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10日土曜日早朝、大勢が避難しているガザ市の学校に、イスラエルの戦闘機が発射したミサイル2発、ドローンからの一発と計3発のロケット弾が着弾し、ガザ避難民100人以上が死亡したというニュースが、世界中を駆け巡った。
血みどろの現場の様子が伝えられ、EU、トルコはじめ、世界中からイスラエルへの厳しい非難声明が出ている。
ガザ市学校攻撃の実態:学校を拠点にするハマスとイスラム聖戦
イスラエル軍によると、この学校には、ハマスとイスラム聖戦の本部が置かれていた。イスラエル軍は、今回の攻撃で死亡した、両テロ組織指導者含む戦闘員19人の写真と名前を発表した。
このように、イスラエルは、学校を攻撃したことは認めている。しかし、死者数については、ハマスが発表している数値は誇張であり、認められないと言っている。
実際、ハマスは、最初100人以上死亡と言っていたが、その後、90人と数値を減少させている。また病院で確認された遺体は70人とその数はさらに少ない可能性もある。
この学校に限らず、最近、ガザの学校が標的となる作戦が続いており、もう10校が攻撃を受けたと、国際社会ではイスラエルへの非難が高まっている。
イスラエルによると、イスラエルが地下トンネルをどんどん摘発しているので、ハマスなど戦闘員たちはもはや地下で過ごしにくくなっており、地上の学校や病院など、避難民のいるところに拠点を置くようになっているという。
イスラエル軍は、市民を巻き添えにしないよう、できる限りの対策(詳細な情報や焦点のあたった精密兵器の使用など)をとっていると強調しているが、巻き添えを完全に避けることは不可能なのである。
以下はこの現状を訴えるIDFのハガリ報道官
しかし、だからといって、イスラエルが自国民を殺そうとするテロ組織をそのままにすることもできない。
先週、イスラエル軍は、ハンユニスの避難民に、西方向のアルマワシ人道支援エリアに避難するよう指示を出した。まもなくハンユニスでも激しい攻撃が始まると予想されている。
来週15日の人質解放・停戦交渉への影響は?
ガザの学校での大規模な戦闘を受けて、それでも解決に向かわせると期待されているハマスとイスラエルの交渉に大きな影を落としたといわれている。
ガザでの紛争からイランが登場する事態になっていることから、先週、イスラエルとハマスの交渉の仲介者である、アメリカ、エジプト、カタールが、“ファイナル”と呼ぶ、人質解放と停戦に向けた最終交渉を行うよう、両者に突きつけた。
イスラエルはこれに応じると返答。来週交渉団を開催地(カイロかドーハ)に派遣すると発表した。
一方、ハマスは、アメリカなどの要請に、遅れて返事を出しただけでなく、最初に解放されるパレスチナ人テロリストの中に、インティファーダを指揮したバルグーティ(5回終身刑の超極悪テロ犯)を含めるよう、新たな条件を出したとの情報がある。
これをイスラエルが受け入れることは、まずないだろう。だいたい、これまで交渉を担当してきたハニエの後継者は、あのシンワルである。交渉でなんらかの前進があるとは、どうにも考えにくい様相。
イスラエルも交渉団を送るとはいいながら、実際には、交渉に応じるとは、思えない動きをしている。すなわち、イランとヒズボラがいつ攻撃してくるかわからない中、今のうちにできるだけハマスを弱体化しようと、攻撃のレベルとピッチもあげているのである。ガザだけでなく、西岸地区とレバノンでもハマス司令官の暗殺が相次いでいる。
アメリカはまだ、どこか、お互いが合意できる譲歩を目指す形の、西側資本主義形式の交渉を思い描いているかもしれない。
しかし、中東では、明らかに相手より強いと証明した状態にしてから、交渉に向かわないと、より有利な結果は得られない、というのが常識である。15日の交渉がどうなっていくのか、まだ先は全く見えていないといえる。
こうした中、イスラエル国内では、10日、毎週恒例の人質解放を訴えるデモが、テルアビブ、エルサレム、ハイファ、ベエルシェバなど全国の都市で行われた。テルアビブでは参加者は数千人と言われている。デモ隊は、交渉に熱心でないとみられるネタニヤフ首相に激しい反発を表明している。
ガザ無法地帯:ガザ市民がハマスに反発するか
ガザ地区は、ほぼ全土が戦闘域になっている。戦闘そのものが危険というよりは、ハマスやイスラム聖戦の部隊がギャング化しており、支援物資の略奪だけでなく、銀行も襲撃して、金を奪う犯罪行為も横行している。
ハマスの支配力が著しく低下しているということである。
現在、南部、アルマワシの人道保護エリアには、ガザ住民230万人中190万人と大部分の市民が避難している。
今さらに、イスラエル軍の警告で、ハンユニスの避難民たちが、アルマワシに移動しているということである。
ガザの避難民の状態は、悲惨を通り越している。イスラエルのメディアでは、ガザをこんな状態にしたハマスに怒りをぶつける人々が出てくるのではないかと期待する記事もある。
www.jpost.com/israel-hamas-war/article-814117
石のひとりごと
今回の攻撃された現場を見ると地面が血まみれであり、正確な数には問題があるとしても、かなり大勢が死んだことは間違いない。
日本では、昨日、「イスラエルがガザの学校を攻撃して100人以上が死亡した」という報じ、そこから先の報道はない。だれもが、イスラエルが学校にいた避難民を100人以上殺したというイメージで終わっているだろう。
しかし、ここでイスラエルだけを非難し、イスラエルに手を引くように言うのは片手落ちどころか、全く的外れである。ハマスが避難民の間に危険な武器とともに拠点を置いていたことこそ、非難すべきである。
もしハマスが本当にガザ市民を守る組織なら、イスラエルに攻撃される危険性がある拠点を、学校の避難民の間に置くはずはない。イスラム主義に基づき、イデオロギーのために死ぬことが殉教であり栄誉あることと考えているので、ガザ市民が死ぬことを防ぐ思いは一切ないのである。
要するに、ガザ市民のことを考えていないのは、イスラエルではなく、ハマスの方である。世界は、ハマスが、イスラエル人の人質を戻し、直ちに戦闘を止めるよう、圧力をかけることをするべきだが、世界は今でもまだ、その方向には向いていない。
今、イスラエルが、全く意図しない中で、犠牲者が出てしまっていること、攻撃の時に犠牲者が出ないようとりなすとともに、シンワルとハマスが、できるだけ早く出てきて、逮捕させてくださるように。
超悲惨な中にいるガザの避難民の人々、子供たちや家族を失った人も大勢いいる。ガザ市民がそろそろハマスに反発してもいいころではないかとの見方もある。彼らが立ち上がり、ハマスを自ら追い出すことができれば最善であるが、彼らにそんな力があるだろうか。
ガザに息子たちを送っているイスラエル人たち、また大変な苦しみを通っているガザ市民を苦しめている、悪い霊的な背景に立ち向かう祈りに迫られる思いがしている。