1)シリア政府軍:東アレッポの75%を制圧か
ロシアとシリア政府軍が、東アレッポへの総攻撃を開始してから2週間。BBCによると、これまでにアレッポの75%(ロシアは95%と主張)が、ロシアの支援を受けたシリア政府軍に奪回された。
同時に27万人はいるとみられるアレッポ住民の脱出が始まり、アル・ジャジーラによると、攻撃がやんでいるこの数日の間に7万人がシリア政府軍エリアへ脱出したという。
アラブ系メディア・アル・ジャジーラによると、現在、シリア軍とロシア軍はいったん攻撃を停止し、まだ残っている反政府勢力にアレッポから脱出せよと言っている。
ただし、ロシアが過激派と目するアル・ヌスラはイドリブ方面へ、それ以外の組織は別の方向へと指示されている。ロシアは、アル・ヌスラを反政府勢力から分離することをかねてから主張していた。
しかし、アル・ヌスラは、今年アルカイダの傘下から離脱してアル・シャムスと名を変え、他の穏健派反政府勢力に加わったとみられていおり、アメリカは実質、彼らを黙認しているとみられていた。アル・シャムスが反政府勢力を強くしていたからである。
つまり、アメリカとロシアはこの点においても対立していたのである。しかし、アレッポ情勢が人道的にも相当悲惨な事態になってきたことを受けて、アメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相は、ジュネーブで話し合いを続けている。
そのような中で、今回、アル・ヌスラと他の組織を分離するかのような指示が出されたということは、アメリカがロシアに対して譲歩したとも考えられる。
ただし、この申し出に対して、反政府勢力からの返事はまだない。
www.aljazeera.com/news/2016/12/aleppo-safe-passage-syrian-fighters-proposed-161211170351336.html
2)ISISがパルミラを再制圧
上記のようにアレッポが混乱しているすきに、ISISが、いったん撤退していた世界遺産パルミラをシリア政府軍から奪回し、11日、再度町に入ったもよう。ISISがシリア軍兵士を撃退しているもようである。
パルミラには重要な世界遺産があるが、アレッポと同様に、シリア軍やロシア軍が、ISISに対する激しい空爆を行えば、この遺産はいよいよ破壊されつくしてしまうだろう。少なくともここに市民は住んでいないのは不幸中の幸い。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4891183,00.html
それにしても、こんな愚かな殺戮と破壊がいったいいつなで続くのだろうか。シリア軍とロシア軍、また世界の連合軍を相手に互角に戦っているISISの力は想像を超えているといえる。
<石のひとりごと>
オリーブ山便りでは、これまでほとんど取り上げてこなかったが、イランとサウジアラビアが対立する舞台になっているイエメンの殺戮も相当なものである。
BBCによると、戦闘が激しくなった昨年3月から、今年9月末までに市民だけで10963人が死亡。このうち4014人は昨年3月から今年9月までに死亡している。総人口2700万人のうち、330万人が今も国内難民だという。
難民は、医薬品どころか食糧も底をつき、骨と皮だけになった乳幼児の写真が報じられている。中東は、まさに地獄の沙汰である。
www.bbc.com/news/world-middle-east-38220785
中東だけでなく、2017年は、世界もトランプ氏の登場、またヨーロッパ諸国でも来年、次々に新しいリーダーが誕生し、今後世界がどう動いていくのか、専門家でも予想できない状況になってきた。
聖書は、終わりの時の前兆について、次のように言っている。
・・・わたしを名のる者が大勢現れ、『わたしこそキリストだ』と言って、多くの人を惑わすことでしょう。また、戦争のことや、戦争のうわさを聞くでしょうが、気をつけて、あわてないようにしなさい。
これらは必ず起こることです。しかし終わりが来たのではありません。民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。
そのとき、人々は、あなたがた(聖書の神に従う者)を苦しいめに会わせ、殺します。またわたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。・・・(マタイの福音書24:3−14)
こうした状況は、私たちの周りで、確かに始まっているようである。
このような世界情勢の中、日本では今年の流行語に、「神ってる」「聖地巡礼(映画などで使われたロケ現場を訪ねること」など、神をまったく恐れていない、むしろバカにしているような言葉が流行語大賞になった。
加えて、「保育園落ちた。日本死ね。」までが賞を取っている。
宗教がらみで地獄の沙汰になっている中東、神という存在、また国が死んでしまう、国を失うということはどういうことなのかを、常日頃実感せずにはいられないイスラエルにいると、日本人の意識が、あまりにも世界の常識から外れている事に、いいようのない、ぞっとするほどの恐怖すら感じる。
このブログを読んでくださった方には、言わせていただく。日本で今年流行語大賞になったような言葉は、中東のみならず、おそらくは、世界のどの国に行っても、文字どころか口にものぼらないタブー用語である。
*英語にGodlyという言葉はあるが、いわゆる普通の人間の能力にこの言葉は使わない。