アサド大統領が提出した化学兵器のリストに基づき、OPCW(化学兵器禁止機構)がシリア入りし、10月7日から化学兵器の処理作業を開始している。
ケリー国務長官は、よいスタートが切れたとして、アサド大統領が国際社会の要請によく応じていることを評価するコメントを出した。
しかし、こうした国際社会の動きに対し、反政府勢力は、「アサド政権にシリア市民を殺す時間を与えているだけだ」として反発している。実際、処理作業が行われている周辺地域でも、戦闘が続けられており、危険な状態。
<解決の見えない内戦>
先日、以前EUで働いていたイギリス人の友人が、「シリア問題のすべてのことが何かおかしい。」と言っていた。化学兵器を返上したことで、アサド大統領自身の罪状は棚上げになっているからである。
アサド大統領は、サリンで自国民を1400人も死亡させた。アメリカは証拠をあげてアサド政権の犯行だと断定したのである。
それ以前にも、アサド大統領は、国を内戦においやり、自国民10万人以上を死亡させ、周辺諸国に210万人もの難民を出して、迷惑かけまくっている。その罪と責任の大きさは計り知れない。
それが、化学兵器を返上したことでうすまってしまったかのようになっている。反政府勢力やシリア難民が反発するのも理解できるのである。
しかし、だからといって、アサド大統領が失脚し、代わりに反政府勢力にいるアルカイダが台頭してくるのはもっと悪い。アサド大統領かアルカイダか。この2者以外の選択が今のところみつからないのである。だからアサド大統領を容易に排除できないのだ。
国際社会も、化学兵器だけが解決でないことはよくわかっている。国連によると、210万人もの難民を養う限界がもう目前だという。難民を餓死させるのか。ともかく一日も早くシリアの内戦を終結させなければならない。
ケリー国務長官らは11月には、新しい政府樹立をめざしたシリア平和会議をジュネーブで行うと行っているが、シリアで戦っている双方とも悪の限りをつくして、憎みきっているので、会議の実現はまだまったく見通しがたっていない。