ガザ市より移動した避難民は100万人中7-8万人のみ:ガザ市民の限界の声 2025.9.4

ガザ市のテント村 Palestinians walk through a makeshift tent camp for displaced people near the Gaza City port, Monday, Sept. 1, 2025. (AP/Jehad Alshrafi)

ガザ市からの避難民100万人中まだ7-8万人

ABC News

イスラエル軍は今月中旬に、ガザ市に突入を開始すると宣言し、市民には南部への避難を警告している。

しかし、ガザ市住民100万人のうち、避難したのは先週末の時点で1万人、それから2-3日の間に、大勢が移動したもようで、これまでに移動したのは、7-8万人と、まだほんの一部に留まっている。

1)2年間の移動続きで疲れ切っている

今ガザ市にいる市民の多くは、2023年戦争の初期に主に南部へ避難した人々である。居残ったのは25-30万人で、65万人は、その後、戦闘が落ち着いた時に戻ってきた人々である。

この人々は、避難していた間にも何度も移動を余儀なくされ、もはや疲れ切っており、戦争の恐怖に怯えながらももう避難はしないと言っている人もいる。

evacuating southbound from Gaza City on September 2, 2025 (Eyad BABA / AFP)

Times of Israelは、今、ガザ市にいる人々の多くが、子どもたちや高齢者、負傷している人を抱えており、移動に伴う資金(歩いて行けないのでタクシーなどが必要)もないと伝えている。

毎日食糧を確保するのがせいいっぱいの人々である。

また南部に移動しても、テントを貼る場所があるのかないかもわからない。

移動したところで、途中で死ぬケースもあり、どこにいっても同じだという思いもある。しかし、イスラエル軍の攻撃を目前にして、恐怖に怯えているという。

しかし、イスラエルとしては、できるだけ市民を巻き込みたくないので、避難を呼びかけながら、南部避難地域の改善も行なっている。

人道地域として指定している南部海岸沿いのアル・マワシには、現在60万人ほどがテント生活をしているが、200万人が滞在できるよう、水道などのインフラ整備と、食糧配給、医療設備の修理、拡大が進められている。

www.timesofisrael.com/despite-looming-israeli-offensive-many-in-gaza-city-insist-they-wont-flee-again/

2)ハマスが妨害している

9月3日(水)、イスラエル軍のCOGAT(政府活動調整部)が、住民男性との会話の中で「ハマスが待ち伏せしている」と言っている声の録音とともに、ハマスが市民の移動を妨害していると訴えた。

録音の男性は明確に、妨害しているのはハマスだと言っている。ハマスは西の海岸沿いなど幹線道路を塞いでいるとのこと。このため、人々は非常に恐れており、南部へ行くために、指定された以外の道を探そうとする動きもあるという。

ハマスは、市民たちに、南部へ行けというイスラエル軍の警告は罠で、南部は非常に危険だといった情報を流しているとの情報もある。

www.timesofisrael.com/israel-says-hamas-preventing-gaza-city-evacuation-but-70000-have-left-anyway/

www.jpost.com/israel-news/defense-news/article-866195

石のひとりごと

ガザ市民の置かれている立場の悲惨は、想像を絶する。よく2年生き延びたというほどである。

世界はどういうわけか、イスラエルだけを責めるが、もともとこういう事態を招いたのは、テロ組織であるハマスであり、終わらせないでいるのもまた、ハマスである。

ハマスが来る前は、ガザの人々とイスラエル人は、完璧ではないにしてもそれなりに隣人としてつきあっていた。

筆者はそのころのガザに行ったことがあるので、言わせてもらうことである。

Free Palestine と叫ぶ人は、Free Palestine from Hamasと叫ぶべきだと思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。