11日金曜、シリア北東部に駐留している米軍報道官によると、米軍が撤退を開始した。しかし、現時点においては、軍用機材の撤収だけで、部隊自体はまだ撤退を開始していない。
この後の撤退に関するスケジュールは発表されていない。トランプ大統領は当初、30日以内の早急な撤退と言っていたが、イスラエルやクルド人はじめ様々な方向から、懸念が噴出したため、数ヶ月から半年かけてゆっくりとした撤退になるもようである。
<シリアでの米軍の働き:未完了>
アメリカ軍は、2014年にISを相当するために駐留を開始したが、最前線での戦闘には参加せず、クルド勢力やシリア民主軍など地元勢力の訓練を担当してきた。
しかし、現地米軍ダンフォード将軍が撤退発表の2週間前に語ったところによると、効果的にISと戦うには、3万5000から4万の軍が必要になると推測されるところ、米軍がこれまでに訓練できたのはこの20%に過ぎないという。
また、米軍駐留地域に拘束されているISの外国人戦闘員ら数百人の扱いも明らかでない。この数百人らに逃げられた場合、再び結束して危険な状況になることは大いに考えられる。外国から来たISの妻たちも祖国から追放され、帰国する道がない。
イラクのユーフラテス東側にいるアメリカ軍5200人は、今の所、撤退になる様子はない。しかし、最終的には撤退するとのトランプ大統領の発言なので、いつまた突然、撤退をはじめるかもわからない。
世界の懸念に対し、先週から、ボルトン大統領補佐官、ポンペイオ国務長官が、中東を歴訪し(以下に詳細)、アメリカは、IS掃討から離脱するのではなく、今後も相当に向けた努力は続け、掃討を完了すること、同盟のクルド人は保護すること、またシリア領内のイラン軍は、最後の一人まで追放するとの方針を強調している。
しかし、これがどう実現されるのかは、明確でない。現時点ではアメリカが、計画の全貌を明らかにしていないだけと思われるが、見えないところできっちりと計算して動いてくれていることを願うばかりである。
www.timesofisrael.com/us-starts-withdrawing-supplies-but-not-troops-from-syria/
<イスラエル:ダマスカス空港を攻撃か>
シリア国営放送によると11日夜11:15、イスラエル空軍機が、ダマスカス空港の軍用倉庫をミサイル攻撃。シリア軍は、そのほとんどを迎撃したが、8箇所に被害を受けたと報じた。負傷者はなしとのこと。
また同時に、ダマスカスから南部のアル・キスワのヒズボラのミサイル庫も攻撃されたと伝えられている。イスラエルの攻撃はガリラヤ方面と、レバノン空域からであったとシリア国営放送は伝えている。
イスラエルは、このような攻撃を12月25日にも行い、シリア軍兵士3人が死亡している。イスラエル軍高官によると、こうした、イラン、ヒズボラ関連の武器庫などへの攻撃は、過去2年で200回以上に上る。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5445287,00.html
<石のひとりごと>
イスラエルにとって、シリアからの米軍撤退は、大きな脅威である。アサド政権の背後にいるロシアとイランがトルコとともにイスラエルに立ち向かってくる可能性につながるからである。
しかし、イスラエルは、これまでアメリカの存在に感謝しつつも、100%依存していたわけではない。したがって、このような日が来ても、あわてることはないし、トランプ大統領をうらむこともない。
イスラエルは、最終的に、自分を守るのは自分しかない、ということをホロコーストの非常な痛みの中で学んだ。それぞれの国は、それぞれの国益でしか動かないことが当然なのである。
日本にしても、アメリカが、いつまでも日本を中国や北朝鮮から守ってくれると考えてはならないということである。