目次
ガザでは、南部から再び北部にまで戦闘が拡大しており、いよいよガザ市民への人道支援物資が届かなくなってきた。
ガザ住民の25%が、餓死の危険性に直面していると言われる中、国際社会は、食糧や薬品を空から落とす作戦を開始。イスラエルもこれに参加していた。
また、イスラエルは、地上からトラックでの物資搬入も進めているが、29日の大規模なコンボイについては、大失敗。大群衆が略奪に来て、将棋倒しとなり、これまでに110人以上が死亡。
世界からは、イスラエルがパレスチナ人を大量虐殺しようとしたと非難が殺到している。
ガザ市民25%が餓死の危機:ガザへ人道支援物資を空から落下させるイスラエルと国際社会
ガザでは、230万人の住民の80%が家を失い、地域内難民となっている。UNRWAの機能不全が続く中、WFAなど別の国連組織が人道支援物資を試みているが、戦闘と混乱で安全が損なわれており、国連職員が十分に活動できなくなっている。
食糧が届かない地域もあり、国連は、ガザ住民のおおむね25%が餓死の危険性に直面していると発表した。すでに幼い子供たち7人が餓死したとの報道もある。
このため、イスラエルを含む、ヨルダン、フランス、UAEなどの国際社会は、ガザの海岸、ヨルダンの野戦病院など17ヶ所で、食糧や薬品を空から落下させて補給する作戦をはじめていた。
これには、アメリカも参入を検討しているところである。以下は、空輸される物資に集まるガザの人々の様子。
日本は、UNRWAではない、国連組織WFP世界食糧計画や、ユニセフ(国際児童基金)などを通じて、48億円のガザ支援を再開すると発表している。
イスラエルは、地上からの物資搬入も行っていた。ケレン・ショムロン検問所での検査を終えたトラックは、先週も50台がガザへ搬入され、配布は、“民間業者”が担っていると、イスラエルは言っていた。以下は、28日にガザ市に向かうコンボイの様子。イスラエルは、ガザに搬入するトラックの数に制限はつけないと強調していた。
Overnight, (Feb 28.) A convoy of 31 trucks carrying food made its way to northern Gaza Strip.
Over the last 3 days, close to 50 trucks were transferred to the northern Gaza Strip.
There is no limit to the amount of humanitarian aid for the civilians in Gaza. pic.twitter.com/WSfEuickGL— COGAT (@cogatonline) February 28, 2024
イスラエルの地上コンボイ38台人道支援物資搬入作戦はカオス:110人以上死亡
こうした中、イスラエル軍は、大規模な人道支援のトラック38台という、これまでにないほどの大規模なコンボイをガザ市に到達させる計画を立てた。
コンボイが安全に通過できる経路を設定し、周辺に戦車を駐留させ、空からはドローンで安全を確保する計画であった。到着後の物資の配布は、民間請負いとのこと。
こうした中、29日(木)早朝4時40分、コンボイが海岸に近い検問所を通過して、ガザ市内に向けて動き出すやいなや、数百人からたちまち、数千人に膨れ上がったガザ住民の大群衆が、略奪しようとトラックに押しかけて大暴動状態になった。
人々は将棋倒しになって踏みつけられたり、群衆に囲まれながら移動しようとするトラックの下敷きになる人々も出た。
イスラエル軍は当初威嚇射撃をして群衆を追い散らそうとしたが、このカオスを止めることができず、群衆の間から撤退を試みたという。先頭のトラックは、さらに南向きに進んで行こうとしたが、その先でそのトラックを強奪しようとした武装した者たちが、群衆に銃撃をしたもようである。
別のトラックは、検問所方面、北向きへ進んで行こうとしたが、群衆と共に近づいてくるトラックに危機感を感じたイスラエル軍が発砲。死者が出た。これについては、イスラエル軍も認めている。
その後、ハマスは、この一連の混乱で、112人が死亡。700人以上が負傷したとして、イスラエルの「屠殺」だと非難の声を上げた。イスラエルは、イスラエル軍の銃撃で死亡したパレスチナ人は10人未満だと主張している。
