サイレンで始まった2024:長期戦に備えイスラエル軍5部隊帰還・ガザ周辺住民帰宅準備開始へ 2024.1.2

IDF

*令和6年能登半島地震での地震・津波の大災害について、早く地震が落ち着くように。瓦礫の中で被災している方々の早期救出、被災者の健康維持、物資搬入とこれからのこと、全てに関わっておられる自治体と政府、自衛隊、消防、警察、医療関係者、皆様の動きを覚えてお祈りいたします。

サイレンで始まった2024

1月1日の午前0時、まさに2024年が始まろうとするころ、イスラエル中央部では、南北国境から飛来するロケット弾で、広範囲にサイレンが鳴り響いた。被害は報告されていない。

しかし、ガザからのロケット弾は、ここしばらくの間に、かなり減少している。IDFによると、12月初頭は、1日平均75発のロケット弾が飛来していたが、12月22―27日のデータでは、1日平均14発まで減少していた。

これは、地上軍が、ハマスの武器をかなり取り押さえた成果になっているとみられている。貢献したのは、軍で働く犬たちだという。IDFは、その嗅覚を生かして、武器やテロリストの位置を知らせる軍用犬の様子を発表した。兵士から「進め、前に進め」と言われて前進する犬たちが健気。

一定の効果はあったようだが、イスラエル軍は今も地上戦を継続しており、多数の武器を摘発し続けている。その現場は、相変わらず、幼稚園などの民間施設であり、IDFは時々その現場の様子をアップしている。

当然、ハマスと衝突になり、ハマスの戦闘員が多数死亡しているとのこと。

この時点でのガザの死者数は、2万2000人(IDFによるとハマス8500人含む)で、戦死したイスラエル兵は173人。このうち29人は、友軍による誤射や、事故によって亡くなったことが分かっている。

イスラエル予備役の5部隊帰還へ

戦闘が始まって3か月近くになる今、ガザ北部では、かなりの領域でイスラエル軍が、支配力を持ち始めているものの、南部、ハン・ユニスを中心とする戦闘については、2024年いっぱい掛かると、長期化する見通しとなっている。

このため、イスラエル軍は新たな戦闘体制を整えるとして、主に予備役で市民から徴兵した兵士からなる5部隊を、一時撤退させ、国内に戻すこととした。

この背景にあるのは、国内産業の人手不足や、学生の学業が停止していることなどへの配慮である。しかし、一方で、あまりの激戦は控えよと、アメリカから圧力が掛かったとの見方もある。

とはいえ、戦闘が減ったわけではなく、特に南部のハン・ユニス周辺において、イスラエル軍は、地上戦を拡大。人質の解放とハマスを殲滅して、イスラエル南部の安全を回復させる作戦に変わりはない。

www.timesofisrael.com/as-2024-begins-idf-releases-5-brigades-from-gaza-but-says-fighting-likely-all-year/

ガザ周辺イスラエル人住民の帰宅準備開始

イスラエル軍は、ガザから4キロ以上離れている地域については、その住民が帰宅することを許可することとなった。現在、避難しているのは、ガザ国境から7キロ以内に住む人々なので、その一部ということになる。

10月7日のハマスの襲撃では、テロリストは、ガザから最大22キロ離れたオファキムにまで達していたが、犯罪のほとんどは、ガザ国境から3―4キロ以内で発生していた。これにより、この地域の1200人が残虐に殺害され、240人が人質として連れて行かれた。

以後、生き残った住民たちは、エイラットや、様々な地域のホテルやキブツのゲストハウスなどで生活している。費用は国持ちである。

被災した人々は心に大きな傷を受けており、実際にどのぐらいの人々が帰宅できるかは不明である。

ガザ住民の様子:ガザへ新生児用のワクチン搬入

An elderly woman looks on as she sits with children at a makeshift camp in an area of the European Hospital in Khan Younis in the southern Gaza Strip on December 31, 2023. (AFP)

ガザ地区200万人以上の85%が、今劣悪な難民キャンプエリアで生活している。避難場所にいる人々の様子は変わらず悲惨である。

ここしばらく人道支援物資に関するニュースは上がっていないが、水や食料の不足は続いていると思われる。

寒い上に雨季でもあるガザで、様々な感染症が拡大している。

このため、1日、児童用のポリオや、麻疹などのワクチンが人道支援の一環として、エジプト経由、ラファ検問所から届けられた。

ラマラの保健省(パレスチナ自治政府)によると、こうしたワクチンを受けるべき新生児は、現時点でガザに6万人いるとのこと。今回、搬入されたワクチンの量は、今後8―14か月分はあるとのこと。

www.timesofisrael.com/vaccines-for-childrens-diseases-begin-flowing-into-gaza-as-infection-rates-soar/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。