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シリア新暫定政権発足から1年:暗闇は続く
イラン情勢が厳しくなっているが、シリア情勢も相当険しい。
シリアでは、2024年12月に、アル・シャラア氏(元アルカイダ)が中心となって、前アサド政権を打倒し、暫定政権を立ち上げてから1年が経過した。
シャラア暫定大統領は、開かれたシリアを回復する方針を打ち出していることから、トランプ大統領が、シリアへの経済制裁を解除するなど、これを支援する形になっている。
しかし、シリア内部には、ISIS、シーア派関連の様々な組織、ヒズボラにハマス、ハマスと繋がるパレスチナ人のイスラム聖戦もいる。
前政権のアラウィー派も政権に反発する、ドルーズ族との対立、クルド人との対立もある。統一したシリアは、なかなか見えてこない。
暫定政権は、1月6日(火)からシリア第二の都市アレッポで、現時点では、事実上自治行政状態にあるクルド人を、政権の中に組み込むための交渉を試みていた。
しかし話はまとまらなかったため、シリア治安部隊と、クルド人が主体のシリア民主軍(SDF)が、3日間、戦闘になった。
この戦闘で、少なくとも21人が死亡。アレッポ住民15万5000人は、避難を余儀なくされた。
最終的には、10日(土)に一応の停戦となったが、その背後には、クルド人と対立するトルコが動いた可能性がある。トルコは、シリア暫定政権で、影響力を拡大する野望が身隠れしている。
イスラエルとシリア暫定政権の動き
イスラエルは、2024年のアサド政権打倒の混乱の際、ヘルモン山と、ゴラン高原の国境シリア側に進出し、治安維持の目的で、その地域を管理する状況を続けている。シリア領内への攻撃をすることもある。
シリアは撤退を要求しているが、これほどの混乱状態である。国境の治安を確立するため、イスラエルが、この地域から撤退するつもりはない。
しかし、シリアのシャラア暫定政権が、アメリカに接近する様子から、イスラエルでは、アブラハム合意のシリアが加わるとの期待も出ていた。
しかし、そうはならなかった。シリアは、基本的に、イスラエルを受け入れないイスラムのイデオロギーが土台になっているからである。
その後、両国の話し合いは途絶えていたが、1月6日(火)、パリで、2ヶ月ぶりに、代表団による話し合いが、2日間、行われた。仲介はアメリカである。
シリアは、イスラエル軍が、領内から撤退し、シリアの主権を回復することを求めている。イスラエルは、治安維持の保障が必要である。
両者は、安全保障協定についての話し合いを行った。今回はスタートであり、今後も継続する予定とのこと。
INSS事務局長の解説:見通しは終末の様相?
INSS事務局長で元IDF情報部長の退役少将タミール・ヘイマン氏は、イスラエルにとって、短期的な視点では、今のような暫定政権が、混乱の中で、シリアを収めている形の方が、自由に動きややすいかもしれないと語る。
しかし、長期的には、シリアに強力な政権がない状態が続けば、それを利用しようとする勢力や国が必ず入ってくるとヘイマン氏は予想する。まずは、イラン。トルコ、カタール。中国・・
ヘイマン氏は挙げなかったが、ロシアも考えられないだろうか。それらが、シリアと国境を接するイスラエルを攻撃してくる可能性も出てくる。
これを防ぐためには、シリアで強い政権が立ち上がり、イスラエルはその政権と繋がっていることが重要だとヘイマン氏は語る。また、その強い政権は、まずアメリカと、また欧州とも強い関係を持っていることが条件だとも強調している。
予期不能なトランプ大統領が世界から問題視され、欧州諸国との関係も冷え始めている昨今、果たしてそれが可能なのかどうかとも思わされるところである。
イスラエルを取り巻く情勢はイラン、またヒズボラ、ハマスだけに留まらない。問題は、中東全体、世界にも拡大している。確かに、これまでよりさらに、一歩進んで終末の様相に近づいてきたように思う。
