シドニーのハヌカを祝うユダヤ人イベントで銃撃テロ15人死亡:テロリストはイラン・IS関連か 2025.12.15

Screenshot from a video showing men shooting at Sydney’s Bondi Beach on December 14, 2025. The deadly terror shooting targeted a Jewish event. (X used in accordance with Clause 27a of the Copyright Law)

シドニーのハヌカ1日目イベントで銃撃テロ:15人死亡

イスラエルと世界のユダヤ人たちは、12月14日(日)日没から8日間、毎日ろうそくを灯すハヌカの祝いを行っている。

People and emergency workers gather at the location of a deadly terror shooting at a Jewish event at Bondi Beach in Sydney, Australia, December 14, 2025. (AP/Mark Baker)

その第一日目、14日(日)午後、オーストラリアの首都、シドニーのボンダイ・ビーチでは、「海辺のハヌカ」と呼ばれるハヌカの1日目のイベント(超正統派ハバッド派主催)が行われ、1000人以上が参加していた。

そのユダヤ人たちに向かって、テロリスト2人が銃撃を開始した。銃撃は10分続き、銃声は50発との情報もある。

これにより、銃撃犯1人を含む15人が死亡。38人が負傷。27人が今もまだ病院におり、6人は重傷である。

人々が、悲鳴を上げながら逃げる様子がビデオに残されている。恐怖の中、「お母さん、お母さん」と言うヘブライ語も聞こえている。(以下のクリップではない)

オーストラリアでは、ここ30十年で、最悪のユダヤ人暴力事件であり、10月7日以降、イスラエルの外で発生した反ユダヤ主義による虐殺では最悪規模であった。

イスラエル国家安全保障会議は、こうした事件が発生すると、別のテロリストたちが触発され、同様の事件を起こす可能性が高まると警告を発している。

イスラエル政府は、国外にいるイスラエル人たちに対し、無防備な公共イベントには参加しないようにと警告を出した。

オーストラリア政府は、現在、「シェルター作戦」を立ち上げ、ユダヤ人関係機関に、警察官300人を派遣して、警備にあたらせている。

オーストラリアでは、最近、大規模な反イスラエルデモが発生しており、ユダヤ人に対するテロが懸念されるとして、イスラエルからは、オーストラリア政府に取り締まりの強化を要請していたという。

しかし、現場では、反シオニズムから反イスラエル主義の沸騰が始まっており、オーストラリアにいるユダヤ人たちからすると、オーストラリア政府は何もしていないとみられていた。

(ABIR SULTAN / POOL / AFP)
(Hilary Wardhaugh / AFP)

事件後、ネタニヤフ首相は、オーストラリア政府は何もしてこなかったと、強い非難を表明した。

なお、これに先立ち、オーストラリア政府は、パレスチナ国家設立に賛成する声明を表明したことから、ネタニヤフ首相が、非難声明を出す中での今回の事件であった。

www.timesofisrael.com/shooters-in-sydney-attack-ided-as-father-and-son-isis-flag-said-found-in-their-car/

www.ynetnews.com/article/hyer00m6gwx#autoplay

銃撃犯はIS関係の父息子:背後にイランの影?

Sydney’s Bondi Beach on December 14, 2025 (Screen grab/Sky News)

テロを実行した2人は、ナヴィード・アクラム容疑者(24)と、その父親サジド(50)と特定されている。

サジドは、現場で警察に射殺されたが、ナヴィード容疑者は重傷で病院に搬送されている。

父親のサジドは、1998年にオーストラリアに来て、2001年にオーストラリア人(または永住権保持者)のパートナーとして、在住許可をもらっていた人物だった。

ナヴィード・アクラム容疑者は、2019年に、ISとの関わりで、捜査を受けていた。また、オーストラリアTV、ABCの情報によると、父息子は、ISに忠誠を誓っていたとのこと。銃撃現場の近くにあった車には、ISの旗があった他、即席の爆破装置も発見されていた。

www.timesofisrael.com/shooters-in-sydney-attack-ided-as-father-and-son-isis-flag-said-found-in-their-car/

問題はこの背後に、イランの存在が疑われる点である。イスラエルの諜報機関モサドは、ちょうど1月前、オーストラリア情報機関に対し、イランの支持下にあるテロの“インフラ”が、ユダヤ人を標的としたテロを計画していると伝えていた。

これを受けて、オーストラリア政府は、その“インフラ”はすべて撤去したと表明していた。今回のテロが、この“インフラ”と関連があるかどうか、オーストラリア当局は捜査しているとのこと。

モサドによると、この“インフラ”は、IRGC(イラン革命防衛隊)クッズ部隊の上級司令官サルダル・アマルが率いている。この部隊は、2023年10月7日以降、世界中でユダヤ人やイスラエル人を対象としたテロを計画しているとみられている。

実際、オーストラリアでは、2024年夏に、メルボルンのシナゴーグと、シドニーのコシェルレストランへの放火事件が発生していた。この時、オーストラリア政府は、IRGCをテロ組織に指定。在オーストラリア・イラン大使を追放していた。

テロリストと戦ったイスラム教徒男性:ネタニヤフ首相も称賛

一方、今回のテロ事件では、一人の男性が、銃撃犯に果敢に飛びかかる様子が記録されていた。男性は犯人と言い合いになる中、腕を2発撃たれて、病院へ搬送されていた。

この男性は後で、イスラム教徒のアフマド・アル・アフマドさん(43)と判明。ネタニヤフ首相は、ユダヤ人を助けようとしたアフマドさんを英雄の頂点と敬意を表している。オーストラリアのアルバネーゼ首相も「同胞オーストラリア人を助けようとした」ヒーローと称賛している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。