しているのか、それに対していったいどういう補償をしてきたのか。その相手国とその額、補償の内容を正確に国の内外に提示してもらいたいと思う。
それとともに、日本が戦争でどのような被害を受けたのかも伝え、バランスよく近代史を教えることが必要だ。それがあってはじめて、日本が加害国のレッテルから卒業し、堂々と国際社会に貢献できるようになるのではないだろうか。
知人に安保デモに熱心に参加しているクリスチャンがいるのですが…
気持ちは分からないではないのですが、その情熱を神様にもっと向けて欲しいなと思っています。
この世での幸せを維持しようとすると、社会運動的な行動に至ってしまうのかもしれませんね。
でも世の終わりには戦争や暴動の噂を聞く、と聖書にあるし、
この世界はいずれ滅びる運命である事も、
私達はこの世の旅人であり寄留者であるとも書いてあります。
自分の思う義で物事を判断するのではなく、神は私達に今のこの時代にあってどう働いて欲しと願っておられるのかを知る必要に、クリスチャン全体が迫られていると感じています。
また、この国だけでなく、アメリカのクリスチャン達の為にも祈ります…。