ガザ地区のエネルギー相によると、19日、イスラエルは、アッバス議長の要請に基づき、ガザ地区への電力供給の削減を開始した。一度に削減するのではなく、段階を追って少しづつ削減している。
人口200万人のガザ地区が1日に必要とするのは400メガワットだが、最近の供給はその半分の200メガワットになっていた。そのうちの120メガワットがイスラエルからであった。
このうちイスラエルは42メガワットまでを削減する予定で、昨日まず8メガワット、本日火曜、さらに8メガワット削減した。これにより、ガザ市民に供給される電力は1日2-3時間になっているとみられる。
ガザ地区も、今はラマダンで、日没後に家族が集まって祝いするため、特に電気が必要な時期。市民は、懐中電灯やろうそく、余裕のある人は発電機を購入するなどしてなんとかしのいでいるもようである。
問題はやはり下水。すでに4月末から処理されていない下水が海水に垂れ流されていたが、電気の削減で、その量はさらに増えている。いずれはガザの下水がイスラエルのビーチに到達したり、下水道を汚染すると懸念されている。
<イスラエルでは論議>
右派リーバーマン防衛相は、「ハマスはガザ市民から集めた税金を地下トンネルなどに費やしてしまった。ガザ市民は、今、ハマスに搾取されていたことをその身で知ったのだ。」と言った。
すると、中道・未来がある党ラピード党主は、「電力不足でもしガザから伝染病でも発生したら、結局イスラエルに被害が及ぶ。市民生活を犠牲にしないで、ハマスに圧力をかける方法があるはずだ」と反論。
「ただ単に電力削減をするのではなく、イスラエルにとって有利な取引をハマスとかわすことも可能だったのではないか。」という意見もある。左派、人権保護派は、当然、これ以上の削減は実施しないよう、求めている。
<パレスチナ自治政府:ハマスに解散を要求>
イスラエルでの論議をよそに、電力削減が始まった月曜、パレスチナ自治政府は、ハマスに対し、団体を解散して、ガザ地区の主権をパレスチナ自治政府に戻すよう、要求する声明を出した。
自治政府は、「ハマスは、違法な税金を市民から徴収し、パレスチナ自治政府が送った薬品を横領、治療に際し、さらに税金を上乗せしている。また、海水無塩化工場設立のプロジェクトを断り、地方選挙を妨害するなど、ガザ市民に苦難を与えている。」と非難した。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/231288
<ガザとまた戦争になるか?>
イスラエルが懸念することは、電力削減で、ガザでの生活が苦しくなり、戦争に発展していくことである。国境付近ではすでにガザの若者とイスラエル軍の衝突が散発している。
これについて、リーバーマン防衛相は、「イスラエルはガザとの戦争は望まないし、もし戦争になっても、ガザ地区を征服するつもりもない。ただ次回戦争になったとしらら、イスラエルは、ガザへ入り、テロ拠点を全て破壊したのち、出てくることになる。」と語った。
www.timesofisrael.com/liberman-israel-has-no-interest-in-conquering-gaza-in-next-war/
一方、ハマスも、「こちらから戦争をしかけることはない。」と戦争は望まない姿勢を表明した。しかし、数日前には、「電力の削減は、”爆発”になる可能性がある。」と警告しており、ハマス主導でない暴力行為については、責任は持てぬ、というようにも聞こえる。