ガンツ氏がネタニヤフ首相に決断期限を発表:テルアビブでは反政府デモと警察が衝突 2024.5.20

Tel Aviv, May 18, 2024. (Pro-Democracy Protest Movement/Aviv Atlas)

戦闘が長引く中、多くの戦死者、また人質も遺体で戻ってくるという中、イスラエルでは国内からも、ネタニヤフ首相の政策に疑問の声が大きくなってきつつある。

政府内からの反発:ガンツ氏がネタニヤフ首相に最後通告

Benny Gantz credit: Marc Israel Sellem, The Jerusalem Post

先週、ギャラント防衛相が、ネタニヤフ首相の戦後ガザのビジョンは非現実的だと公に発表して物議となったが、続いて戦時内閣で野党のガンツ氏が、ネタニヤフ首相に、目標を修正する決断するよう要求。その期限を6月8日とし、もしそうしないなら、戦時内閣から離脱すると最後通告した。

ギャラント防衛相とガンツ氏はともに中道左派である。ネタニヤフ首相は、首相であり続けるために、極右政治家や右派宗教シオニスト政治家たちと手を組んで、国内外の意見を無視して強硬に戦争を続け、国に大きな災難をもたらしていると訴えているのである。

ギャラント氏とガンツ氏がそろって、反旗を翻した形である。しかし、ガンツ氏は確かに国民の間では人気はあるが、議席はわずか8議席なので、ガンツ氏の政党が離脱しても、ネタニヤフ政権そののもに大きな影響はないのではとも予想されている。

こうした政府内からの分裂の動きが国際社会に報じられていることから、右派勢からは、「左派は裏切り者だ」と言った反発が出ている。

テルアビブのデモで警察と衝突:人質広場では人質解放の国際的集会

May 18, 2024. (Pro-Democracy Protest Movement/Tanya Zion-Waldoks)

今週も毎週行われている人質解放を政府に訴える数千人のデモが行われ、テルアビブとエルサレムを結ぶ高速道路では、焚き火をするなどの通行を遮断するデモが行われた。警察との衝突で12人が逮捕された。

このデモ中、10月7日に家族6人を殺されたカディ・ケデムさんが、「左派は裏切り者だ」というプラカードを持った右派活動家らに殴られる事態になった。

殴った2人を警察は逮捕したが、ラピード氏ら左派政治家からは、「容認できない」といった声明が出た。以下は殴られて血を出しているケデムさん。

また人質広場では、人質解放にむけた国際集会が行われた。これまでにユーロビジョンで優勝した、ネタ・バルジライさんや、エデン・ゴランさんが、ユーロビジョンでは却下された「オクトーバーレイン」を歌った。

海外からは、アメリカからヒラリークリントン氏が、人質は解放されるべきだと語った。また、自国民(イスラエルとの二重国籍)が人質になっているアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリアの駐イスラエル大使たちも、それぞれスピーチを行った。

www.timesofisrael.com/tel-aviv-rally-urges-global-backing-for-hostages-clashes-at-nearby-anti-govt-protest/

なお、本日月曜には、エルサレムのクネセットや全国で、デモが計画されている。

石のひとりごと

国外からだけでなく、国民の間からも感情的な訴えが続く毎日。これほど嫌われても、まだ右派的政策を続けているというネタニヤフ首相の心情はいかにと思わされる。

その様子を見れば、ただ政権に留まるためだけに、極右政治家たちの言うことを聞いているというのは、違うのではないかと思う。

パレスチナ自治政府をガザに受け入れるしかないという、左派や国際社会からの圧力に妥協しかないという、圧力にネタニヤフ首相が、負けないでたち続けているのは、彼が本当にそれが、イスラエルの将来のためにならないと考えているからだと思う。

ただ状況はだんだん、ネタニヤフ首相に苦しい状況になりつつあるようにみえる。イスラエルにとって何が最善なのか。その最善にのみ主が道を開かれるようにと祈るしかない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。