シリアでは、アレッポとダマスカスでひっきりなしに爆音が聞こえ、激しい戦闘が続いている。ダマスカスでは、パレスチナ人難民キャンプが爆撃され、21人が死亡した。
反政府軍も本格的な武器で応戦しており、3日だけで死者は120人に上る。数ヶ月前からアメリカが、自由シリア軍(反政府勢力の一派)を軍事的に支援しているもよう。
<シリアがレバノン国境に地対空ミサイル配備>
戦闘が激しくなる中、3日、シリアがレバノンとの国境付近に、地対空ミサイルを新たに設営していることがわかった。
レバノン国境にミサイル基地があるということは、万が一ヒズボラとイスラエルが交戦状態に陥った場合、化学兵器を含むシリアの武器が簡単にヒズボラの手に渡ることを意味する。
この情報を伝えたのはヒズボラ関係の情報筋であったため、シリアとレバノン(ヒズボラ)の間になんらかの軍事的な合意があるのではないかと懸念されている。
イスラエルの国連大使は、国連総会において「世界はシリア、ヒズボラ、イラン三者協力の危険性に気づくべきだ」と訴えた。
<アナン特使辞任>
シリア問題の特使として尽力していたアナン元国連総長が、8月31日をもって働きから解かれることになった。シリア情勢が悪化の一途をたどり、もはや仲介ができる様相ではなくなってきたためである。
<国連総会による決議>
アナン氏辞任の翌日、国連では事務総会が開かれ、加盟193カ国が、殺戮続くシリアへの非難と、何の介入もできていない国連安保理への非難、また先月アラブ同盟が出した停戦案に関する決議を行った。
結果、賛成133、反対12、棄権31の圧倒的多数で可決。バン・キ・ムーン事務総長が、シリア政府と安保理に対する非難声明を出すとともに、シリアには、政権移行を強く訴えた。*安保理と違って、事務総会決議に実効力はない。
この決議に反対したのは、ロシア、中国、シリア、イラン、北朝鮮など。ロシアは、反政府勢力だけを支援するのは、一方的で和平につながらないとして、この総会決議を批判した。
<ロシアのアサド政権支援>
そのロシアだが、4日、アサド政権からモスクワに派遣された使節団の要請に応じ、シリアから原油を購入、代わりにガソリンなど石油製品をシリアに輸出することを決めた。実質シリアへの経済支援ということになる。シリアは、昨年、混乱が続く中で、ロシアから10億ドルにも及ぶ武器を購入している。ロシアとシリアの関係は深い。