ガザ情勢:24時間で45カ所空爆:人道支援物資搬入の問題 :国境にいる野犬問題 2025.4.10

People stand outside their tent set up on the rubble of a destroyed building at the Jabalia camp for displaced Palestinians in the northern Gaza Strip on April 8, 2025. (Bashar TALEB / AFP)

ガザで24時間に45箇所空爆

published by the IDF on April 8, 2025. (Israel Defense Forces)

ガザではイスラエルによる空軍陸軍による攻撃が続いている。4月9日(水)、イスラエルは、ガザ全域で、地上軍の攻撃と並行して、武器製造施設、武器庫、ロケット発射地、テロ組織拠点など、24時間で45箇所に激しい空爆を実施した。

これにより、ガザ市東部シャジャイヤでは、4階建アパートが崩落。少なくとも29人が死亡した。

イスラエルによると、シャジャイヤにハマスなどテロ組織の上級司令官がいたため、避難民を移動させるなどの措置も講じた上で、攻撃が行われていた。

またガザではこの日、他地域でも9人の死亡が確認されており、この日だけで、38人が死亡していた。これにより、3月18日にイスラエルが攻撃を再開させてからのガザでの死者は、1482人。2023年10月7日以降では、5万846人が死亡したとガザ保健省は主張している。

イスラエルは今、ガザ南部、エジプトとの国境、ラファを制覇するとともに、モラグ回廊を設営して、ラファとハンユニスを切断する。

国境の緩衝地帯の拡大も図っており、ガザの土地の20%に、イスラエルの監視が入ることになる。

地下トンネルの破壊については、700キロ以上はあるとみられているが、これまでに破壊したのは、25%と推測されている。これを全部破壊するには、ガザ避難民を総移住させて、一気に爆破するしかないようである。

人質については、どこにいるのかは情報がない。反ハマスデモをしていた人々が、人質を出すこともなく、今に至っている。

www.timesofisrael.com/idf-pounds-gaza-targets-with-one-strike-said-to-kill-at-least-29/

www.jpost.com/breaking-news/article-849430

ガザ人道支援物資搬入再開について:IDFと政府の不一致

イスラエルは3月1日から、ガザへの人道支援物資搬入をすべて停止している。イスラエルは、ガザには十分な食料はすでに搬入されており、飢える人がいるのは、ハマスが高額でそれを売っているからだと言っている。

Times of Israelが、ガザ市民から聞いたところによると、数週間前の停戦中、小麦粉一袋は50シェケル(2000円)だったが、戦闘が再開になり、物資の搬入が止まった今は、一袋600シェケル(2万4000円)だと言う。買えない人の方が多いだろう。

しかし、国際社会は、何はともあれ、支援物資搬入を差し止めることは、国際法違反だと問題視している。このため、イスラエル軍は、食糧は十分あるものの、搬入を停止してから40-50日になることと、国際法違反は避けなければないとして、7日(月)、数週間以内に支援物資搬入を再開すると発表した。

すると、ネタニヤフ首相府は、直ちに、これを否定。イスラエルはこれからも、ハマスが人質を解放するよう、国際法の範疇で、圧力をかけ続けると発表した。

これを受けて、イスラエル軍は、すべては政府の指示で行っているとして、イスラエルが“ハマスに”何かを供給することはないと表明した。しかし、政府が搬入の全面的停止を継続すると言っているのとは、微妙に違っていると指摘されている。

実際のところ、ガザで食糧供給を担当しているWFP(世界食糧機構)によると、現在、暖かい食事は提供できているが、倉庫の食糧からすると、あと2週間持たないだろうと言っている。また、その支援先のパン屋は、小麦粉と燃料も不足していると報告している。

イスラエル軍は今、ハマスに到達しないで、避難民にのみ物資が到達する方法を模索しているとのこと。

www.timesofisrael.com/despite-idf-and-pmo-denials-israeli-official-confirms-plan-to-resume-gaza-aid/

ガザからイスラエル国境へ溢れ出てくる野良犬の問題

ガザ国境付近では、2023年10月に戦争が始まってから、野犬の群れがガザからイスラエルに溢れ出てきて問題になっていた。その数、1000頭とも言われてきた。

犬とはいえ、野犬なので、危険であるが、政府はこれまで、有効な対策を講じてこなかったと言う。7日(月)国会では、この件が論議された。

www.timesofisrael.com/feral-dogs-from-gaza-enter-israel-compounding-nature-authoritys-war-woes/

イスラエルは愛犬の国なので、そのまま殺すことは許されない。これまで保護した飼い主とのマッチングをしているが、ただ、今のところ成立して飼い主が見つかるケースは20%ぐらいとのこと。

ガザ溢れてくる危険な犬は安楽死させるしかないが、それ以外は、避妊手術をした上で、犬の保護施設をつくってそこで保護する。愛犬保護関係者たちが、その費用を計上するよう要請したとのこと。

www.ynetnews.com/environment/article/bk54s11za1x

石のひとりごと

ガザ地区はどんどん地獄状態に向かっている。そこから出てくる野犬に、イスラエルは手をこまねいているという。なんとも地獄を思わされる。

破壊された瓦礫の上に傾いたテントを立てているパレスチナ人たち、崩壊した建物の前で呆然と座っている男性の顔・・・もうどうでもいいから、ハマスに早く降参して、と言いたい。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。