以下はその当時の地上での様子や、人々の証言。ガザのシファ病院は、あまりの死傷者で対応が追いついていないとのこと。また負傷した人が、イスラエル軍に発砲されたと主張しており、世界のイスラエルへの非難が殺到している。
しかし、ことの経過は上記のように、イスラエルが、人々に発砲したのではない。イスラエル軍は、ドローンで撮影していた当時の状況を発表し、イスラエル軍の主張を証明しようとしている。以下はその映像。イスラエル軍による発砲は確認できない。
また当時の状況を説明するイスラエル軍のハガリ報道官は、イスラエル軍がガザ民間人を狙って銃撃はしていないと強調。民間人を殺すことを目的とはしていないことを、改めて強調した。
しかし、世界の流れは、イスラエルに対して厳しく、カタールで行われているイスラエルとハマスの人質返還に関する交渉に影響が出ると懸念されている。
全世界からイスラエルに非難殺到:カタールでの交渉に影
この大惨事を受けて、カタールでイスラエルとハマスの交渉を仲介しているサウジアラビア、ヨルダン、エジプトが、イスラエル軍が民間人を標的にしたと非難声明を出した。
トルコは、「イスラエルは、ガザ市民を飢餓に追い込み、今はその民間人を標的にした。イスラエルはパレスチナ人を意図的に破滅させようとしている。」と非難した。
フランス、スペインに続いて、EUの外交部長も「容認できない」とイスラエルを非難。コロンビアにいたっては、イスラエルがパレスチナ人に対する「大量虐殺」を行ったとして、ネタニヤフ首相を名指しで非難。イスラエルからの武器購入を停止すると発表した。
続いてフランスをはじめとする国際社会が、一斉にイスラエルを非難する声明を出した。
友好国アメリカの苦悩:国連安保理ではイスラエル非難に拒否権発動
アメリカは、事件を憂慮するとして、イスラエルに説明を求めるとともに、イスラエルとともに更なる検証を行っている。
アラブ諸国は、国連安保理に、この件でイスラエルを非難する声明を出し、直ちにガザでの停戦を命じることを求める決議案を出した。
15か国中、14か国がこれに賛成票を投じたが、アメリカだけは、これに拒否権を発動し、イスラエルを守る立場を維持した。
バイデン大統領は、イスラエルを支援したいが停戦になかなか応じようとしないイスラエルに、苛立ちを隠せなくなっている。
また、大統領選挙を前に、アメリカ国内では、バイデン大統領の立場が弱体化しており、国内からはそのイスラエル支持の姿勢に批判の声が高まっている。バイデン大統領は、今、微妙なところに立たされている。
ガザでの戦闘は続行中:イスラエル兵2人戦死
イスラエル軍は、現在、ガザ南部から北部でも、戦闘を続けている。ハマスが、ガザ北部に再び戻るようになっているからである。これまでに、イスラエル軍は、北部から南部に続くトンネルを発見。武器も多数押収している。
以下はハンユニスの厳しい市街戦と、そこで発見したUNRWAの袋に入った武器。
また、多数のハマス戦闘員を無力化するとともに、降参してくる者を逮捕している。こうした中、ハマスは、イスラエル南部へのロケット弾をまだ発射してきた。被害はなかった。イスラエル軍は発射地を確実に破壊している。
一般市民も3万人ほどが、ガザ北部に戻っており、戦闘の巻き添えにもなっている。
ガザ保健省によると、ガザでの死者数は、3万35人と3万人を超えた。しかし、このうち少なくとも1万2000人はハマスであり、残りの10-15%は、ハマスのロケット弾がガザ内部での誤爆で死亡した可能性があるとイスラエル指摘している。
www.jpost.com/breaking-news/article-789604
この一連の戦闘で、28日、イスラエル軍将校2人の戦死が発表された。ガザ地上戦での戦死者は242人となった。
戦死したのは、イフタ・シャハール少佐(25)写真右と、イタイ・セイフ小隊長(24)。7人の兵士も負傷。イフタ少佐たちは、ガザ市の激戦地ゼイトゥーンで、仕掛けられていた罠による爆発で死亡していた。
石のひとりごと
実際に何があったのか、よく調べないうちに、国際社会はイスラエルが悪いという前提で動くようである。日本のニュースでどう伝えられるのかと思うと、頭が痛くなる。
オリーブ山通信で、もう少し深く、またその背景を伝えるのみである。あまりにも小さい力ながら。。